
整骨院の開業融資はどこまで通る?V-Spiritsの支援実績から見る審査のポイント
「柔道整復師として現場経験は積んできたが、経営者としての実績はない」——整骨院・整体院の開業を目指す方から、創業融資が本当に通るのか不安の声をよく聞きます。開業資金の相場や書類の書き方を紹介する記事は数多くありますが、実際にどれくらいの支援実績があるのか、整骨院特有の資金繰りの注意点まで踏み込んだ情報は多くありません。
本記事では、V-Spiritsグループの実際の創業融資支援実績データをもとに、整骨院・整体院が創業融資を検討するときに押さえておきたいポイントを整理します。
V-Spiritsの創業融資支援実績(治療院分野)
V-Spiritsグループは、2026年6月時点で累計712件の創業融資を支援してきました。業種別では、整骨院・鍼灸等を含む「治療院」分野が51件(構成比7.2%)を占めており、飲食・美容関連・フランチャイズ支援に次ぐ主要な支援領域のひとつです。柔道整復師・鍼灸師といった国家資格を持ちながら開業を目指す方の相談・支援に、一定の蓄積があります。
件数・構成比は2026年6月時点のものであり、今後の実績に応じて更新されます。また、支援実績があることは審査の通過を保証するものではない点にも注意してください。
整骨院の創業融資はどの制度を使う?
整骨院・整体院の創業資金調達で中心になるのは、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在はこの制度が創業融資の主力になっています。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、原則として無担保・無保証人での借入が可能です。
基準利率は2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告2期未了)で年3.45〜5.15%です。創業期の方が無担保で利用する場合、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります(制度・審査条件により適用可否は異なるため、必ず申請先で確認してください)。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、開業直後で収入が安定しない時期のキャッシュフロー負担を抑えられます。
整骨院特有の資金繰り論点:保険請求分の入金ラグ
整骨院の資金計画で見落とされがちなのが、保険診療分の売上が実際に入金されるまでのタイムラグです。保険請求(療養費の請求)は審査支払機関を経由するため、施術から入金まで約2か月かかるのが一般的です。自由診療(自費メニュー)中心の整体院であればこの影響は小さくなりますが、保険診療を扱う整骨院では、開業直後の数か月分の運転資金を厚めに見積もっておく必要があります。
運転資金の目安としてよく使われるのが「月の経費の3か月分」ですが、保険請求の入金ラグがある整骨院では、これに入金までの2か月分を上乗せして考えると、資金繰りに余裕を持たせやすくなります。事業計画書の資金繰り表にこの入金タイミングのズレを反映しておくと、審査担当者にも説得力のある計画として伝わりやすくなります。
経営実績がなくても審査は受けられる
創業融資の審査は、創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに行われます。柔道整復師・鍼灸師として現場での施術経験は豊富でも、「経営者としての実績」がないことを不安に感じる方は少なくありませんが、これは新規開業では当然のことです。
ただし、未経験分野を補うための対策として有効性に差があります。「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門的な業務を業務委託でプロに任せている」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、審査上の説得材料にはなりにくいとされています。より説得力を持たせるには、経営経験のある人物を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を計画に盛り込む方向が有効です。
自己資金についても、制度上「総額の何分の1が必須」といった固定の要件はありません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になるため、多いほど有利になりやすいと考えておきましょう。開業前に自費で取得した資格取得費用や設備・備品の購入費は「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあるため、領収書は必ず保管しておいてください。
申請から開業までの流れ
創業融資は、申込みから融資実行まで書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。事業計画書の準備期間を含めると、合計で約2か月を見込んでおくと安全です。整骨院の開業では、物件契約・内装工事・機器購入のスケジュールと、融資実行のタイミングを逆算して段取りを組む必要があります。融資実行前に契約・発注を進めてしまうと計画が崩れる原因になるため、資金調達の目処が立ってから物件・設備の契約を進めるのが基本です。
よくある質問
Q. 保険診療がメインの整骨院と自費メニュー中心の整体院で、融資の考え方は変わりますか。
A. 制度自体は同じ「新規開業・スタートアップ支援資金」が中心ですが、保険診療がある整骨院では入金までのタイムラグを見込んだ運転資金の計画が特に重要になります。自費中心の整体院は入金サイクルが早い分、開業初期の集客計画の精度が問われやすくなります。
Q. 一度審査に落ちた場合、すぐに再申請してもいいですか。
A. 自己資金不足や事業計画の説得力不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善しないまま再申請しても結果は変わりにくいとされています。公庫内には審査に落ちた記録が残るため、次回の審査では経緯を踏まえて慎重に扱われる可能性がある点も踏まえ、原因を潰してから申請することをおすすめします。
まとめ
整骨院・整体院の創業融資は、柔道整復師・鍼灸師としての実務経験があっても「経営者としての実績」を不安視する方が多いテーマです。しかし審査は創業した実績の有無ではなく事業計画書と自己資金で行われるため、保険請求の入金ラグを踏まえた資金繰り計画と、経営に直接関わる体制づくりを事業計画に反映することが通過への近道になります。制度・金利は変わりやすいため、本記事の数字は執筆時点(2026年6月時点)の情報として参考にし、申請前に必ず最新の公式情報を確認してください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























