
初めてパートを雇う個人事業主が押さえたい、事業場内最低賃金と補助金の要件
はじめてパートを雇うとき、時給は相場や周りの雰囲気で決めがちです。ただ、中小企業省力化投資補助金(一般型)のような補助金を将来使う可能性があるなら、時給の決め方そのものが申請の条件に関わってきます。この記事では、時給を決める前に確認しておきたい「事業場内最低賃金」の考え方を、順番に整理します。
事業場内最低賃金とは、その事業場で一番低い時給のこと
事業場内最低賃金とは、補助事業を実施する事業場の中で最も低い賃金のことです。社長の給与や正社員の時給が高くても、パートの時給が一人でも低ければ、その額が基準になります。
ポイントは平均ではなく、最も低い額で見られることです。新しくパートを雇うと、その人の時給が事業場全体の下限になる可能性があります。雇う前に「この時給が事業場の最低ラインになる」と考えておくと、判断がしやすくなります。
要件は「都道府県の最低賃金+30円以上」を毎年の水準にすること
中小企業省力化投資補助金(一般型)では、事業計画期間中、事業場内最低賃金を毎年「補助事業を実施する都道府県の最低賃金+30円以上」の水準にすることが求められています(公募要領 第8回・2026年8月版)。
補助事業を行う事業場が複数ある場合は、その中で事業場内最低賃金が最も低くなる事業場の値が使われます。店舗や拠点が増える予定の方は、どの事業場の時給が基準になるかを先に確認しておくと安心です。
一度決めた時給で終わりではなく、毎年の水準として見られる
この要件は、採択時に一度満たせばよいものではありません。事業計画期間中の毎年、満たし続ける前提で計画を組むことになります。そのため、時給を決めた時点だけでなく、その後の運用まで含めて考える必要があります。
最低賃金の改定で、要件を割るリスクがある
最低賃金は都道府県ごとに決まり、毎年改定されます。改定の時期は都道府県によって異なり、多くは秋ごろに動くといわれています。今の時給が要件を満たしていても、改定後の最低賃金に+30円を加えた額を下回る可能性があります。
補助金側の判定は、毎年3月末時点で行われます。補助事業を完了した事業年度の翌年度以降、3月末時点で事業場内最低賃金の引き上げ要件を達成できていない場合は、補助金額を事業計画年数で割った額の返還を求められます(公募要領 第8回・2026年8月版)。付加価値額が増えず、営業利益が赤字になっているなど、事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとされていますが、例外に当てはまるかどうかは個別の判断になります。
改定のたびに時給を見直す仕組みを、雇用の計画に最初から入れておくことが大切です。
時給の決め方の例:最低賃金の額から逆算する
- 補助事業を行う都道府県の、最新の最低賃金額を確認する
- その額に30円を足した額を、事業場内の最低ラインとして置く
- 新しく雇うパートの時給を、その額以上にする
- 翌年以降の最低賃金改定を見越して、毎年の見直しの時期を決めておく
たとえば、最低賃金がX円の都道府県なら、X円+30円が下限の目安になります。Xの額は年度ごとに変わるため、最新の公表額で確認してください。
最低賃金ぎりぎりの時給にしておくと、改定のたびに要件割れのリスクを抱えることになります。逆に、少し余裕をもたせた時給にしておくと、見直しの回数を減らせる可能性があります。ただし、人件費全体とのバランスは事業ごとに違うため、金額の判断は専門家に相談するのが安全です。
💬 執筆者の三浦から一言
補助金を審査する側にいた立場から言うと、要件を割ったときの扱いは制度ごとに違います。省力化投資補助金(一般型)は、要件未達の場合に返還の対象になる仕組みがあるので、毎年の時給を見直す習慣を持っておくと、判断に迷いにくくなります。
よくある質問
従業員が0人のときに申請できますか。
応募申請時に従業員数が0名の場合は、対象となる給与が存在しないため、応募できません。従業員がいても、基準年度と算出対象となる各事業年度で対象となる従業員が0名なら、応募できません(公募要領 第8回・2026年8月版)。
店舗や拠点が複数ある場合、どの時給で判定されますか。
補助事業を実施する事業場が複数ある場合は、その中で事業場内最低賃金が最も低くなる事業場の値を用います(公募要領 第8回・2026年8月版)。
時給を最低賃金+30円に合わせておけば、毎年の心配はいりませんか。
判定は毎年3月末時点で行われるため、最低賃金が上がった年には、その年の基準に対して要件を満たしているかを見直す必要があります。改定の時期や時給の決め方は、社労士や管轄の労働局・窓口に相談すると確実です。
まとめ
事業場内最低賃金は、その事業場で一番低い時給のことです。補助金の要件では、都道府県の最低賃金+30円以上を毎年維持することが求められ、判定は毎年3月末時点で行われます。初めてパートを雇う段階で、時給の決め方と改定時の見直しを一緒に計画しておくと、後から慌てずに済みます。
最低賃金の改定時期や時給の決め方は、社労士や管轄の労働局・窓口へご相談ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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