
工場の自動化ライン導入は補助金の対象になる?一般型とカタログ注文型の失敗しない選び方
「人手不足で生産ラインを自動化したいが、補助金は使えるのか」「使えるとしてもどの制度を選べばいいのか分からない」——製造業の現場担当者・経営者からこうした相談が増えています。結論から言うと、工場の自動化ライン導入は複数の補助金の対象になり得ますが、 どの制度を選ぶかを間違えると不採択になるリスクがある点に注意が必要です。
この記事では、自動化ライン導入で使える補助金の選択肢を整理したうえで、「省力化」と「新製品・新サービス開発」を混同して不採択になるという、実務でつまずきやすいポイントを中心に解説します。数字・要件は執筆時点(2026年7月)の公募要領にもとづいています。申請時は必ず最新の公式情報をご確認ください。
工場の自動化ラインは補助金の対象になるのか
結論として、既存の生産ライン・工程を自動化する投資は、主に中小企業省力化投資補助金の対象になります。人手不足の解消と生産性向上を目的とした設備・システム導入を支援する制度で、2026年度も継続して実施されています。この補助金には「一般型」と「カタログ注文型」の2タイプがあり、投資内容によってどちらが合うかが変わります。
一方で、自動化ラインの導入が「新しい製品・サービスを生み出す」取り組みを伴う場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠(2026年度に「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合されて生まれた制度、公募要領1.0版・令和8年6月)が選択肢に入ることもあります。ただし、この枠は単なる設備更新・効率化だけでは対象にならないため、あとで詳しく説明する使い分けを理解しておく必要があります。
「省力化」と「新製品開発」を混同すると不採択になりやすい
自動化ライン導入の補助金選びで最も多い失敗が、この2つの目的を混同することです。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスの開発が対象で、単なる設備・システム導入や既存製品・サービスの生産プロセス改善は対象外と公募要領に明記されています。老朽化した設備の単純な入れ替えや、既存工程をそのまま自動化するだけの投資は、「新たな挑戦」とは評価されにくく、不採択になりやすい典型パターンです。
一方、中小企業省力化投資補助金は「既存事業の省力化・生産性向上」そのものが目的の制度です。人手不足に対応するために工程を自動化する、既存ラインの生産性を引き上げるという投資であれば、こちらの制度で計画を組む方が筋が通ります。「自動化=ものづくり補助金」と短絡的に考えず、投資の主目的が「新製品・新サービスの開発」なのか「既存工程の省力化」なのかをまず切り分けることが、制度選びの第一歩です。
一般型とカタログ注文型、どちらを選ぶべきか
省力化投資補助金を選ぶ場合も、さらに「一般型」と「カタログ注文型」のどちらが合うかを判断する必要があります。
| 比較項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
|---|---|---|
| 対象設備 | 自社の課題に合わせたオーダーメイド寄りの設備・システム | 公的に登録されたカタログ掲載製品(ロボット・IoT機器等) |
| 補助上限 | 1億円 | 1,500万円(大幅賃上げ計画を盛る場合) |
| 申請形態 | 単独申請 | 販売事業者との共同申請が原則必須 |
| 生産性向上の要件 | 労働生産性 年平均+4.0%以上 | 労働生産性 年平均+3.0%以上 |
| 向いているケース | 独自設計の自動化ライン・複数設備の組み合わせ | 登録済み機器を使った即効性重視の省力化 |
既製のロボット・搬送機器などカタログに載っている製品をそのまま導入するならカタログ注文型、自社工程に合わせて設備やシステムを組み合わせて構築する(既製品の組み合わせでは対応できない)ならば一般型、という切り分けが基本です。カタログ注文型は販売事業者との共同申請が前提になっている点も見落としやすいポイントで、単独で申請しようとして手続きが止まってしまうケースがあります。
申請でつまずきやすいポイント
- 賃上げ要件の未達で返還・減額になりうる:一般型は労働生産性+4.0%以上に加えて賃上げ目標が要件となり、未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる制度設計です。カタログ注文型も賃上げ目標を盛り込むと上限額が拡大しますが、未達なら減額対象になります。事業計画の生産性向上・賃上げの見込みは、保守的に見積もっておく方が安全です。
- 単価要件を満たさない機器は対象外:一般型では単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入することが要件です。安価な周辺機器だけを寄せ集めた計画では要件を満たせません。
- 交付決定前の発注・契約は対象外:どちらの制度でも、交付決定前に発注・契約・購入した設備は補助対象になりません。「早く導入したいから」と見積もり取得後すぐに発注してしまうと、補助金を使えなくなる典型的な失敗です。
- 汎用品・周辺コストは対象経費に含まれない:汎用性の高いPCや車両、建物・家賃といった費用は原則対象外です。自動化ラインに関連する専用機械・装置・システム構築費が中心になります。
申請の流れの目安
いずれの制度も、大まかには「事業計画の策定 → 電子申請(GビズIDプライムが必要) → 審査・採択発表 → 交付決定 → 設備発注・導入 → 実績報告」という流れになります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の2026年度第1回公募は、公募開始2026年6月29日・申請締切2026年9月30日18時、採択発表は同年12月頃の予定です(公募要領1.0版)。省力化投資補助金は通年に近い形で複数回の公募が行われる運用のため、直近のスケジュールは各制度の公式サイトで確認してください。
よくある質問
Q. すでにある設備を単純に入れ替えるだけでも補助金は使えますか?
A. 「新製品・新サービスの開発」を目的とする新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠では、単純な設備入れ替えは対象外とされやすい傾向があります。人手不足対応・生産性向上が目的の入れ替えであれば、中小企業省力化投資補助金の対象になるかを検討する方が現実的です。
Q. カタログ注文型と一般型は併願できますか?
A. 制度ごとに要件が異なるため、同一設備・同一経費で重複して申請することはできません。投資内容を精査し、どちらか一方の制度で計画を組む必要があります。判断に迷う場合は専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
工場の自動化ライン導入は、中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)が主な選択肢になり、投資内容によっては新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠も検討対象に入ります。ただし「省力化」と「新製品開発」を混同すると不採択のリスクが高まるため、まず投資の目的を明確にしたうえで制度を選ぶことが重要です。賃上げ要件・単価要件・交付決定前発注の禁止など、見落としやすい要件も事前に確認しておきましょう。制度選びに迷う場合は、事業計画の段階から専門家に相談するのも一つの方法です。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























