
内装工事会社が自社の設備投資で使う補助金|投資額別の対応制度
「内装工事 補助金」で検索すると、上位に並ぶのは飲食店や美容室のオーナーが店舗の内装費用に補助金を使う記事ばかりです。しかしここで扱うのは逆の立場です。内装仕上工事を請け負う会社が、造作家具の内製化や積算・図面業務の効率化のために自社で設備やツールを導入するとき、どの補助金が候補になるかという話です。
発注する側の情報と受注する側の情報は制度上まったく別物です。施主向けの記事をいくら読んでも、内装工事会社自身が使える制度は見えてきません。ここでは投資額のレンジ別に、対象になりうる制度とその条件を整理します。
発注側と受注側では見るべき制度が違う
店舗改装の補助金として紹介されているのは、施主(店舗オーナー等)が内装工事費という経費を補助対象にするケースです。一方、内装工事会社が検討するのは、自社が保有する設備やシステムへの投資に補助金を充てるケースで、根拠となる制度も窓口も別になります。まず、自社がどちら側の投資をしようとしているのかを切り分けておく形になります。
投資の中身は大きく2系統に分かれる
従業員数名から十数名規模の内装工事会社が検討する設備投資は、性質の異なる2つの系統に分かれます。ひとつは造作家具を内製化するための木工機械・加工設備などの導入で、これは設備投資に当たります。もうひとつは積算や図面作成の業務をシステム化するためのソフトウエア・クラウドサービスの導入で、こちらは道具の導入というよりも業務のデジタル化に当たります。どちらの系統かによって、候補になる制度が変わります。
投資額別に見る、対象になりうる制度
ここからは投資額のレンジ別に、候補になる制度を並べます。数字は各制度の公募要領・社内資料に基づく現時点の内容です。
50万円前後までの小さな投資
什器や備品レベルの小さな投資、あるいは販路開拓とセットの業務効率化であれば、小規模事業者持続化補助金が候補になります。補助率は3分の2(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は4分の3)、補助上限は基本50万円です。インボイス特例で50万円上乗せ(最大100万円)、賃金引上げ特例で150万円上乗せ(最大200万円)、両特例を併用すると200万円上乗せの最大250万円まで拡大します。ただし広報費・ウェブサイト関連費はそれぞれ交付申請額の上限が30万円(税込)で、この経費だけの申請はできません。対象となる小規模事業者の範囲は業種で従業員数の上限が変わり、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。内装工事業がどちらの区分で判定されるかは、商工会・商工会議所の窓口で確認する形になります。
数十万円〜450万円程度のツール導入
積算・図面作成の業務をシステム化する投資であれば、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が候補です。補助上限は通常枠450万円、インボイス枠350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠3,000万円です。この制度は、事務局に登録されたツールを登録済みの導入支援事業者経由で導入することが前提になります。「ツール導入による業務改善」か「設備投資による省力化」かで軸が分かれ、木工機械のような設備の導入はこの制度の対象になりにくく、後述の中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)側に寄せて考える形になります。
💬 執筆者の三浦から一言
審査する側にいたころも、『ものづくり補助金』と『新事業進出補助金』を別々の制度だと思い込み、両方に申請書を出そうとする方が何人もいました。今は一本化されているので、枠の名前から入るのではなく、自社の投資が新しい製品やサービスの開発に当たるかどうかから考えたほうが話が早く進みます。
単価50万円以上の機械装置を組み合わせる投資
造作家具用の木工機械・加工設備を導入し、既存の現場作業を効率化する投資であれば、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補です。補助上限は1億円で、労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす3〜5年の事業計画が必要です。賃上げ目標が未達の場合は達成率に応じて返還が発生します。設備投資は必須で、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要がありますが、単に汎用設備を1台だけ導入する計画では対象外です。対象になるのは、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合、または導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合に限られます。木工機械を1台だけ入れて終わりにするのではなく、周辺の集塵設備や加工工程を含めた構成として計画を組む必要があります。従業員0名の事業者やみなし大企業に該当する場合、直近3年の課税所得年平均が15億円を超える場合などは対象外になります。
