
飲食店の店長が独立するための準備|家賃・税金・借入返済を元信用金庫担当者が整理
飲食店の店長が独立する前の準備、本部が担っていた4つの役割を整理する
店長として経験を積み、独立を考え始めた方から、こんなご相談をよくいただきます。
💬 店長経験者の方からのご相談
飲食店の店長として10年以上、売上管理やシフト作成、スタッフ教育をしてきたので、店を回すことには自信があります。ただ、独立すると本部が負担していた家賃交渉、資金調達、税金、借入返済まで自分の責任になります。店長経験があっても、経営者になる前に改めて準備しておくべきことは何でしょうか?

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。
小峰からの回答
結論から言うと、十年以上の店長経験は、独立準備の大きな土台になります。そのうえで準備すべきことは、店を回す力をさらに磨くことよりも、本部が担っていた「会社全体のお金と契約の管理」を、自分の仕事として一つずつ書き出し、数字に落としておくことです。
私は朝日信用金庫で法人営業を担当し、融資を出す側、審査する側の立場にいました。その立場から、店長を務めてきた方が独立前に整理しておくとよい項目を、ご質問にあった家賃、資金調達、税金、借入返済の順にお伝えします。
店舗運営の力と、会社全体の資金管理は役割が違います
売上管理、シフト作成、スタッフ教育は、一つの店の中で利益を出すための仕事です。店長時代は、その店の損益に責任を持っていたはずです。一方で独立すると、店の外側にあった仕事が加わります。物件の契約、資金の調達、納税、借入の返済といった、会社全体のお金の流れを見る仕事です。
これは店長としての力が足りないという話ではなく、担当する範囲が変わるという話です。ですから準備の進め方は、漠然とした怖さを抱えたまま待つことではなく、本部の担当者がしていた仕事を一覧にして、自分の担当に振り替えていくことになります。
準備項目1:賃貸借契約と家賃
店長時代は、出店の条件や賃料の交渉を本部が受け持っていた方も多いと思います。独立すると、賃料の額だけでなく、契約期間、賃料の改定、中途解約の条件まで、契約書を自分で読んで判断することになります。
家賃は売上に関係なく毎月出ていく固定費です。交渉に入る前に、売上計画から逆算して「この家賃までなら回る」という上限を決めておくと、条件を受けるのか見送るのかを落ち着いて判断できます。その根拠になるのが、店長時代に見てきた月次の売上、原価、人件費の数字です。契約書の内容も、分からない条項を残したままにせず、契約前に書き出して確認しておきましょう。
準備項目2:資金調達
資金調達は、自己資金と融資の両方を考えます。日本政策金融公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になるため、面談の時点で口座に確認できる形にしておいてください。
審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。このうち斯業経験は、同じ業種での勤務経験、勤務年数、役職のことで、創業計画書の経験欄に書く内容です。飲食店で店長として働いてきた年数や、その店でどの範囲を任されていたのかは、具体的に書ける材料になります。
事業計画の具体性という点では、売上、原価、人件費をどの根拠で見積もったのか、返済の原資をどこから確保するのかを、数字の出どころまで説明できる形にします。店長時代に毎月見ていた数字は、この根拠として使えます。
時間の目安も押さえておきましょう。2026年9月時点で、公庫の創業融資は書類提出後おおむね3週間から1か月が申込から実行までの目安で、準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。開業したい日から逆算して、いつまでに何を揃えるかを決めておく必要があります。
準備項目3:税金
会社員として給与を受け取っていたころは、税金に関する手続きの多くを勤め先が担っていました。独立すると、売上が立った分だけ納める税金が生じ、納付の時期にはまとまった資金が出ていきます。納付の時期を資金繰りに織り込んでおかないと、手元の現金が足りなくなることがあります。
税額の計算や申告の手続きは税理士の領域ですので、ここで詳しい方法には触れません。準備としてお勧めするのは、開業前の段階で税理士に相談する窓口を持っておくことです。また、金融機関の審査では、借入状況や返済遅延に加えて、税金の未納も信用情報の材料として見られます。納付の期限を守ることは、資金調達の面でも意味を持ちます。
準備項目4:借入返済
店長時代には、返済という仕事がありませんでした。独立後は、借りたお金を事業の利益から返していきます。返済の原資をどこから出すのかは、審査でも見られる点です。
制度の数字も確認しておきます。2026年9月1日現在の公庫の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.75〜5.35%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査、条件により異なりますので、必ず下がると考えず申込先で確認してください。
元金返済の据置期間は、5年以内の範囲で認められることがあり、据置中は利息のみの支払いとなります。ただし、適用される利率や据置期間は審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選んで決められるものではありません。据置が終われば元金の返済が始まりますので、月々の返済額を売上計画に載せたうえで、返済後にも手元に資金が残るかを確認しておくことが大切です。
まず着手する順番
準備項目が多く感じられるときは、次の順で進めてみてください。
- 本部が担っていた仕事(賃貸借契約、資金調達、納税、借入返済など)を書き出し、自分の担当として一覧にする
- 店長時代の月次の売上、原価、人件費をもとに、家賃の上限と月々の返済額の見通しを数字にする
- 自己資金を、面談の時点で口座に確認できる形に整える
- 創業計画書の経験欄に書く、店長としての勤務年数と担当範囲を整理する
- 税理士に相談する窓口を、開業前に持っておく
まとめ
店長として積み上げてきた現場の力は、事業計画の根拠としてそのまま活きます。本部が担っていた役割を項目に分け、数字と時期を決めていけば、独立後にお金の管理で慌てる場面は減らしやすくなります。
ひとりで整理しきれないときは、独立前の資金計画や財務の体制づくりを、専門家と一緒に整理する方法もあります。本部が担っていた項目のどこから手を付けるか、事業計画にどう反映するかを、ご自身の状況に合わせて確認してみてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























