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コラム

配膳ロボット・モバイルオーダーに省力化補助金は使える?2026年改定後の上限額と自己負担

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配膳ロボットとモバイルオーダーで補助金が分かれる理由と、従業員規模別の自己負担額

ホールの求人を出しても人が集まらず、配膳と注文取りに人手を取られている。そんな状況から配膳ロボットとモバイルオーダーの導入を検討し、「省力化補助金でまとめて入れられないか」と考える飲食店の経営者は少なくありません。

ただ、この2つは同じ「省力化」の投資に見えて、実際には乗る補助金が分かれます。さらに、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の補助上限額は2026年3月19日以降に見直されており、少し前の記事に載っている金額のまま資金計画を組むと、自己負担が想定より膨らむことがあります。

この記事では、ホールの採用が思うように進まない飲食店の経営者を想定し、配膳ロボットがどの制度に乗るのか、従業員規模ごとに自己負担がいくらになるのかを数字で整理します。記載の制度内容は2026年8月時点の情報です。

配膳ロボットとモバイルオーダーは、乗る補助金が別々になります

まず押さえたいのは、投資の中身が「機器(ハードウェア)」なのか「ソフトウェア・クラウドサービス」なのかで、筋の通る制度が変わるという点です。

  • 配膳ロボット(機器の導入)……中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)、または中小企業省力化投資補助金(一般型)
  • モバイルオーダー(ソフトウェア・クラウドサービスの導入)……デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、事務局に登録された省力化製品のカタログから選んで導入する制度です。配膳ロボットのような、そのまま買って使える既製の省力化機器と設計思想が合っています。

一方のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、登録されたITツール(ソフトウェア・クラウドサービス等)の導入を支援する制度で、クラウド利用料は最大2年分が対象経費に含まれます。モバイルオーダーのように月額利用料で使うサービスは、こちらの考え方に近くなります。

なお、同じ経費を複数の補助金から重ねて受け取ることはできません。「配膳ロボットとモバイルオーダーを一括りにして1件の申請にまとめる」のではなく、投資を2つに分解し、それぞれ別の制度で組み立てるのが現実的な進め方です。

2026年3月19日以降、カタログ注文型の上限額は従業員規模で変わっています

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の補助率は2分の1以下で、補助上限額は従業員数によって次のように定められています(かっこ内は賃上げ要件を達成した場合の上限額)。

  • 従業員5名以下……200万円(300万円)
  • 従業員6〜20名……500万円(750万円)
  • 従業員21名以上……1,000万円(1,500万円)

注意したいのは、これが2026年3月19日以降の区分だという点です。2026年3月18日以前は、従業員5名以下が500万円(750万円)、6〜20名が750万円(1,000万円)でした。つまり小規模な店舗ほど上限が下がっており、古い金額を前提にした記事や資料がまだ多く残っています。

投資額600万円で試算すると、規模によって結果が変わります

配膳ロボットの価格は機種や台数、設置環境によって幅がありますが、ここでは仮に本体と設置費を含めて600万円の投資を行う場合で考えます。補助率2分の1で計算すると、補助額は300万円です。

  • 従業員5名以下……上限200万円のため200万円で頭打ち。自己負担は400万円
  • 従業員6〜20名……上限500万円の範囲内なので300万円。自己負担は300万円
  • 従業員21名以上……上限1,000万円の範囲内なので300万円。自己負担は300万円

同じ投資でも、従業員5名以下の店舗では自己負担が100万円多くなる計算です。2026年3月18日以前の上限(500万円)であれば300万円が満額出ていたところなので、この差は資金計画に直結します。ここを読み違えたまま契約まで進むと、あとから運転資金の手当てを追加する羽目になりかねません。

なお、この制度は省力化投資によって労働生産性(付加価値額を従業員数で割った値)を年平均3.0%以上向上させる計画が求められ、計画未達の場合は減額の規定があります。導入後も複数年にわたる効果報告の義務が続く設計です。

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配膳ロボット1台だけでは、一般型に乗り換えることは難しくなります

「カタログに載っていない機種を入れたいので、中小企業省力化投資補助金(一般型)で申請したい」という相談もよくあります。一般型は補助上限が1億円と大きく、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることが要件です。配膳ロボット1台でもこの金額要件は満たせそうに見えます。

ただし一般型が対象としているのは、オーダーメイド性のある設備です。具体的には、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせてより高い省力化効果を生み出す場合や、導入環境に応じて周辺機器・機器の数・搭載する機能等が変わる場合が該当します。単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされており、金額要件を満たしているだけでは足りません。

