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コラム

製造業の新事業進出補助金の使い方|上限9,000万円と「新市場」の判定基準

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製造業が新事業進出補助金を使う方法|新市場の判定基準と対象経費を整理

「今の主力事業とは違う分野に挑戦したいが、どの補助金が使えるのか分からない」——数年経営を続けてきた製造業の経営者から、こうした相談が増えています。2026年度から「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合され、新たに新事業進出・ものづくり商業サービス補助金という制度になりました。なかでも既存事業と異なる分野への進出を後押しする「新事業進出枠」は、補助上限が最大9,000万円と大きく、製造業の事業転換・新分野参入を検討する経営者にとって有力な選択肢です。

ただし、この枠は「新しい設備を導入すれば使える」という単純な制度ではありません。この記事では、製造業が新事業進出枠を使う際に判断に迷いやすい「新市場」の境界線、対象になる経費の範囲、賃上げ要件を満たせなかった場合のリスクまで、数年経営の中小製造業向けに整理して解説します(内容は2026年6月時点の公募要領 1.0版にもとづく執筆時点の情報です)。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金「新事業進出枠」とは

新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。補助対象になるには、新たに製造・提供する製品やサービスが自社にとって新規性を有し、かつその市場が自社にとって新たな市場であることが条件になります。「日本初・世界初」である必要はなく、あくまで「自社にとって新しいかどうか」が判断軸です。

補助上限は従業員規模によって段階的に設定されています。1〜20人は2,500万円、21〜50人は4,000万円、51〜100人は5,500万円、101人以上は7,000万円が基本額です。よく紹介される「上限9,000万円」は、101人以上の企業が大幅賃上げ特例(給与支給総額を年平均6.0%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上引き上げる)を満たした場合の最大値であり、無条件で受け取れる金額ではありません。補助下限は750万円で、小規模な投資には向かない制度である点にも注意が必要です。

「新市場」と認められる境界線はどこにあるか

製造業からの相談で最も多いのが、「どこまでやれば新市場と認められるのか」という疑問です。公募要領上、既存事業と同一市場への進出、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、商圏が違うだけの展開は「新事業進出」に該当しないとされています。つまり、次のようなケースは新市場と認められにくい典型例です。

  • 同じ製品を、これまでと違う地域・違う価格帯で売るだけ
  • 既存の生産ラインを更新しただけで、製品自体は変わらない
  • 顧客層を変えたと説明しているが、扱う製品・提供方法は従来と同じ

審査では「新市場性」(社会的な普及度・認知度が低い市場への進出)か、「高付加価値性」(既存分野で相場より高い水準の価値・価格を実現する)のいずれかで、新事業として筋が通っているかが問われます。既存事業の延長・改善という色合いが強い場合は、後述する「革新的新製品・サービス枠」のほうが自然なケースも多く、どちらの枠で申請するかの見極めが採択率を左右します。

新事業進出枠だけが対象になる経費がある

対象経費の面でも、新事業進出枠には他の枠にない特徴があります。必須経費として「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかを計上でき、建物費が対象になるのは新事業進出枠だけです(革新的新製品・サービス枠や中小企業省力化投資補助金では対象外)。新分野への進出にともなう工場増設・新棟建設を検討している製造業にとっては、この違いが枠選びの決め手になることがあります。ただし、建物の単なる購入・賃貸そのものは対象外である点には注意してください。

そのほか、技術導入費・知的財産権等関連経費(各1/3上限)、外注費(1/4上限)、専門家経費(1/5上限、1日1人5万円)、運搬費やクラウドサービス利用費なども対象になります。補助率は中小企業者で原則1/2、地域別最低賃金引上げ特例を満たす場合は2/3です。

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賃上げ要件と、未達時の返還リスクを正しく理解する

新事業進出枠を含む本補助金には、基本要件として付加価値額を年平均4.0%以上、一人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上のペースで引き上げる計画が求められます。ここで見落とされがちなのが、これらの目標を達成できなかった場合、補助金の返還が発生し得るという点です。「採択されれば終わり」ではなく、事業計画期間中ずっと賃上げ計画を守り続けられるかどうかまで含めて検討する必要があります。無理な賃上げ目標を掲げて採択を狙うと、あとで資金繰りを圧迫するリスクがあることは、申請前に必ず理解しておきましょう。

革新的新製品・サービス枠/中小企業省力化投資補助金との使い分け

製造業の設備投資では、次の3制度のどれに当てはまるかで迷うケースが多く見られます。

  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠(上限最大9,000万円※従業員規模・特例による):既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出が主軸。建物費も対象
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠(上限最大3,500万円※同上):自社の技術力を活かした新製品・新サービスの開発が主軸。設備投資(機械装置・システム構築費)が必須
  • 中小企業省力化投資補助金(一般型)(上限1億円):新市場進出ではなく、既存事業の省力化・生産性向上(労働生産性年平均+4.0%以上)が主目的の場合に適する

「新しい機械を入れたい」という同じきっかけでも、目的が新分野進出なら新事業進出枠、自社技術を活かした新製品開発なら革新的新製品・サービス枠、既存業務の省人化なら省力化投資補助金と、狙う制度が変わります。事業計画を作り始める前に、投資の目的を一文で言語化しておくと、制度選びで迷いにくくなります。

申請の流れとスケジュール(2026年度第1回公募)

2026年度第1回公募は、2026年6月29日に公募開始、申請受付は2026年8月31日から、締切は2026年9月30日18時です。採択発表は2026年12月頃が見込まれています。申請は電子申請(GビズIDプライムが必須)で行うため、IDを持っていない場合は取得に数週間かかることを見込んで早めに準備してください。事業計画は外部への丸投げ作成が禁止されており、発覚した場合は不採択・採択取消の対象になります。また、交付決定前に発注・契約・購入をした経費は補助対象外になるため、「採択されたから」と急いで発注してしまわないよう注意が必要です。

よくある質問(FAQ)

Q. 創業したばかりでも新事業進出枠は使えますか?

新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外です。最低1期分の決算書が必要になるため、創業間もない場合は他の創業支援策とあわせて検討することをおすすめします。

Q. 上限9,000万円は誰でも受け取れますか?

いいえ。9,000万円は従業員101人以上の企業が大幅賃上げ特例を満たした場合の最大値です。実際の上限額は従業員規模によって2,500万円〜7,000万円の範囲で変わり、特例を満たさない場合はさらに低くなります。自社の規模でいくらが上限になるかは、必ず個別に確認してください。

Q. 新事業進出枠と革新的新製品・サービス枠の両方に申請できますか?

制度上、同一の事業計画・経費を複数の補助金に重ねて申請すること(二重受給)はできません。どちらの枠が自社の投資目的に合うかを先に見極めたうえで、1つの枠に絞って申請することになります。

まとめ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の新事業進出枠は、製造業が新市場・高付加価値事業へ踏み出すための有力な選択肢ですが、「新市場」と認められる境界線の見極め、建物費の扱い、賃上げ未達時の返還リスクなど、事前に理解しておくべき論点が複数あります。上限額の表示だけを見て判断せず、自社の投資目的が新市場進出・新製品開発・省力化のどれに当たるのかを整理したうえで、最適な制度を選ぶことが採択への近道です。

「自社の計画が新市場と認められるか分からない」「どの枠を選べばよいか判断がつかない」という場合は、事業計画の作り込みも含めて専門家に相談することで、申請準備の精度を高められます。製造業の新分野進出・設備投資をご検討の際は、お気軽にご相談ください。

【無料相談のご案内】

弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

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三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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