
建設業許可の前後で使える補助金・資金調達|500万円要件と申請の順番を解説
建設業許可を取る前後の資金調達|財産的基礎500万円の考え方と補助金を使う順番
「500万円以上の工事を出したいから、建設業許可を取ってほしい」。元請からそう言われて、はじめて許可の取得を具体的に考え始めた、という一人親方や小規模な工事会社の方は少なくありません。
このとき多くの方が同時に調べ始めるのが、資金の話です。許可の要件に出てくる「500万円」をどう用意するのか。許可を取ったあとに増える仕事に対応するため、機械や車両、システムにいくらかけるのか。その費用に補助金が使えるのか。この3つは、本来つながった一本の話なのですが、インターネット上では「許可の取り方」の記事と「使える補助金一覧」の記事に分かれてしまっていて、順番の設計まで書かれていることはあまりありません。
この記事では、建設業許可の取得を検討している開業まもない事業者の方に向けて、許可の要件として出てくるお金と、投資のためのお金を分けて整理し、融資・許可・補助金をどの順番で動かすと無理がないかを解説します。なお、制度の要件や金額は変わることがあるため、本記事は2026年8月時点の情報にもとづく整理です。
建設業許可が必要になるのは「500万円以上の工事」から
まず前提の確認です。建設工事の請負は、原則として建設業許可が必要ですが、規模の小さい「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は許可がなくても営業できます。この軽微な建設工事の線引きが、次のとおりです。
- 建築一式工事以外の工事:請負代金の額が500万円未満(消費税込み)の工事
- 建築一式工事:請負代金の額が1,500万円未満(消費税込み)の工事、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事
元請から「許可を取ってほしい」と言われるのは、この金額を超える工事を任せたいという意味であることがほとんどです。逆にいえば、許可を取った瞬間から受注できる工事の単価が一段上がるため、その工事をこなすための資金も同時に必要になります。ここが、許可と資金調達が切り離せない理由です。
なお、金額の判定は材料費や消費税の扱いなど細かいルールがあり、注文の分け方によっては合算して判定されることもあります。実際の判定は許可行政庁(都道府県または地方整備局)や行政書士にご確認ください。
許可の「財産的基礎」500万円は、設備投資のお金とは別物です
建設業許可の要件のひとつに、請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していること、というものがあります。一般建設業の場合、次の3つのいずれかに当てはまれば要件を満たすという整理になっています。
- 自己資本の額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金を調達する能力があること
- 直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること
新規で取得する方の多くは2つ目で証明します
開業まもない一人親方や、法人化したばかりの会社では、貸借対照表上の自己資本が500万円に届いていないことがよくあります。3つ目の実績もまだありません。そのため実務上は、2つ目の「500万円以上の資金を調達する能力」を、取引金融機関が発行する預金残高証明書などで示すケースが多くなります。
ここで押さえておきたいのが、残高証明書には有効期間の扱いがあり、申請の直前に取得したものが求められるという点です。つまり「いつでもいいから500万円を用意する」のではなく、「申請書を出すタイミングに合わせて500万円を口座に置いておく」という時間の設計が必要になります。証明書の有効期間や必要書類は許可行政庁によって運用が異なるため、申請先の手引きを確認するか、行政書士に相談しながら進めると確実です。
要件を満たすための500万円は、使ってしまうと意味がありません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。財産的基礎を証明するための500万円は、あくまで「支払い能力があること」を示すためのお金です。証明の直後にその全額を機械の購入や現場の立て替えに使ってしまえば、許可は取れても、肝心の工事を回す資金が手元に残りません。
許可取得のために必要なお金と、許可を取ったあとの仕事を回すお金は、別々に見積もる。この分け方をしないまま資金調達をすると、「許可は取れたのに、大きな現場を受けたら立て替えで資金が尽きた」という事態になりやすくなります。
補助金で許可取得の費用は賄えません
「補助金で許可取得の費用をまかなえないか」と考える方もいますが、結論からいえば、登録免許税や許可申請の手数料、行政書士に依頼する報酬といった許可取得そのものにかかる費用は、補助金の対象になりません。
国の補助金は、販路開拓や設備投資、システム導入といった「事業を伸ばすための投資」に対して交付されるものです。許可の取得は、その事業を行うための前提を整える手続きであって、投資ではないという整理になります。したがって、許可取得の費用と財産的基礎の500万円は、自己資金か融資でまかなうのが基本になります。
補助金が効いてくるのは、許可を取ったあと、あるいは取ることを前提に「何に投資するか」が決まってからです。次の章で、建設業の方が実際に検討しやすい制度を整理します。
許可の前後で検討しやすい補助金4制度
