
飲食店の食品製造業への進出に補助金は使える?営業許可の区分で決まる枠の絞り方
飲食店が食品製造業へ進出するときの補助金|どこで作るかを決めると枠が絞れます
店で出している料理を容器に詰めて物販に回したい、卸や通販にも広げたい。そう考えて補助金を調べ始めると、「使える補助金5選」のような記事ばかりが並びます。ところが実際に見積を取り始めると、制度の一覧だけでは判断がつかない場面が出てきます。それが「作る場所をどこに置くか」です。
いまの厨房で兼ねるのか、店内に区画を分けるのか、別の場所を借りるのか、製造だけ別会社にするのか。この4択は、食品衛生法の営業許可の区分と、申し込める補助金の枠を同時に決めてしまいます。逆に言えば、ここを先に決めておくと候補は自然に絞れます。この記事では、飲食店から食品製造業へ進出するときに実務でよく分かれる論点を、5つの問いの形で整理します。制度の内容は2026年8月時点の情報です。
Q1. いまの店の厨房で作れば、その設備投資は補助金の対象になりますか
結論から言うと、厨房で兼ねる前提のままでは、進出向けの枠に乗せるのが難しくなります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。公募要領1.0版(令和8年6月)では、既存事業と同一市場、既存製品の増産・再製造、単なる製法変更、単なるメニュー追加、単に商圏が違うだけといったものは「新事業進出」に該当せず対象外とされています。店の看板メニューをそのまま容器に詰めて店頭で売る、という組み立てだと、この「単なるメニュー追加」の説明に近づいてしまいます。
ここで効いてくるのが許可の区分です。次のQ2で見るとおり、容器包装に詰めて外に流通させる形をとると、飲食店営業とは別の営業許可が必要になります。別の許可が必要ということは、施設に求められる基準も別に定められているということです。厨房の一角に機械を1台置くだけでは収まらない可能性があり、そのとき投資は「機械代」ではなく「区画をつくる工事+機械代」に変わります。金額が変われば、乗せられる制度も変わります。
Q2. 飲食店営業の許可を持っていれば、作ったものを売れますか
飲食店営業の許可だけで完結するとは限りません。食品衛生法施行令第35条は、都道府県が施設についての基準を定めるべき営業を32種類挙げており、飲食店営業(第一号)と、製造にあたる各業種は別々の号に置かれています。
- 菓子製造業(第十一号)……菓子(パン及びあん類を含む)を製造する営業
- そうざい製造業(第二十五号)……煮物、焼物、揚物、蒸し物、酢の物、あえ物、またはこれらと米飯等を組み合わせた食品を製造する営業
- 複合型そうざい製造業(第二十六号)……そうざい製造業と併せて、食肉の処理や菓子・麺類等の製造を行う営業(重要工程管理を行う場合に限る)
- 密封包装食品製造業(第三十号)……レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰など容器包装に密封された食品で、保存に冷凍または冷蔵を要しないものを製造する営業
施設の基準そのものは、食品衛生法第54条により、厚生労働省令の基準を参酌して都道府県が条例で定めます。つまり同じ「そうざい製造業」でも、求められる区画や設備の考え方は自治体の条例で確認する形になります。営業しようとする者は、第55条により都道府県知事の許可を受けることになり、この許可には5年を下らない有効期間その他の必要な条件が付けられることがあります。
ここで押さえたいのは、第二十六号の複合型そうざい製造業のように、複数の製造を1つの許可で束ねる区分が用意されていることです。何をどこまで作るかによって、必要な許可が1本で済むのか複数になるのかが変わります。設備の見積を取る前に、管轄の保健所へ「この商品をこの形で売りたい」と伝えて区分を確かめておくと、後の設計変更が減ります。
Q3. 製造区画をつくる工事は、補助金で見てもらえますか
工事費を補助対象にできるかどうかは、制度によってはっきり分かれます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のうち、建物費を対象経費にできるのは新事業進出枠だけです。しかも建物の単なる購入や賃貸は対象外とされています。区画を仕切る内装工事のように、新しい事業のために必要な建物への支出が想定されている形です。
一方で、この枠には補助下限750万円が設定されています。補助上限は従業員規模別に、20人以下2,500万円、21〜50人4,000万円、51〜100人5,500万円、101人以上7,000万円(大幅賃上げ特例の適用時は各3,000万円、5,000万円、7,000万円、9,000万円)で、上限は最大規模かつ特例適用時の最大値です。下限があるということは、投資が小さすぎると枠に乗らないということでもあります。厨房の隅に機械を1台入れる規模の話と、区画を仕切って製造ラインを組む規模の話では、そもそも土俵が違います。

💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から言うと、制度名を先に決めてから投資の中身を寄せていく順番だと、途中で行き止まりになりがちです。補助金には上限だけでなく下限もあり、革新的新製品・サービス枠は100万円、新事業進出枠は750万円です。作る場所と規模を先に固めてから、その金額が乗る枠を探す順番のほうが、結果的に早く着地します。
Q4. 製造部門だけ別会社にしたほうがよいのでしょうか
税務や登記の観点は税理士・司法書士の領域になるためここでは触れませんが、補助金の側から見ると、はっきりした制約が1つあります。
新事業進出枠は、新規設立・創業後1年に満たない事業者を対象外としており、申し込みには最低1期分の決算書が求められます。製造用に新しく会社を立てた場合、その会社は設立直後の期間、この枠に申し込めません。飲食店を営んでいる既存の法人・個人事業のまま製造を始めるのか、新会社に持たせるのかで、初回に使える制度が変わるということです。
新会社で進めたい事情がある場合は、設備投資の時期を新会社の決算が1期分そろうタイミングまでずらすのか、既存の事業者で先に投資して後から移すのかといった選択肢を、資金繰りと合わせて検討することになります。処分制限のある財産の扱いも絡むため、組織の形を変える前に申し込み先へ相談しておくと安全です。
Q5. 小さく始めたい場合、どの枠が候補になりますか
投資額が新事業進出枠の下限に届かない場合は、次のあたりが候補になります。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠……補助下限100万円。新しい製品・サービスの開発が主軸のとき
- 小規模事業者持続化補助金……補助上限250万円。販路開拓や広報、EC整備が主軸のとき
- デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)……受発注や在庫管理の仕組みを整えるとき
ただし、Q1で見たとおり「既存メニューを容器に詰めただけ」という説明では、進出としての新規性を問われる枠では通りにくくなります。小さく始める場合ほど、何が新しいのかを商品側で説明できるかが分かれ目になります。原材料の調達先を変えた、保存方法を変えて販路が広がった、といった具体の変化を書けるかどうかを、見積を集める前に確かめておくとよいでしょう。
まとめ:作る場所を決めてから、制度を探す
飲食店から食品製造業への進出で補助金を検討するときは、制度の一覧から入らず、次の順番で整理すると候補が絞れます。
- 何をどの形で売るかを決める(店頭のみか、容器包装で外に出すか)
- その形に必要な営業許可の区分を保健所に確認する(施行令第35条の32業種のどれか)
- 許可に対応する施設をどこに置くかを決める(厨房で兼ねる/区画を分ける/別の場所/別会社)
- 3で出た投資額を出してから、下限と上限で乗る枠を探す
制度の要件や金額は改定されることがあるため、申し込みの前に最新の公募要領と、管轄の保健所・自治体の条例を確認してください。どの区分に当たるか判断がつかない場合や、投資の時期と資金繰りを合わせて考えたい場合は、専門家に相談しながら進めるほうが確実です。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
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