
マンション管理会社の設立と創業融資申請|登録要件から逆算する資金調達の順番
マンション管理会社を設立して独立するには?登録要件と創業融資の進め方を解説
管理会社でフロント業務を経験し、「自分の会社でマンション管理を受託したい」と考える方は少なくありません。管理受託は毎月の管理委託費が積み上がるストック型のビジネスで、事業計画も立てやすい業種です。
ただ、マンション管理会社の設立は「会社をつくれば始められる」わけではありません。受託する物件の種類によって根拠となる法律が変わり、登録の要件も変わります。そして、その要件の一部は創業融資で調達した資金では満たせません。ここを知らずに資金計画を組むと、融資は下りたのに登録ができないという事態になりかねません。
この記事では、設立前に整理しておきたい登録の枠組みと、創業融資で押さえるべき数字、そして設立・登録・融資を進める順番を整理します。
まず整理すべき「2つの管理業」の違い
「マンション管理」と一口に言っても、実務上は根拠法の異なる2つの事業に分かれます。どちらを主戦場にするかで、必要な登録も、事業計画の書き方も変わります。
分譲マンションの管理組合から受託する場合
分譲マンションの管理組合から管理事務の委託を受けて事業を営む場合は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)に基づき、マンション管理業者としての登録が必要になります。登録は有効期間が定められており、期間ごとの更新が求められます。
登録にあたっては、事務所ごとに管理業務主任者を置くこと、そして一定の基準資産額を満たすことが求められます。管理業務主任者は国家資格で、受託する管理組合の数に応じて必要な人数が決まる仕組みです。開業時点で自分自身が資格を持っているのか、それとも有資格者を採用するのかで、初期の人件費が大きく変わります。
賃貸マンション・アパートを管理する場合
オーナーから賃貸物件の管理を受託する場合は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)が根拠になります。管理戸数が一定規模以上になると賃貸住宅管理業者としての登録が必要で、営業所または事務所ごとに業務管理者を配置することが求められます。
分譲と賃貸では、収益構造も顧客との関係も別物です。まとめて「不動産業の開業」として語られることが多い領域ですが、どちらを主軸に据えるかは事業計画書の説得力に直結します。設立前に決めておきましょう。
基準資産額は「借りたお金」では満たせない
ここが、マンション管理会社の設立でもっとも見落とされやすい論点です。
マンション管理業者の登録要件である基準資産額は、資産の総額から負債の総額を差し引いた金額で判定されます。つまり、金融機関から資金を借り入れても、手元の資産(現預金)と同時に負債(借入金)も増えるため、差し引きの金額は基本的に変わりません。創業融資で調達した資金は、基準資産額の要件を満たすためには使えないと考えておく必要があります。
要件を満たす方向としては、資本金として自己資金を入れる、あるいは資産を増やしつつ負債を伴わない形で純資産を厚くする、といった設計が必要になります。融資はあくまで、登録後に事業を回していくための設備資金・運転資金として位置づけるのが実務的です。
なお、資本金の額をいくらにするか、どう払い込むかといった手続きの詳細は、法人設立の登記実務にあたります。具体的な進め方は司法書士などの専門家に確認してください。
創業融資で押さえておきたい数字
設立後の資金調達では、日本政策金融公庫の創業融資が中心的な選択肢になります。主力制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」です(2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました)。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 基準利率:無担保で創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%(2026年6月1日現在)
- 創業期の引下げ:無担保で利用する創業期の方には、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。適用可否は利用する制度・審査・条件により異なるため、申請先でご確認ください
- 返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内。いずれも据置期間は5年以内で設定できます
- 担保・保証人:創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できます
- スケジュール:書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行。書類準備を含めると合計2か月程度を見込むと安全です
金利や制度内容は改定されることがあるため、申請時点の日本政策金融公庫の公式情報で必ずご確認ください。
設立・登録・融資を進める5ステップ
- 受託する物件の種類を決める:分譲マンションの管理組合から受託するのか、賃貸物件をオーナーから受託するのかを先に固めます。ここが決まらないと、必要な登録も配置すべき有資格者も決まりません。
- 資格と人員の見込みを立てる:管理業務主任者や業務管理者を自分で確保できるのか、採用が必要なのかを確認します。採用が必要なら、その人件費は開業時から発生する固定費として資金計画に組み込みます。
- 登録要件から逆算して資本金を決める:基準資産額の要件は借入では満たせないため、自己資金でどこまで積めるかを先に確認します。手元の自己資金が足りない場合、開業時期そのものを見直す判断も必要になります。
- 法人を設立し、登録申請を進める:設立登記の具体的な手続きは司法書士、登録申請の書類まわりは行政書士など、それぞれの専門家に相談しながら進めます。
- 創業融資を申請する:登録の見通しが立った段階で、設備資金・運転資金の融資を申請します。管理受託は入金までにタイムラグが生じやすい業種なので、据置期間の使い方もあわせて検討します。
創業融資の申請には準備を含めて2か月程度かかります。登録の手続きと並行して進める前提で、開業希望日から逆算してスケジュールを組んでください。
審査でつまずきやすいポイント
受託の見込みを具体的に書けていない
管理受託はストック型の収益モデルですが、裏を返せば「受託できなければ売上が立たない」事業です。事業計画書では、どの規模の物件を何件、どういう経路で受託していく想定なのかを、単価と件数に分けて示すことが重要になります。前職で培った管理組合や不動産オーナーとの関係性は、事業の実現可能性を説明する材料になります。
法人成りと新規創業の区別があいまい
すでに個人で管理受託の事業を営んでいて、それをそのまま法人化する「法人成り」の場合は、原則として創業融資の対象外となり、通常の融資の扱いになります。一方、個人で営んでいる事業とは別の新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その法人にとっては創業にあたるため、創業融資を利用できます。自分がどちらに当たるかは、申請前に整理しておきましょう。
自己資金の見せ方を準備していない
公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいのが実情です。面談の時点で口座に確認できる形にしておきましょう。創業前に自費で取得した資格や購入した備品などは、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあるため、領収書を必ず保管しておいてください。
よくある質問
Q. 管理業務主任者の資格がなくても会社は設立できますか
会社の設立自体と、マンション管理業者としての登録は別の手続きです。ただし登録には事務所ごとの管理業務主任者の設置が求められるため、資格者を確保できないまま登録が必要な業務を始めることはできません。自分で取得するか、有資格者を採用するかを、設立前に決めておく必要があります。
Q. 未経験でマンション管理会社を立ち上げても融資は受けられますか
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。ただ、業界未経験の場合は説得力をどう補うかが論点になります。事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
まとめ
マンション管理会社の設立でつまずきやすいのは、資金の総額ではなく「資金の質」です。基準資産額の要件は自己資金で満たす必要があり、創業融資は登録後に事業を回すための資金として位置づけるのが基本になります。この順番を取り違えると、資金は用意できたのに登録ができないという事態が起こり得ます。
受託する物件の種類を決め、必要な有資格者を確保し、登録要件から逆算して資本金を決める。そのうえで設備資金・運転資金の創業融資を申請する。この順番で進めれば、手戻りをかなり減らせます。制度・金利・登録要件はいずれも改定されることがあるため、本記事の内容は執筆時点の情報として参照し、実際の申請時には公式情報でご確認ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