以下はいずれも2026年8月時点の公募要領等にもとづく整理です。公募回によって要件や金額が変わるため、申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
販路開拓なら小規模事業者持続化補助金
許可を取って請けられる工事の幅が広がったとき、それを取引先に伝える手段に使えるのがこの制度です。補助率は2分の1ではなく3分の2で、補助上限は基本50万円。インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされ、両方の要件を満たす場合は最大250万円になります。上乗せ分は要件を満たす場合に限られるため、はじめから250万円が使えるわけではない点に注意してください。
建設業は「製造業その他」に区分され、常時使用する従業員20人以下が対象です。会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員・日雇い等はこの人数にカウントしません。一人親方であればまず問題なく範囲に入ります。
実務で見落とされやすい点を挙げておきます。広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)で、しかもどちらも単独での申請はできません。看板やチラシだけ、ホームページだけ、という計画は組めないということです。また、自動車やフォークリフト等の車両は原則として対象外なので、現場用の軽トラックを補助金で買う計画は成り立ちません。
申請にはGビズIDプライムのアカウントと、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要です。第20回公募のスケジュールは、申請受付開始が2026年11月5日、様式4の発行受付締切が2026年12月4日、申請受付締切が2026年12月15日17時、採択発表は2027年3月頃の予定とされています。様式4は締切以降の発行依頼がいかなる理由でも受け付けられないため、窓口には余裕をもって相談してください。
施工管理や原価管理のシステムならデジタル化・AI導入補助金
許可を取ると、工事の件数と一件あたりの金額が増え、現場ごとの原価や進捗の管理が紙とやり取りだけでは追いつかなくなります。施工管理システムや原価管理システムの導入を検討する段階になったら、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が選択肢になります。補助上限は3,000万円で、対象はソフトウェアやクラウドサービスを中心とした業務のデジタル化です。あらかじめ登録されたツールと支援事業者を通じて申請する仕組みになっているため、導入したいシステムが登録対象かどうかを先に確認しておくと二度手間になりません。
現場の省力化なら中小企業省力化投資補助金(一般型)
人手が足りず、機械化や自動化で一人あたりの生産性を上げたいという段階では、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になります。補助上限は1億円と大きい一方で、労働生産性の年平均4.0パーセント以上の向上といった要件や賃上げ要件が設定されており、達成できなかった場合は返還が生じることがあります。金額の大きさだけで選ばず、達成できる目標かどうかを先に確かめる制度です。
新しい分野に進出するなら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
2026年度から、従来のものづくり補助金と新事業進出補助金は統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金という名称になりました。建設業では、太陽光や蓄電池の施工、ドローンを使った測量サービスなど、これまでと違う分野に踏み出すときに検討されることが多い制度です。
枠によって金額の設計が異なります。新事業進出枠は従業員20人以下で2,500万円(大幅賃上げ特例の適用で3,000万円)が上限で、補助下限は750万円です。革新的新製品・サービス枠は従業員5人以下で750万円、6人から20人で1,000万円が上限、補助下限は100万円です。よく見かける「上限9,000万円」「上限3,500万円」という数字は、最大の従業員規模で大幅賃上げ特例を適用した場合の最大値であり、小規模な事業者にそのまま当てはまるものではありません。補助率は中小企業者で2分の1(小規模事業者等は3分の2)です。
第1回公募は2026年6月29日から2026年9月30日18時までが申請期限で、採択発表は2026年12月頃とされています。特に新事業進出枠は補助下限が750万円あるため、投資額が小さい計画では土俵に乗らない点も押さえておいてください。
資金は「融資 → 許可 → 補助金」の順に考える
ここまでの内容を、時間の順番に並べ直します。
補助金が最後になる理由
補助金には、採択されて交付決定を受ける前に発注・契約・支払いをした経費は対象にならない、という共通のルールがあります。採択の通知が届いただけでは事業を始められません。さらに、補助金は原則として精算払い、つまり自分で全額を支払って実績報告をしたあとに入金される後払いの仕組みです。
これは、許可を取った直後の事業者にとって相性の悪い構造です。仕事が増えるから設備を入れたい、というときに、補助金の交付決定を待っていては受注機会を逃しますし、待てたとしても支払いは先に自分で行う必要があります。だからこそ、先に手元資金を確保する手段(自己資金や融資)を用意しておき、補助金はその上に乗せる後追いの回収手段として位置づけるのが現実的です。
