
介護・デイサービスの開業融資で失敗しないコツ5選|資金繰りの落とし穴と対策
介護事業の開業融資で失敗しないためのコツ|創業前に知っておきたい5つの落とし穴
デイサービスや訪問介護などで独立開業を考えるとき、多くの方が最初にぶつかるのが開業資金の壁です。介護事業は人員配置の基準があり、開業当初から一定の人件費がかかる一方、売上(介護報酬)の入金には時間差があるため、資金計画を甘く見ると開業後すぐに資金繰りが苦しくなりがちです。この記事では、これから介護事業の開業を検討している方に向けて、創業融資でつまずきやすい落とし穴と、失敗しないための準備のコツを整理します。なお、融資の制度・金利・要件は変わりやすいため、本文の数字は執筆時点(2026年7月)の情報として参考にし、申請前には必ず日本政策金融公庫などの最新の公式情報を確認してください。
介護事業の開業融資の基本を押さえる
介護事業の開業でまず候補になるのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。政府系金融機関のため、民間金融機関では対応が難しいケースにも積極的に取り組むのが特徴で、原則として無担保・無保証人での借り入れが可能です。融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。ただし、実際の適用可否は制度・審査・条件により異なるため、必ず借りられる・必ず下がると考えず、申請先で確認することが大切です。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、開業初期のキャッシュフローに余裕を持たせられます。
介護の開業融資でありがちな5つの失敗(落とし穴)
創業前の段階で知っておきたい、介護事業ならではのつまずきやすいポイントを整理します。
1. 介護報酬の入金の遅れを運転資金に織り込んでいない
介護事業で最も見落とされやすいのが、売上の入金サイクルです。介護報酬は、サービス提供の翌月に国民健康保険団体連合会へ請求し、実際に入金されるのはさらにその翌月というように、サービス提供からおおむね2か月ほど遅れて入金されます。一方で、スタッフの給与や家賃は毎月先に出ていきます。つまり開業から数か月は、売上が十分に立っていても手元の現金が不足しやすいのです。この入金の遅れを運転資金に織り込まずに計画を立てると、開業直後に資金がショートしかねません。運転資金は、当面の人件費・家賃を数か月分まかなえる水準を厚めに見ておくことが失敗を防ぐコツです。
2. 自己資金を「要件」と誤解する、または軽視する
創業融資では自己資金の額が審査の重要な判断材料になりますが、制度上、自己資金の額や割合について決まった要件があるわけではありません。「総額の何分の1が必須」といった固定のルールはないため、そこを誤解しないことが大切です。とはいえ、自己資金が多いほど審査で有利になりやすいのも事実です。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておきましょう。また、開業前に自費で取得した資格や、購入した備品などは「みなし自己資金」として一定の範囲で評価されることがあるため、領収書は必ず保管しておくと安心です。
3. 指定申請と融資・開業のスケジュールがかみ合っていない
介護事業は、都道府県や市町村から事業者としての指定を受けなければ開業できません。この指定申請には準備期間がかかり、人員・設備・運営の基準を満たしている必要があります。融資の申請から実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安で、準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。指定申請と融資、物件契約、採用のスケジュールがかみ合っていないと、「融資は下りたのに指定が間に合わず開業できない」といったズレが起きます。逆算して全体のスケジュールを組むことが重要です。
4. 業界未経験のカバーが弱い
異業種から介護事業に参入する場合、事業計画書の中で経験不足をどう補うかが審査のポイントになります。「同業の知人からときどき助言をもらう」「専門的な部分は外部に業務委託で任せる」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言いにくいのが実情です。より説得力を持たせるには、介護分野の事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。
5. 生活費を運転資金に含めてしまう
運転資金とは、事業を回していくために必要な資金のことです。従業員の給与は事業活動に必要な経費として運転資金の対象になりますが、創業者・経営者の個人的な生活費(家賃・食費など事業と直接関係のない支出)は運転資金の対象になりません。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提のため、生活費を運転資金として申請することは避けましょう。
失敗しないための準備のコツ
落とし穴を踏まえたうえで、創業前にやっておきたい準備を整理します。
- 資金繰り表で入金の遅れを可視化する:介護報酬が約2か月遅れで入金される前提で、月ごとの現金の動きを表にしておくと、必要な運転資金の水準が見えてきます。
- 事業計画書を作り込む:創業した実績がない分、計画の説得力が評価軸になります。対象エリアの需要、人員体制、収支の見通しを具体的に示すことが大切です。なお、敷金・礼金・仲介手数料・保証会社費用については記載をしません。
- 据置期間を上手に使う:開業直後は元金の返済を据え置き、利息のみの支払いにすることで、入金が安定するまでの資金繰りに余裕を持たせられます。
- スケジュールを逆算する:指定申請・融資・物件・採用の各準備を、開業予定日から逆算して並べておきましょう。
融資で導入する設備について、購入と借り入れ(リース)のどちらがよいか迷う場面もあります。リースには初期費用を抑えられる利点がある一方で、連帯保証人が必要になる、機器の所有権が持てない、契約期間中の中途解約が難しい、故障時の修理負担が借主側になる契約が多い、といったデメリットもあります。融資とリースのどちらが有利かは資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて金融機関や税理士に相談しながら判断することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 介護事業の開業には自己資金がいくら必要ですか?
A. 制度上、自己資金の額や割合に決まった要件はありません。ただし自己資金が多いほど審査では有利になりやすく、また介護事業は入金の遅れがあるため、運転資金を厚めに見込んでおく必要があります。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておきましょう。
Q. 介護業界が未経験でも創業融資は受けられますか?
A. 創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査される点は変わりません。未経験の場合は、事業計画書で経験不足をどう補うかが問われます。事業経験者を役員に迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えると説得力が高まります。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。原因を特定・改善せずに再申請しても結果は変わりにくいため、否決の理由を潰してから再挑戦することが大切です。
まとめ
介護事業の開業融資では、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金が有力な選択肢になります。失敗を避けるうえで特に重要なのは、介護報酬の入金が約2か月遅れる前提で運転資金を厚めに見込むこと、自己資金を要件と誤解せず着実に準備すること、そして指定申請・融資・採用のスケジュールを逆算して組むことです。業界未経験の場合は事業経験者を体制に加えるなどの工夫も有効です。制度や金利は変わりやすいため、申請前には最新の公式情報を確認し、判断に迷う場合は創業融資に詳しい専門家に相談しながら進めると安心です。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























