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コラム

学習塾の創業融資、生徒数を「なんとなく」で出すと落ちる|根拠ある売上計画の作り方

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学習塾の事業計画書、生徒数と単価はこう決める|融資審査に通る売上計画の作り方

学習塾の開業で日本政策金融公庫の創業融資を申し込むとき、多くの方がつまずくのが事業計画書の「売上計画」です。とくに生徒数と単価(月謝)をどんな数字に置けばよいのか、根拠のある形で示せずに悩む方は少なくありません。ネット上には「売上=生徒数×単価で計算する」と書かれた記事は多いものの、その生徒数をどうやって説得力のある数字にするかまで踏み込んだ解説はあまり見当たりません。

この記事では、これから学習塾・個別指導塾の開業を検討している個人事業主の方に向けて、事業計画書の売上計画を「根拠のある生徒数と単価」で組み立てる手順を整理します。あわせて、審査で見られやすいポイントや、融資制度の基本もまとめました。融資制度の数字は変わりやすいため、本文の数字は執筆時点のものとしてご確認いただき、申請前には日本政策金融公庫の公式情報で最新の内容を確認してください。

なぜ学習塾の事業計画書は「生徒数と単価」で決まるのか

創業融資の審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。開業前で営業実績がない分、計画そのものの説得力が評価の中心になります。学習塾の売上はほぼ「生徒数×単価」で決まるシンプルな構造のため、この2つの数字にどれだけ現実的な根拠を持たせられるかが、事業計画書の質を大きく左右します。

逆に言えば、生徒数や単価を「なんとなく多め」に置いた計画は、審査担当者から見ると最も崩れやすい部分です。数字の大きさよりも、その数字にたどり着いた根拠が示せているかが問われます。

売上計画の分解式を押さえる

まず、学習塾の月間売上は次のように分解できます。

月間売上 = 生徒数 × 1人あたりの平均単価

ここでの「平均単価」は、月謝だけではありません。学習塾の場合、実際の1人あたり売上には次のような要素が含まれます。

  • 毎月の月謝(コマ数・学年により変動)
  • 入会金・教材費
  • システム利用料・管理費などの固定費
  • 夏期・冬期・春期講習などの季節収入

季節講習は売上の山をつくる一方で、月々の月謝とは別に発生します。そのため、月謝だけで単価を置くと年間売上を過小に見積もってしまい、逆に季節講習を平常月に上乗せしすぎると過大計画になります。実務では、季節収入を含めた年間売上を12か月でならした「年間平均単価」で考えると、計画にブレが出にくくなります。

生徒数を「根拠のある数字」で積み上げる方法

ここが競合記事との差が出やすい部分です。生徒数は、いきなり「100人」と置くのではなく、上限と立ち上がりの2方向から積み上げると説得力が増します。

①商圏から集客の上限を見積もる

まず、教室を構えるエリアの商圏人口から、通える可能性のある生徒の母数を出します。目安の考え方は次のとおりです。

  • 商圏内の対象学年(小中高など、自塾がターゲットにする学年)の児童・生徒数を、自治体の人口統計などから把握する
  • そのうち通塾している割合(通塾率)をかけて、塾に通う子どもの数を見積もる
  • さらに、競合塾の数を踏まえた自塾のシェアをかけて、現実的に取り込める生徒数の上限を出す

この積み上げを示すと、「なぜその生徒数が妥当なのか」を市場規模の裏付けとともに説明できます。

②席数と稼働率から物理的な上限を出す

個別指導塾では、講師数・座席数・開講コマ数によって、受け入れられる生徒数に物理的な上限があります。ブース数×1日の稼働コマ数×稼働率で、教室として無理なく回せる生徒数を計算しておくと、商圏から出した数字が現実の運営能力に収まっているかを確認できます。商圏の上限と運営上の上限、低いほうが実際の天井になります。