カタログ登録済みの製品を即効導入する投資
省力化効果の実証されたカタログ登録製品(自動化装置等)をそのまま導入する場合は、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)が候補です。補助上限は従業員規模や賃上げ計画の内容によって変わるため、ここでは具体的な金額を挙げません。中小企業等が販売事業者と共同で申請することが前提で、単独申請は原則できません。労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、賃上げ目標を盛り込むと上限枠が拡大しますが、未達の場合は減額対象になります。カタログに登録されていない設備・オーダーメイド系の機器は、この制度ではなく一般型の対象になります。
新事業として本格的に設備投資をする場合
造作家具の内製化を、効率化の範囲にとどめず、外部に販売する新製品・新サービスとして立ち上げる計画であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠が候補になります。補助下限は100万円、補助上限は従業員1〜5人で750万円、6〜20人で1,000万円、21〜50人で1,500万円、51人以上で2,500万円です(大幅賃上げ特例を適用した場合は各850万円・1,250万円・2,500万円・最大3,500万円)。この上限額は最大の従業員規模かつ特例適用時の最大値で、実際は従業員規模により異なります。補助率は中小企業者2分の1、小規模企業・小規模事業者・再生事業者は3分の2です。設備投資は必須で、機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上が対象です。ただし、単なる設備・システム導入や既存製品・サービスの生産プロセス改善はこの枠では対象外で、同業で既に相当程度普及している開発も対象外です。効率化のための機械導入というだけでは通らず、新しい製品・サービスを開発する計画であることを事業計画で示す必要があります。
見落としやすい対象外の条件
投資額のレンジだけでなく、制度共通の対象外条件も確認しておく形になります。まず、いずれの制度も交付決定日より前に行った発注・契約・支払は対象外です。採択の通知を受けただけでは事業を始められず、機械の発注や工事の契約は交付決定後まで待つ必要があります。単価50万円(税抜)超の機械装置等、50万円(税込)超の発注は2者以上の相見積が必要になる制度もあります。また、小規模事業者持続化補助金では、自動車・フォークリフト・キッチンカー等の車両は原則対象外で、建物の増築・増床や不動産の取得に当たる工事も、外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で対象外と判定されることがあります。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から言うと、採択の通知を受け取った安心感からすぐに機械の発注書を出してしまう相談が繰り返しありました。対象になるのは交付決定日より後に結んだ契約分だけなので、発注のタイミングは投資額を固める前の段階で確認しておく形にしています。
自社の投資がどの制度に当てはまるか
ここまでの内容を整理すると、判定の軸は3つになります。ひとつは投資の性質が設備投資かツール導入かという軸、もうひとつは投資額が制度の下限・上限のどこに収まるかという軸、もうひとつは効率化にとどまるか新製品・新サービスの開発に当たるかという軸です。木工機械を1台だけ買う計画は中小企業省力化投資補助金(一般型)の対象外になりやすく、積算ソフトの導入は設備投資の制度ではなく、デジタル化・AI導入補助金側で検討する形になります。造作家具事業を外販の新事業として立ち上げるところまで踏み込めるなら、革新的新製品・サービス枠も視野に入ります。
まとめ
内装工事会社が自社の設備投資に補助金を使う場合、まず造作家具の内製化のような設備投資か、積算・図面業務のようなツール導入かを切り分け、そのうえで投資額が各制度の下限・上限のどこに位置するかを確認する順番になります。単体の機械を1台だけ導入する計画や、効率化だけを目的とした計画は対象外になりやすいため、複数設備の組み合わせや新製品・新サービスの開発という形に事業計画を組み立てられるかが分かれ目です。ここに挙げた金額や要件は現時点の公募要領・社内資料に基づくもので、公募回次によって内容が変わるため、申請前に最新の公募要領を確認してください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























