
動物病院の新サービス開発と補助金|診療の外に出るかどうかで入口が変わります
来院数が頭打ちになってきた動物病院で、診療以外の柱を作ろうという話が出てきます。預かりや美容、しつけ教室、老犬の受け入れ。どれも来院されている飼い主から要望が出やすく、施設と人がすでにある動物病院にとっては始めやすい領域です。
ここで補助金を調べ始めると、出てくるのは診療設備の導入事例ばかりです。画像診断装置や検査機器を入れた話は見つかっても、診療以外のサービスを立ち上げる話はあまり出てきません。そのため「うちの計画は補助金の対象になるのか」が判断できないまま止まってしまいます。
この記事では、制度の一覧を並べる前に、新サービスを登録が要るかどうかで3つに仕分けます。仕分けが決まると、乗れる制度と、計画書に書かなければならない中身が同時に決まります。数字は2026年度・第1回公募の公募要領時点のものです。
比べる前に、そのサービスが診療の内側か外側かを決めます
動物病院が新しく始めるサービスは、獣医療として行うものと、獣医療とは別の事業として行うものに分かれます。この線は感覚ではなく法律で引かれています。
動物の愛護及び管理に関する法律の第10条第1項は、動物の販売・保管・貸出し・訓練・展示と、政令で定める取扱いを業として行おうとする者は、その事業所の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市ではその長)の登録を受けなければならない、と定めています。政令で定める取扱いとして挙がっているのは、競りの方法によるあっせんと、譲り渡した側が飼養費用を負担する形での譲受飼養の2つです。
診療のために入院させている動物を預かる行為は、獣医療の一環として行われるものです。一方、診療とは切り離して動物を預かる、あるいは美容だけを目的に預かる形になると、上の条文が並べる取扱いに近づいていきます。同じ「預かる」でも位置づけが変わるという点が、この記事の出発点です。
どの種別で登録するか、そもそも登録が要るかは、事業所のある自治体の窓口が判断します。サービスの中身を決めた段階で一度確認しておくと、この後の話が組み立てやすくなります。
仕分け1:診療の内側で広げるサービス
専門外来を立ち上げる、他院からの紹介を受ける体制を作る、これまで外注していた検査を院内に移す。こうした計画は獣医療の内側にとどまります。新しく登録を取る話は出てきません。
ただし補助金の側では、診療の内側にとどまることが不利に働く場合があります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠は、申請者にとって新しい製品等であり、かつ申請者にとって新しい市場であることを求めています。既存事業と同一の市場、既存の提供内容の増量、単なるメニュー追加は、この枠の対象から外れる扱いです。診療科目を1つ増やす計画は、ここに引っかかりやすいところです。
この場合は、同じ補助金の革新的新製品・サービス枠を見ることになります。既存業態の改良や新しい提供方法の開発が主軸なら、こちらのほうが筋が通ります。
仕分け2:動物を預かる、扱うサービスに出る場合
預かり、美容、しつけ教室、老犬や老猫の受け入れ。これらは診療の外側に出る計画です。事業所ごとに登録を受け、その事業所に動物取扱責任者を置くことになります(同法第22条第1項)。責任者には都道府県知事が行う研修を受けさせる決まりもあります(同条第3項)。
補助金の側から見ると、この仕分けに入る計画は新事業進出枠の話ができる位置にいます。診療とは別の市場に出るという説明が立てやすいからです。ただし新事業進出枠には補助下限750万円という規模の線があります。トリミング台を1台入れる、ケージを何台か買い足すという規模では、この線に届きません。
届かない規模なら、投資の中身に応じて革新的新製品・サービス枠(補助下限100万円)や小規模事業者持続化補助金を見ることになります。持続化補助金の対象外になる事業者として公募要領が挙げているのは医師・歯科医師・助産師と医療法人などで、獣医師はこの列挙に入っていません。個人で開業していて常時使用する従業員が5人以下であれば、商業・サービス業の小規模事業者として検討できる位置にいます。
仕分け3:動物を預からないサービス
フードや用品の物販、飼い主向けのセミナー、健康管理の相談メニュー。動物を預からず、生体も扱わないサービスは、第10条第1項が並べる取扱いには当たりません。登録の話は出てこず、制度選びは投資額と目的だけで決められます。