つまり「配膳ロボットを1台だけ買う」という計画のままでは、一般型の土俵に乗りにくいということです。一般型を狙うのであれば、下げ膳の動線やオーダー連携、厨房側の受け渡しまで含めて複数の設備・システムをどう組み合わせるのかを、事業計画として示す必要があります。一般型は労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められ、賃上げ要件の未達時には返還が発生しうる点も、カタログ注文型より重い設計です。

申請前につまずきやすい4つの境界線

1. カタログに載っていない製品を選んだ時点で、ルートが1本消えます

カタログ注文型は、登録された省力化製品を導入することが前提の制度です。展示会で見た機種が気に入っても、カタログに登録されていなければこの制度は使えません。製品選びと制度選びは、切り離さずに同時に進めるのが安全です。

2. 販売事業者との共同申請が前提です

カタログ注文型は、中小企業等が販売事業者と共同で申請する仕組みで、単独申請は原則できません。「先に補助金の枠を押さえてから業者を探す」という順番は取れないため、製品と販売事業者を決めるところから逆算してスケジュールを組むことになります。

3. 交付決定前の発注・契約は対象外です

補助金は採択通知だけで動き出せるものではなく、交付決定前に発注や契約を済ませた経費は対象外になるのが一般的な扱いです。繁忙期に間に合わせたい、値引き交渉がまとまったから先に発注したい、という事情で順番が入れ替わると、補助金そのものが受けられなくなります。

4. 労働生産性・賃上げの計画は導入後まで続きます

前述のとおり、カタログ注文型は労働生産性の年平均3.0%以上の向上、一般型は年平均4.0%以上の向上が計画の前提です。賃上げ目標を盛り込むと上限額の枠は広がりますが、未達の場合は減額や返還の対象になります。導入したら終わりではなく、数年単位で数字を追いかける制度だと理解しておくことが大切です。

なお、補助金の入金があった事業年度の会計処理や税務上の取り扱いは、事業の状況によって判断が分かれます。具体的な処理については税理士にご相談ください。

小規模な店舗には、別の選択肢もあります

常時使用する従業員が5人以下(商業・サービス業の場合)の小規模事業者であれば、小規模事業者持続化補助金という選択肢もあります。補助率は3分の2、補助上限は基本50万円で、インボイス特例や賃金引上げ特例の要件を満たす場合は最大250万円まで上乗せされます。

ただし第20回公募では、申請受付が2026年11月5日から12月15日17時まで、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)の受付締切が12月4日と決まっており、電子申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要です。上限額の規模から見ると、配膳ロボットのような数百万円の設備投資を主役に据えるには物足りない面があります。券売機まわりの小さな備品や、集客のための広報・ウェブ整備と組み合わせる使い方のほうが噛み合いやすいでしょう。

よくある質問

配膳ロボットとモバイルオーダーを同じ年度に両方導入できますか

制度が別であれば、それぞれの公募要領に沿って申請することは考えられます。ただし同じ経費を重複して受け取ることはできず、申請の手間もスケジュールもそれぞれ発生します。人手が足りていない工程はどちらなのかを見極めて、優先順位をつけるほうが現実的です。

タブレット端末だけを買いたい場合はどうなりますか

デジタル化・AI導入補助金では、対象は登録されたITツール(ソフトウェア・サービス)が中心で、パソコンやタブレット等のハードウェア単体の購入は対象外です。インボイス対応の類型では、対象ソフトウェアとセットでレジ・券売機等のハードウェアが対象になる場合がありますが、類型ごとに上限が設定されています。

複数店舗ある場合、上限額は店舗ごとに使えますか

補助上限額は事業者単位の従業員数で判定されるため、店舗数の分だけ枠が増えるわけではありません。2〜5店舗を運営していて従業員が6〜20名に収まるのであれば、カタログ注文型の上限は500万円(賃上げ要件達成で750万円)という判断になります。どの店舗から導入するかを決めて、投資を集中させる設計が必要です。

まとめ

配膳ロボットとモバイルオーダーは、どちらも人手不足への打ち手ですが、乗る補助金は別々です。機器は中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)、ソフトウェア・クラウドサービスはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)という分け方が出発点になります。

そのうえで、カタログ注文型の補助上限額は2026年3月19日以降に見直され、従業員5名以下は200万円(賃上げ要件達成で300万円)まで下がっています。古い金額のまま試算していないか、まず確認してください。カタログに載っていない機種を選んだ場合に一般型へ回そうとしても、汎用設備を単体で導入するだけでは対象外という壁があります。

製品選び・販売事業者選び・交付決定のタイミング・導入後の生産性と賃上げの計画まで、決める順番を間違えると使えるはずの制度が使えなくなります。自店の従業員数と投資額をもとに、どの制度が噛み合うのかを早い段階で整理しておくことをおすすめします。

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三浦高

この記事を書いた人

三浦高/Takashi Miura

元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者

産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。

融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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