許可を取った直後は「創業期」の枠を使える場合があります
もうひとつ、時間の面で見落とされやすい点があります。日本政策金融公庫の創業融資でいう「創業期の方」とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指します。開業して間もない時期に許可を取る方は、この創業期に当てはまることがあり、その期間は創業向けの枠組みを検討できます。
創業期の方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用でき、利率については原則0.65パーセント(雇用の拡大を図る場合は0.9パーセント)の引下げが適用される可能性があります。この引下げは担保の有無で対象が変わるものではありませんが、適用できるかどうかは利用する制度や審査・条件によって異なるため、必ず下がるとは考えず申請先でご確認ください。
金額と期間の目安も挙げておきます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期に無担保で利用する場合で年3.45パーセントから5.15パーセントとなっています。返済期間は新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、いずれも元金返済の据置期間を5年以内で設定できます。据置期間中は利息のみの支払いです。
手続きにかかる時間は、書類提出後おおむね3週間から1か月が目安で、創業計画書や見積書などの準備を含めると合計で2か月程度を見ておくと安全です。許可申請のために残高証明書を取るタイミングから逆算すると、融資の相談はかなり早めに動き出す必要があることが分かります。
なお、自己資金については、制度上の額や割合の要件は決まっていません。ただし審査の重要な判断材料であることは確かで、多いほど有利になりやすいという性格のものです。
許可取得の前後でつまずきやすい4つのパターン
最後に、実際に相談を受けていて多い失敗のかたちを挙げておきます。
- 残高証明のためだけに資金を用意し、工事の運転資金が残らない:財産的基礎の500万円と、工事を回す運転資金は別々に見積もります。許可取得後の一件あたりの工事金額が上がることを前提に、立て替えが必要な期間の資金を計算しておきます。
- 交付決定の前に発注してしまう:見積りを取って話が進んだ勢いで契約すると、その経費は補助対象から外れます。補助金を使う予定の設備は、交付決定の通知を受けるまで発注しないことを社内のルールにしておくと安全です。
- 補助金の入金を前提に支払い計画を組む:精算払いのため、支払いは自分が先に行います。補助金は資金繰りの穴を埋めるものではなく、後から戻ってくるものだと考えて計画を立ててください。
- 法人成りすれば創業融資を使えると考えてしまう:個人事業として営んでいる事業をそのまま法人化する法人成りは、既に事業実績があるとみなされ、原則として創業融資の対象外で通常の融資の扱いになります。一方、いま営んでいる事業とは別の新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その法人にとっては創業にあたるため創業融資を利用できます。許可の取得と法人化を同時に考えている方は、この線引きに注意してください。
よくある質問
Q. 行政書士に許可申請を依頼する報酬は補助金の対象になりますか
A. 許可の取得そのものにかかる費用は補助金の対象になりません。補助金の対象は販路開拓や設備投資、システム導入といった事業への投資です。許可取得の費用は自己資金または融資でまかなうものとお考えください。
Q. 財産的基礎の500万円は借入で用意しても構いませんか
A. 一般建設業では「500万円以上の資金を調達する能力があること」という基準があり、預金残高証明書などで示す運用が一般的です。どの書類でどこまで認められるかは許可行政庁の運用によって異なるため、申請先の手引きを確認するか、行政書士にご相談ください。
Q. 補助金の申請は、許可を取ってからのほうがよいですか
A. 補助金の申請要件そのものは建設業許可の有無で決まるものではありません。ただし、許可を取ることで受注できる工事が変わり、投資の中身と事業計画の説得力も変わります。何に投資するかが固まってから申請したほうが、計画は書きやすくなります。
Q. 補助金と融資は同時に進めてもよいですか
A. 進めて問題ありません。むしろ、補助金が後払いである以上、支払いに充てる資金は別に確保しておく必要があります。融資で手元資金を用意し、補助金で一部を回収するという組み立てが現実的です。
まとめ
建設業許可の取得を考え始めたら、お金の話を3つに分けて整理してみてください。1つ目は許可の財産的基礎を示すための500万円、2つ目は許可取得後に増える工事を回すための運転資金、3つ目は設備やシステムへの投資です。1つ目と2つ目は自己資金と融資、3つ目は融資で先に手当てしたうえで補助金を後から乗せる。この順番で考えると、資金が途中で詰まりにくくなります。
本記事の内容は2026年8月時点の情報にもとづくものです。建設業許可の要件や運用は許可行政庁によって異なる部分があり、補助金の要件・金額・スケジュールも公募回ごとに変わります。実際に動き出す前に、最新の公募要領と申請先の手引きをご確認いただき、判断に迷う点は専門家にご相談ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























