建設業の独立は担保・保証人がなくても創業融資を受けられるのか【Q&A】
「重機も自宅も担保に入れられるような資産はない」「保証人になってくれる家族もいない」——一人親方・職人として独立を考える方から、こうした不安の声をよく聞きます。結論から言うと、日本政策金融公庫の創業融資は原則として無担保・無保証人で利用できますが、「原則」という言葉の中身を正しく理解していないと、審査本番で戸惑うことになります。この記事では、Q&A形式で担保・保証人にまつわる疑問を整理します。数字・制度内容は執筆時点(2026年7月)の情報にもとづいています。申請時は必ず最新の公式情報をご確認ください。
Q1. 建設業の独立でも担保・保証人なしで創業融資は受けられますか?
A. 受けられます。日本政策金融公庫の主力制度である新規開業・スタートアップ支援資金では、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方(いわゆる創業期の方)を対象に、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。一人親方として独立する場合も、この「創業期の方」に該当するのが一般的です。
ただし、これは「案内文上の一般説明」であり、実際に担保・保証人の提供を求められるかどうかは、審査状況によって金融機関側の判断が入る余地があります。「無担保・無保証人が原則」であって「担保・保証人を提供することが一切できない」わけではない、という理解が正確です。
Q2. 「原則」無担保・無保証人とは、具体的にどういう意味ですか?
A. 「原則」という言葉には2つの意味が含まれています。1つは「担保・保証人を用意できなくても申し込む資格を失わない」という意味、もう1つは「希望すれば有担保での申し込みも選べる」という意味です。実は、無担保よりも有担保のほうが基準利率が低く設定されています(2026年6月1日現在の公庫の利率マトリクスでは、無担保・創業期で年3.45〜5.15%であるのに対し、有担保では年2.50〜4.80%が目安です)。
手元に担保に入れられる不動産がある場合、無理に無担保にこだわらず、あえて担保を提供して金利を抑えるという選択肢も検討する価値があります。「担保・保証人がない=不利」という単純な話ではなく、「ある場合にどう使うか」も含めて考えるのが実務的です。
Q3. 一人親方が法人化(法人成り)する場合も、この創業融資は使えますか?
A. ここは誤解が多いポイントです。すでに個人事業主として営んでいる建設業をそのまま法人化する「法人成り」の場合、創業融資の対象にはなりません。すでに事業実績があるとみなされ、通常の事業性融資の扱いになります。
一方で、個人事業主として営んでいる事業とは別に、新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため、創業融資を使うことができます。「一人親方から法人化する=すべて創業融資の対象」と考えず、法人成りなのか、別事業の新規法人設立なのかを区別して確認することが大切です。
Q4. 担保・保証人がなくても、審査で不利にならないための準備はありますか?
A. 担保・保証人の有無以上に重視されるのは、事業計画の説得力と自己資金の準備状況です。建設業の一人親方の場合、特に次の点が確認材料になりやすい傾向があります。
- 元請けとの契約書・見積書・発注書:独立後の受注の見込みを裏づける資料として重要です
- 建設業許可の状況:許可の有無・種類は事業規模の判断材料になります
- 自己資金の準備状況:制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていませんが、多いほど審査で有利になりやすい傾向があります。面談時点で口座に確認できる形にしておきましょう
- 創業した実績の有無を補う材料:創業した実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査される点は変わりませんが、職人としての経験年数や保有資格は説得力の材料になります
担保・保証人がないことを理由に及び腰になるより、これらの材料をどれだけ具体的に揃えられるかに力を注ぐ方が、結果につながりやすいといえます。
Q5. 審査に落ちた場合、担保や保証人を用意すれば次は通りやすくなりますか?
A. 担保・保証人の有無だけが否決の理由とは限らないため、「担保を用意すれば必ず通る」とは言い切れません。日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報機関側の記録として残ることはありません。一方で、公庫内部には審査に落ちた記録が残るため、同じ申請者が次回審査を受ける際は、過去に否決された経緯を踏まえて慎重に扱われる可能性があります。
再申請を検討する場合は、担保・保証人の見直しだけでなく、否決の原因(自己資金不足、事業計画の説得力不足、受注見込みの裏づけ不足など)を具体的に特定し、そこを改善したうえで臨むことが必要です。
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建設業の創業融資の基本条件(担保・保証人以外)
| 項目 |
内容 |
| 制度名 |
新規開業・スタートアップ支援資金(日本政策金融公庫) |
| 融資限度額 |
7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
| 基準利率 |
無担保・創業期(2期未了)で年3.45〜5.15%(2026年6月1日現在) |
| 据置期間 |
元金返済の据置5年以内 |
| 申請〜実行の目安 |
書類提出後おおむね3週間〜1か月。準備を含め合計約2か月を見込む |
建設業は、材料費・外注費を先に支払い、工事代金の入金が完成後にずれ込む「立替期間」が構造的に発生する業種です。据置期間を活用して開業初期の元金返済負担を抑えられる点は、資金繰りの観点で覚えておく価値があります。
まとめ
建設業の独立でも、日本政策金融公庫の創業融資は原則として無担保・無保証人で申し込めます。ただし「原則」の中身は、担保・保証人を用意できない人を排除しないという意味であると同時に、有担保を選べば金利面で有利になりうるという意味も含んでいます。一人親方が法人化する場合は「法人成り」か「別事業の新規法人設立」かで創業融資の対象可否が変わる点にも注意が必要です。担保・保証人の有無にとらわれすぎず、元請けとの契約書・自己資金・事業計画書といった、審査で重視される材料を整えることが独立準備の近道です。制度の詳細や自社のケースに不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。
この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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