逆に、子犬や子猫そのものを扱う計画になると、販売の登録が必要になり、犬猫等販売業として追加の記載事項も出てきます。物販と生体販売は、同じ「売る」でも手前の手続きがまったく違います。
💬 執筆者の三浦から一言
新サービスの相談でよく聞かれるのが、賃上げの計画を守れなかったときどうなるかという話です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は未達なら返還を求められる設計で、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は減額という扱いになっています。同じ賃上げでも効き方が制度ごとに違うので、人を採る前提の計画ほど先に見ておきたい部分です。
登録の中身は、補助金の計画書にもそのまま効いてきます
仕分け2に入った場合、登録の申請書には、営もうとする種別ごとの業務の内容と実施の方法を書きます(同法第10条第2項第4号)。動物を飼養または保管するための施設を設けるなら、その所在地と、構造及び規模、管理の方法も記載します(同項第6号)。そして構造・規模・管理が環境省令で定める基準に適合していないと認められたとき、都道府県知事は登録を拒否しなければならないとされています(同法第12条第1項)。
ここが補助金とつながります。補助金で導入する設備が、そのまま登録審査で見られる施設の一部になるからです。どの機器をどこに置き、何頭まで受け入れ、誰が管理するのか。この説明は、登録の申請書でも補助金の事業計画でも求められます。逆に言えば、片方のために整理した内容がもう片方でも使えます。
順番の話も出てきます。補助金は交付決定の前に行った発注・契約・購入を対象外としています。一方で登録は、施設を整えた状態で自治体の確認を受ける流れです。この2つを同じ時期に走らせようとすると、動かせる順番が限られます。開業予定日から逆算して、どちらを先に置くかを決めておくことになります。
制度側の入口を数字で確かめる
仕分けが決まったら、投資額を制度の線と突き合わせます。以下は2026年度・第1回公募の公募要領時点の数字です。制度は改定されるため、申請前には最新の公募要領で確認してください。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠:補助下限750万円。補助上限は従業員規模で変わり、1〜20人で2,500万円、21〜50人で4,000万円が上限です。補助率は中小企業者で2分の1。この枠だけ建物費が対象経費に入ります(建物の単純購入や賃貸は対象外)。新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が要ります。
- 同 革新的新製品・サービス枠:補助下限100万円。補助上限は従業員5人以下で750万円、6〜20人で1,000万円です。
- 小規模事業者持続化補助金:補助率3分の2、補助上限は50万円。要件を満たす場合の特例上乗せを含めて最大250万円です。商工会・商工会議所の支援を受けて進める設計になっています。
いずれの制度にも、付加価値額や給与支給総額の成長率といった基本要件が置かれています。新サービスで人を増やすのか、いまの人数で回すのかによって、この要件の重さが変わります。設備の見積を集める前に、そこを決めておくと制度の絞り込みが早くなります。
第1回公募の締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃の予定です。登録の手続きに要する期間は自治体によって差があるため、締切から逆算する場合は窓口に見込みを聞いておくと計画が立てやすくなります。
自院の新サービスがどこに当たるか
動物病院の新サービスに使える補助金は、制度の一覧からではなく、そのサービスが診療の内側にとどまるのか、動物を預かる事業として外に出るのかを決めるところから絞れます。
内側にとどまるなら革新的新製品・サービス枠が中心になり、外に出るなら新事業進出枠の話ができる代わりに、登録と動物取扱責任者の手当てが手前に入ります。動物を預からないサービスなら、手続きの心配はせず投資額と目的だけで選べます。
登録の要否や種別の判断は自治体の窓口が行い、行政手続きの詳細は専門家の領域です。制度の選び方と計画の組み立てについては、投資の中身を持って早い段階でご相談ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























