
士業・コンサルの創業融資を通す事業計画書の書き方|審査で見られる売上根拠と5ステップ
行政書士・税理士・社会保険労務士・司法書士といった士業、あるいは経営コンサルタントとして独立するとき、多くの方が「設備もいらないし、大きな資金は必要ない」と考えます。ところが、いざ日本政策金融公庫に創業融資を申し込むと、事業計画書の説得力が足りずに苦戦するケースが少なくありません。士業・コンサルは、店舗や機械といった目に見える投資が少ない分、「この人は事業として売上を立てられるのか」を計画書で示す必要があるからです。
この記事では、士業・コンサルの独立開業を控えた方に向けて、創業融資を通すための事業計画書の書き方を、審査で見られるポイントと5つのステップに整理して解説します。なお、融資制度や金利は変わりやすいため、本記事は執筆時点(2026年7月)の情報にもとづく点をご了承ください。
士業・コンサルの創業融資は「事業計画書」で決まりやすい
創業融資の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。無担保・無保証人での借入が原則として可能で、審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。つまり、過去の事業実績が乏しくても、計画の中身次第で評価される仕組みです。
士業・コンサルの場合、飲食店や製造業のように「設備を買うための資金」という分かりやすい借入理由がありません。借りたお金の多くは、顧客が付いて売上が安定するまでの運転資金や、広告宣伝費、外注費などに充てられます。だからこそ、「専門知識があること」だけでなく「事業として受注し、売上を立てられること」を、事業計画書で具体的に示せるかどうかが審査の分かれ目になります。
士業・コンサルの事業計画書でつまずきやすい3つの難所
競合となる一般的な創業融資の解説記事では触れられにくい、士業・コンサル特有のつまずきポイントが3つあります。
- 設備投資がなく、借入の根拠を示しにくい:資金使途が運転資金中心になるため、「なぜその金額が必要か」を売上・支出の見通しから積み上げて説明する必要があります。
- 売上予測の根拠が主観的になりやすい:「人脈があるので受注できる」だけでは弱く、想定顧客単価×件数といった数字の裏付けが求められます。
- 専門性はあっても経営・営業の経験が乏しい:資格や実務経験は十分でも、集客・受注の仕組みをどう作るかまで示せていないと、事業としての継続性に疑問を持たれやすくなります。
通る事業計画書の書き方【5ステップ】
上記の難所を踏まえ、士業・コンサルが創業融資を通しやすくするための事業計画書づくりを、5つのステップで整理します。
ステップ1:提供サービスとターゲットを具体化する
「何でもやります」ではなく、誰の・どんな課題を・いくらで解決するのかを絞り込みます。たとえば「建設業の許認可申請に特化した行政書士」「創業期の中小企業向けの資金繰りコンサル」のように、専門領域とターゲットを明確にすると、後の売上予測にも一貫性が生まれます。
ステップ2:受注チャネル(集客の導線)を書き出す
士業・コンサルは受注経路が事業の生命線です。紹介、Web、セミナー、既存の人脈、士業同士の連携など、どの経路から何件の相談・受注を見込むのかを具体的に書きます。ここが空欄だと、売上予測の説得力が一気に下がります。
ステップ3:売上予測を「単価×件数」で積み上げる
売上は、顧問契約やスポット業務などのサービスごとに、想定単価と件数を掛け合わせて積み上げます。「開業3か月目までは月◯件、半年後には月◯件」のように、立ち上がりの時間軸も織り込むと現実的な計画になります。強気すぎる予測は逆効果で、根拠のある堅実な数字のほうが評価されやすいものです。
ステップ4:資金使途と必要額を明確にする
借りた資金を何に使うのかを、運転資金・広告宣伝費・外注費などの内訳で示します。士業・コンサルは設備が少ない分、運転資金の必要性を「売上が安定するまでの期間、事業を回すために必要」という形で、支出の見通しから丁寧に説明することが大切です。
ステップ5:経営・営業面の不安をカバーする体制を示す
専門性はあっても経営や営業が未経験という場合は、その不安をどう補うかを計画に盛り込みます。法人であれば事業経験者を役員に迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが説得力につながります。一方で、「同業の先輩から時々アドバイスをもらう」「経理を外注する」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く見られやすい点に注意しましょう。
自己資金の考え方——「10分の1が必須」は誤解
「自己資金は融資額の10分の1が必ず必要」と説明されることがありますが、これは旧制度時代の名残で、現行制度では自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし、自己資金の額は審査の重要な判断材料であり、多いほど有利になりやすいのは事実です。
また、創業前に自費で取得した資格や、事業の準備に使った備品・テストマーケティングの費用などは、一定範囲で「みなし自己資金」として評価されることがあります。士業・コンサルは開業前の資格取得や研修に費用をかけているケースも多いため、領収書を必ず保管しておきましょう。
金利・限度額・スケジュールの基礎
新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。2026年6月1日現在の基準利率は、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%となっています。創業期に利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。実際の適用可否は制度・審査・条件により異なるため、詳細は申請先で確認してください。
元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなるため、開業初期の負担を抑えられます。申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。書類の準備を含めると、合計で約2か月を見ておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q. 自宅で開業する予定でも創業融資は使えますか?
自宅開業でも、事業として創業融資を利用することは可能です。設備投資が少ない分、運転資金の必要性を事業計画書でどう説明するかがポイントになります。
Q. 否決された直後にすぐ再申請してもよいですか?
原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
Q. 自己資金は面談時点で全額入金しておくべきですか
はい、原則として面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
まとめ
士業・コンサルの創業融資は、設備投資が少ないぶん、事業計画書で「事業として売上を立てられること」をどれだけ具体的に示せるかが鍵になります。提供サービスとターゲットの明確化、受注チャネルの書き出し、単価×件数による売上予測、資金使途の明確化、経営・営業面のカバー体制。この5ステップを丁寧に押さえることで、計画書の説得力は大きく変わります。自己資金の要件や金利などの数字は時点によって変わるため、申請時には必ず最新の公式情報を確認し、判断に迷う場合は創業融資に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























