
経営者なら知っておきたい!いまさら聞けない「リスクリバーサル」ってなに?
「リスクリバーサル」という言葉、耳にしたことはあるけれど、説明してと言われるとちょっと困る…という経営者の方、実は少なくありません。今日は、この“いまさら聞けない”マーケティング戦略を、経営の現場目線でやさしく解説します。
1. リスクリバーサルとは?
ズバリ言います。
リスクリバーサルとは、お客様が商品やサービスを購入するときに感じる「リスク=不安・心配・迷い」を、提供者側が肩代わりする仕組みのことです。
たとえば、通販でよく見かける「30日間返品保証」「全額返金保証」「成果が出なければ料金ゼロ」などが代表例。お客様は“損するかもしれない”という心理的ブレーキを外され、購入に踏み切りやすくなるのです。
2. なぜ経営者が知っておくべきか?
経営者の役割のひとつは「売れる仕組みを作る」こと。どんなに良い商品でも、お客様の心の中にある不安を取り除かなければ、購入には至りません。
お客様の購買心理はシンプルです。
「失敗したくない」
「損したくない」
「後悔したくない」
リスクリバーサルは、この不安を解消する強力な武器。特に中小企業や個人事業では、知名度やブランド力が大手に劣る分、安心を提供する仕掛けが必要不可欠です。
3. よくある導入例
実務でよく使われるリスクリバーサルの形は、次のようなものです。
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返金保証
「満足いただけなければ全額返金します」
→ 一番分かりやすく、心理的ハードルを下げやすい方法。 -
お試し期間
「まずは30日間、無料で使ってみてください」
→ 実際に体験してもらい、納得の上で本契約へ。 -
成果保証
「成果が出なければ料金はいただきません」
→ コンサル、広告運用、教育サービスなど成果が測定しやすい分野で有効。 -
修理・交換保証
「購入から1年間、無償で修理・交換します」
→ 商品の品質に自信があることをアピール。
4. 経営上の注意点
リスクリバーサルは確かに強力ですが、経営者としては、もちろん!安易な導入は危険です。いくつか注意点があります。
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原価・コストを把握する
返金や交換が発生した場合の損失を計算し、許容範囲を決めておきましょう。 -
対象条件を明確にする
「使用後でも返金可」なのか「未開封のみ」なのか、条件を曖昧にするとトラブルの元です。 -
悪用リスクへの対策
極端な例では、“最初から返金狙い”の顧客も存在します。過去の事例や業界特性に応じてルールを設計しましょう。
5. 中小企業が活用するときのコツ
ここがポイントです。
大企業と違い、中小企業は「条件のゆるい大規模保証」を真似すると経営が持ちません。そこでオススメは、保証範囲を限定しつつ心理的効果を最大化する方法です。
例:
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返金保証は「初回購入者限定」にする
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お試し期間は「主要機能だけ使える」設定にする
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成果保証は「お客様にも一定の行動義務を課す」
こうすることで、リスクを最小限に抑えながら、安心感はしっかり提供できます。
6. 実際の成功事例
私が支援したある研修会社では、「初回研修がご満足いただけなければ無料」を掲げました。結果、問い合わせ数は2倍、契約率は1.5倍に。実際に無料になったケースはごくわずかで、多くは満足して次回契約につながりました。
また、地方の美容院では「気に入らなければ無料でやり直し」制度を導入。クレーム対応コストは少し増えましたが、口コミ評価が上がり新規顧客が増加。売上は前年対比で20%アップしました。
7. 導入手順の流れ
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お客様の不安要因を洗い出す
価格?品質?納期?成果? -
その不安を解消する保証方法を考える
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コスト試算と悪用防止策を設計(費用対効果で、効果が上回りそうなら導入する、ということも確認)
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明確な条件を定め、分かりやすく表示
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実施後は効果測定と改善
まとめ
リスクリバーサルは、お客様の“買わない理由”を減らす最強の戦略のひとつです。
ただし、経営者としては「感情的に導入する」のではなく、「数字と仕組み」でコントロールしながら使うことが大切です。
経営は、攻めと守りのバランスが命。リスクリバーサルは“攻め”のマーケティングでありながら、実は“守り”の信用構築にも直結します。
ぜひ、自社の商品やサービスに合わせた形で、導入を検討してみてください。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。