
経営者なら知っておきたい!いまさら聞けない「ラポール形成」って何?
経営者として日々、人と会い、商談や打ち合わせを重ねていると、「あ、この人とは話が弾むな」「信頼してもらえているな」と感じる瞬間があるはずです。逆に、何度会っても距離感が縮まらず、相手の心をつかめない…そんな経験もあるでしょう。
この「心の距離」を一気に縮める技術が、今回のテーマであるラポール形成です。
1. ラポール形成とは?
ラポールとは、フランス語で「架け橋」や「信頼関係」を意味します。心理学やカウンセリングの世界では、相手との間に安心感や共感が生まれ、自然に心を開ける状態を指します。
ビジネスの現場でいえば、
「この人なら任せられる」
「この会社となら一緒にやりたい」
と思ってもらえる関係のこと。経営者にとっては、売上や契約以前に、この土台作りが欠かせません。
2. なぜ経営者に必要なのか?
ズバリ言います。
ラポール形成は、営業トークやプレゼンのテクニックよりも先に習得すべき“基礎の基礎”です。なぜなら、人は信頼していない相手からは買わないからです。
実際、同じ条件の商品やサービスでも、「信頼できるA社」と「何となく不安なB社」があれば、ほとんどのお客様はA社を選びます。これは価格競争に巻き込まれないための大きな武器にもなります。
これだけビジネスが発達し、どの商売でもライバルだらけという世の中では「誰から買うか」が重要となっているためです。
3. ラポール形成の基本ステップ
ここでは、私が経営者支援や商談の現場で使ってきた、実践的な方法をご紹介します。
① ミラーリング
相手の姿勢や話し方、表情、声のトーンなどを自然に合わせる方法です。
例えば、相手が落ち着いたトーンで話していれば、こちらもゆっくりと話す。腕を組んでいれば同じように軽く腕を組む。意識しすぎると不自然になりますが、程よく取り入れることで安心感を与えられます。
② ペーシング
会話のスピードやリズムを相手に合わせることです。せっかちな相手にはテンポよく、じっくり考えるタイプには間を置いて話す。これにより「この人は自分に合っている」という感覚が生まれます。
③ 共通点の発見
人は共通点がある相手に親近感を抱きます。出身地、趣味、好きなスポーツ、家族構成など、雑談を通じて自然に見つけましょう。共通の知人や業界の話題も効果的です。人と仲よくなるための基本ですよね。私生活でもたくさんの経験をし、たくさん遊び、旅行し見聞を広めましょう。努力して話題を増やしましょう。
④ 傾聴と共感
相手の話を最後まで遮らずに聞く。そして「それは大変でしたね」「よく分かります」と感情に寄り添う。この“聴く力”が、信頼関係の太い土台になります。
4. よくある失敗パターン
ラポール形成を意識するあまり、逆効果になってしまう例もあります。
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あからさまなマネ
ミラーリングをやりすぎて相手に気づかれ、不快感を与える。 -
共感の押しつけ
「私も同じです!」を連発し、かえって軽く見られる。 -
自分の話ばかり
信頼関係は双方向。自分ばかり話すのは一方通行です。
5. 経営者が意識すべき3つのポイント
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短期勝負ではなく長期戦で考える
1回の商談で急に信頼を勝ち取ろうとせず、複数回の接触で関係を深める。→ザイオンス効果(単純接触効果) -
立場より人間性で勝負する
「社長だから」ではなく、「あなただから」という信頼を得ることが大切。 -
小さな約束を守る
メールの返信期限、資料の送付など、日常の約束を守ることが信頼の積み重ねになります。
6. 成功事例
ある中小メーカーの社長は、新規営業の成約率が20%から50%に跳ね上がりました。その理由は、商談の最初の10分間を「商品説明」ではなく「雑談と傾聴」にあてたこと。お客様は「この人は私の話を本気で聞いてくれる」と感じ、契約へのハードルが大きく下がったのです。
別の例では、建設業の経営者が地元のイベントに頻繁に参加し、地域の人々と顔見知りに。結果、入札なしで仕事を依頼されるケースが増えました。これはまさに、地域とのラポール形成の成果です。
7. すぐにできる実践チェックリスト
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商談前に相手のプロフィールやSNSを確認して共通点を探す
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初対面ではまず相手の名前をしっかり呼ぶ
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相手の発言を要約して返す(オウム返し)
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1日の終わりに「今日、自分は相手の立場で話せたか?」を振り返る
まとめ
ラポール形成は、経営者にとって「売る前の勝負どころ」です。
どれだけ素晴らしい提案書を作っても、信頼関係がなければ意味がありません。逆に、強いラポールが築ければ、多少の条件差や価格差を超えて契約が決まります。
経営とは、商品やサービスを通じて人と人がつながる営み。その最初の一歩を確実に踏み出すために、今日から「ラポール形成」を意識してみてください。きっと、ビジネスの景色が変わります。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。