
デイサービス開業の売上予測はどう立てる?介護報酬と創業融資審査の押さえどころ
デイサービス開業の売上予測の立て方|介護報酬の仕組みと融資審査のポイント
デイサービス(通所介護)の開業を準備するとき、多くの方がつまずくのが「売上予測をどう立てればよいのか」という点です。飲食店や物販と違い、デイサービスの売上は介護保険からの介護報酬が中心になるため、一般的な売上計算とは組み立て方が異なります。そして、この売上予測は創業融資の審査でとても重要な意味を持ちます。開業前は事業の実績がない分、事業計画書に書いた売上予測の妥当性が、そのまま計画全体の説得力として見られるからです。本記事では、デイサービス開業を控えた方に向けて、介護報酬の仕組みを踏まえた売上予測の立て方と、融資審査で信頼されるための考え方を整理します。なお、介護報酬の単価や融資の条件は改定・変更されやすいため、本記事は執筆時点(2026年7月)の情報として参考にし、具体的な数字は必ず最新の公式情報でご確認ください。
なぜデイサービスの売上予測が創業融資のカギになるのか
デイサービスの開業資金は、内装・送迎車両・機能訓練機器・当面の運転資金などで、まとまった金額になりがちです。その調達手段として代表的なのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」をはじめとする創業融資です。創業融資は、原則として無担保・無保証人でも利用でき、創業した実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査される点が特徴です。
裏を返すと、実績で判断できない分、事業計画書の作り込み、とりわけ売上予測の根拠が審査結果を大きく左右します。「なんとなくこれくらい」という数字ではなく、介護報酬の仕組みに沿って積み上げた売上予測を示せるかどうかが、計画の信頼性を分けるポイントになります。
デイサービスの売上は「定員×稼働率×単価×営業日数」で組み立てる
デイサービスの売上予測は、次の4つの要素に分解して考えると整理しやすくなります。それぞれの前提を明確にしておくことで、後から根拠を説明しやすくなります。
- 定員:事業所として受け入れられる1日あたりの利用者数の上限です。規模(地域密着型か通常規模型かなど)によって変わります。
- 稼働率:定員に対して実際に何割が利用するかの割合です。開業初期は低く、徐々に上がっていくのが一般的です。
- 単価(介護報酬):利用者1人あたりの1回の介護報酬です。要介護度・サービス提供時間・地域区分・各種加算によって変わります。
- 営業日数:月あたりの営業日数です。土日祝の営業有無で変わります。
おおまかには「定員 × 稼働率 × 単価 × 営業日数」で月間の売上イメージを組み立て、そこに入浴・機能訓練・個別機能訓練などの加算を加味していきます。介護報酬の単価や加算の算定要件は介護報酬改定で見直されるため、具体的な単位数・金額は最新の公式情報(厚生労働省や国民健康保険団体連合会などの資料)で確認しながら数字を置くことが前提になります。
稼働率は開業初期を低めに見積もる
売上予測でとくに差が出るのが稼働率の設定です。開業初日から定員が埋まることはまれで、ケアマネジャーへの営業や利用者との契約が積み上がって、数か月から半年ほどかけて稼働率が上がっていくのが実態に近い姿です。初月から高い稼働率を前提にすると、計画が楽観的すぎると見られやすくなります。開業当初は低めの稼働率から始まり、徐々に上昇していく前提で、月別に売上を置いていくと現実的な予測になります。
介護報酬は入金が約2か月遅れる|運転資金とセットで考える
デイサービスの売上予測でもう一つ見落としやすいのが、売上が立ったタイミングと、実際にお金が入ってくるタイミングのズレです。介護報酬の多くは、サービスを提供した月の翌月に国民健康保険団体連合会へ請求し、さらにその翌月ごろに入金される流れになります。つまり、サービスを提供してから実際の入金までに、おおむね2か月程度の期間が空くことになります。
この間も、人件費・家賃・送迎車両の経費・光熱費などの支払いは発生し続けます。売上予測の数字が良くても、入金が後ろ倒しになる分、開業初期は手元の現金が不足しやすいのです。そのため、売上予測とあわせて、入金までのタイムラグを埋める運転資金をどれだけ確保しておくかを計画に織り込むことが欠かせません。創業融資には元金返済の据置期間(一定期間は利息のみの支払いにできる仕組み)を設定できる制度もあり、開業初期のキャッシュフローの負担をやわらげる選択肢として検討する価値があります。据置期間の長さや条件は制度・審査により異なるため、申請先で確認しましょう。
融資審査で売上予測が信頼されるための3つのポイント
同じ売上予測でも、根拠の示し方次第で審査での受け止められ方は変わります。次の3点を意識すると、計画の説得力が高まります。
1. 稼働率の根拠を地域の実態から示す
予定している商圏の高齢者人口や要介護認定者数、近隣の競合事業所の状況などを踏まえて、「なぜこの稼働率が見込めるのか」を説明できるようにしておきます。数字の裏づけがあると、稼働率の前提に納得感が生まれます。
2. 保守的・標準・強気の複数パターンを用意する
売上予測を1本だけで出すのではなく、稼働率が想定より伸びなかった場合の保守的なケースも示しておくと、リスクを踏まえて計画している姿勢が伝わります。とくに、保守的なケースでも返済が続けられる資金計画になっているかは、審査で重視されやすいポイントです。
3. 費用・資金繰りと整合させる
売上予測は単独で完結させず、人件費や固定費などの支出、そして前述の入金タイムラグを反映した資金繰りとセットで組み立てます。売上・費用・資金繰りの3つが矛盾なくつながっていることが、計画全体の信頼性につながります。
まとめ:介護報酬の仕組みに沿った売上予測が融資の説得力を高める
デイサービスの売上予測は、「定員×稼働率×単価×営業日数」に加算を加味して組み立て、開業初期は稼働率を低めに見積もるのが現実的です。さらに、介護報酬は入金までに約2か月のタイムラグがあるため、売上予測と運転資金・資金繰りをセットで考えることが欠かせません。創業融資の審査では、事業計画書に書かれた売上予測の根拠が計画全体の説得力を左右します。介護報酬の単価や融資の条件は変わりやすいため、具体的な数字は最新の公式情報で確認したうえで、事業計画書の作成や資金計画については創業融資に詳しい専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























