
キャッシュレス券売機への入れ替えが補助金の対象になる条件
現金だけの券売機を長く使ってきた店舗で、キャッシュレス対応の機種へ入れ替えたいという相談が増えています。見積を取ると本体だけで百万円台に届くこともあり、中小企業省力化投資補助金が使えないかという話につながります。
ところが、券売機の補助金を扱った解説の多くは「使える制度はこの5つ」といった一覧で終わっていて、すでに券売機がある店が入れ替える場合の条件までは書かれていません。入れ替えは、新しく1台目を入れる場合と判定の入口が違います。この記事では、販売事業者に見積を頼む前に確認しておく4つの手順を、公募情報の記載に沿って整理します。制度の数字は2026年8月時点のものです。
手順1:その入れ替えが「製品の置き換え」の条件に当たるかを見る
中小企業省力化投資補助金には、カタログに登録された製品から選ぶカタログ注文型と、自社の課題に合わせて設備を組む一般型があります。券売機のように既製の機器を1台入れ替える話は、まずカタログ注文型の側で考えることになります。
このカタログ注文型には、すでに持っている製品を置き換える場合の取り扱いが定められています。置き換えでの申請ができるのは、次の2つを両方満たす場合です。
- 「置き換えが可能となる機能・性能」を有する製品への置き換えであること
- 置き換え後の製品が既存製品と比較して「置き換えが可能となる機能・性能」を新規で1点以上有していること
そして、この「置き換えが可能となる機能・性能」として挙げられているものの中に、キャッシュレス決済機能が含まれています。ほかには多言語対応機能、厨房との連携機能(モニター連携機能・キッチンプリンタ等)が挙げられています。
現金だけの機械からキャッシュレス決済に対応した機械へ替える計画は、条件の形としては合っている入れ替えになります。一方で、同じ機能のまま新しい年式の機械へ替えるだけの計画は、増える機能が1点もないため、この条件に乗りません。「既に所有する製品の置き換えであり省力化効果が得られない事業は補助対象外」とされており、事業計画の内容から置き換えによる省力化効果が得られない事業と判断された場合は不採択とされています。
この線引きは、新しい紙幣への対応をきっかけに入れ替えを考えている店舗ほど確かめておく価値があります。新紙幣を読み取れるようにするだけの入れ替えは、券売機としてできることが以前と変わらないため、増える機能を1点も示せない形になりがちです。同じ入れ替えでも、その機会にキャッシュレス決済や厨房との連携を載せるのであれば、示せる機能が生まれます。何をきっかけに入れ替えるかではなく、入れ替えた後に何が増えるかで見られると考えると、計画の書き方が定まります。
申請では、販売事業者と中小企業等が、どの機能が新規に追加される機能・性能であるかを具体的に記載することが求められます。見積書に機種名と金額が並んでいるだけでは、この記載にはなりません。
手順2:現金を残すかどうかを先に決める
次に決めるのは、入れ替えた後の機械で現金を扱うかどうかです。店の運用の話に見えますが、補助金として受け取れる金額にも影響します。
紙幣識別機や釣銭機を積まないキャッシュレス専用機は、現金併用機より本体価格が下がる傾向があります。中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の補助率は2分の1以下ですから、本体価格が下がれば補助額も連動して下がり、自己負担は残ります。安く入れることと補助を厚く受けることは、同じ方向を向きません。どちらを優先するかは、レジ締めや両替の手間をどれだけ減らしたいかと合わせて考えることになります。
カタログ注文型の補助上限は、従業員数の区分で分かれています。2026年3月19日以降に適用される区分では、従業員5名以下が200万円(賃上げ要件を達成した場合は300万円)、6〜20名が500万円(同750万円)、21名以上が1,000万円(同1,500万円)です。2026年3月18日以前の区分はこれより高く設定されていたため、以前の数字を載せたままの解説も残っています。手元で見ている表がいつ時点のものかを確かめてください。
手順3:カタログに載っていない構成なら別の入口を見る
カタログ注文型は登録された製品から選ぶ制度で、販売事業者と共同で申請します。入れたい機種がカタログに登録されていない場合や、複数の機器を組み合わせて店全体の流れを作り替えたい場合は、同じ中小企業省力化投資補助金でも一般型が候補になります。
一般型はオーダーメイド性のある設備が対象で、汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされています。汎用設備であっても、複数を組み合わせてより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合や、導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合は対象になります。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる要件もありますが、この金額を満たすだけでは足りません。
券売機そのものではなく、注文や会計のソフトを主役に据えるなら、デジタル化・AI導入補助金という入口もあります。こちらは事務局に登録されたITツールを、IT導入支援事業者の支援を受けて導入する制度です。インボイス対応に必要なツールについては、レジ・券売機等のハードも類型により上限を設けたうえで対象に挙がっています。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から言うと、置き換えの申請で差が出るのは、新しく付く機能を自分の言葉で1点に絞れているかどうかです。仕様表をそのまま貼り付けた書類だと、読む側にはどれが増えた機能なのか判別できません。カタログの型番を書き写す前に、店として何が変わるのかを1行にしてみてください。
手順4:見積のどこが補助の外に出るかを分ける
券売機をキャッシュレス対応にすると、本体の代金とは別に毎月の支払いが発生します。ここが補助の外に出る部分です。
決済手数料は売上に連動して継続的に発生する費用で、導入時の設備投資とは性質が違います。通信回線の利用料も同じです。補助が効くのは導入時の支出の側なので、月々の負担がどれくらいになるかは、補助金の計算とは別に自分で見積もっておくことになります。現金の取扱いを減らした分、両替や入金の手間がどれだけ軽くなるかも、同じ表に並べて比べておくと判断しやすくなります。
あわせて、事業計画で示す目標も確認しておきます。カタログ注文型は、労働生産性(付加価値額を従業員数で割ったもの)を年平均3.0%以上向上させる計画が求められ、未達の場合は減額の規定があります。一般型は年平均4.0%以上で、未達の場合は返還が発生しうる設計です。同じ中小企業省力化投資補助金でも、目標を外したときの重さが違います。
見積を頼む前に決めておきたい4項目
- 対応する決済手段の範囲:クレジットカード、電子マネー、二次元コード決済のどこまでを載せるか
- 現金を残すか、キャッシュレス専用にするか:本体価格と、レジ締めや両替の手間の両方が動きます
- レジや厨房とつなぐか、券売機で完結させるか:厨房との連携機能も、置き換えの条件に挙がっている機能の1つです
- いま使っている機械に無く、新しい機械に付く機能を1点、言葉にできるか:ここが置き換え申請の芯になります
まとめ
キャッシュレス券売機への入れ替えは、「機械を新しくする」ではなく「いまの機械に無い機能を1点増やす」という形に整理できたときに、中小企業省力化投資補助金の置き換えの条件に近づきます。現金を残すかどうかは本体価格と補助額の両方を動かし、決済手数料と通信費は補助の外に残ります。制度の区分や上限額は改定されることがあるため、申請の前に最新の公募要領とカタログで確認したうえで、判断が分かれる部分は専門家に相談しながら進めてください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