③開業からの立ち上がりカーブを描く

開業初月から満席になる学習塾はほとんどありません。事業計画書では、初月の生徒数を控えめに置き、そこから毎月何人ずつ増えていくかという立ち上がりカーブを月次で示すことが重要です。学習塾は入塾のタイミングが新学期や長期休み前に集中しやすいため、季節性も反映させると、より現実に近い計画になります。最初から満席を前提にした計画は、審査で「楽観的すぎる」と見られやすい代表例です。

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単価(月謝)の決め方

単価は、周辺の競合塾の料金水準を調べたうえで設定します。相場から大きく外れた高単価は「その価格で本当に生徒が集まるのか」という疑問につながり、安すぎる単価は損益が成り立たない計画に見えます。競合比較の結果を添えて「この地域のこの学年帯では、月謝はおおむねこの水準」という根拠を示すと、単価の妥当性が伝わります。

そのうえで、前述のとおり入会金・教材費・季節講習まで含めた年間の平均単価で売上を組み立てると、月謝だけの計算よりも実態に近い売上計画になります。

損益分岐となる生徒数を逆算する

売上計画とあわせて示したいのが、「何人集まれば黒字になるか」という損益分岐点です。考え方はシンプルで、次のように逆算します。

損益分岐の生徒数 = 毎月の固定費 ÷ 生徒1人あたりの月次利益(平均単価から変動費を引いた額)

家賃・人件費・システム料などの固定費を、生徒1人あたりが生む利益で割ると、黒字化に必要な生徒数が見えてきます。この数字を示すと、審査担当者に対して「立ち上がり期にどれだけの生徒を集めれば経営が回るのか」を具体的に説明でき、無理のない計画であることが伝わります。開業からしばらくは生徒が集まりきらない期間が続くため、その間の運転資金も計画に含めておくと安心です。

学習塾の創業融資の基本

売上計画を組むうえで、前提となる融資制度も押さえておきましょう。個人事業主の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、学習塾の開業に必要な内装・机・システム・当面の運転資金をカバーできる設計です。

2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%です。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、生徒数が立ち上がるまでの負担を軽くできます。なお、創業融資について「自己資金は借入希望額の1/10以上が必須」という情報を見かけることがありますが、これは廃止された旧制度の基準です。現行制度では自己資金の額や割合に固定の要件はありません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料であり、多いほど有利になりやすい点は変わりません。

よくある質問(FAQ)

Q. 学習塾の講師経験しかありませんが、事業計画書で不利になりますか。
講師や指導の経験は、学習塾を運営するうえでの強みとして評価されやすい要素です。指導歴や合格実績などを具体的に書き、あわせて生徒募集や数字の計画を根拠づけて示せれば、経営未経験の部分を計画で補うことができます。

Q. 生徒数の見込みはどのくらい保守的に置くべきですか。
明確な決まりはありませんが、開業初月から満席を前提にした計画は楽観的と見られやすい傾向があります。商圏や席数から出した上限の範囲内で、立ち上がりに時間がかかる前提の月次計画にしておくと、計画の信頼性が高まります。

Q. フランチャイズに加盟する場合、売上計画の作り方は変わりますか。
本部が提示するモデル収支は参考になりますが、そのまま転記するのではなく、自分が開業するエリアの商圏・競合を踏まえて調整することが大切です。数字の根拠を自分の言葉で説明できる状態にしておきましょう。

まとめ

学習塾の事業計画書で最も重要なのは、生徒数と単価に現実的な根拠を持たせることです。生徒数は商圏の規模と席数の両面から上限を出し、開業からの立ち上がりカーブで月次に落とし込む。単価は競合比較と季節講習を含めた年間平均で組み立てる。そのうえで損益分岐となる生徒数を逆算して示せば、審査担当者に無理のない計画として伝わります。数字は執筆時点のものですので、制度の詳細は日本政策金融公庫の公式情報で最新の内容を確認しつつ、計画づくりに迷うときは早めに専門家へ相談してみてください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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