
不動産管理業と売買・仲介業、創業融資の審査で見られるポイントの違い
「不動産で独立したい」と考えたとき、実は「管理業」と「売買・仲介業」では、開業までの準備も、創業融資の審査で見られるポイントもかなり違います。同じ不動産業という括りで情報を集めていると、免許の要否や自己資金の考え方が混ざってしまい、何から手を付ければよいか分かりにくくなりがちです。この記事では、管理業と売買・仲介業の違いを軸に、創業融資の審査の見られ方・初期コスト・免許取得と融資申請の進め方を整理します。
なお、本記事は執筆時点(2026年7月)の公開情報にもとづく一般的な解説です。金利・要件・手続きの詳細は変わることがあるため、実際の申請にあたっては日本政策金融公庫等の公式情報を必ずご確認ください。
「不動産業」でも管理業と売買・仲介業ではスタート地点が違う
不動産業とひとくくりにされがちですが、事業の中身は大きく分かれます。オーナーから物件の管理を受託する「管理業」(自主管理・サブリースなど)と、物件の売買や賃貸の仲介を行う「売買・仲介業」とでは、必要な免許も収益モデルも異なります。まずこの違いを整理してから、融資の準備に入るのが遠回りに見えて近道です。
宅地建物取引業免許の要否が最初の分かれ目
売買・仲介業を行うには、宅地建物取引業法にもとづく「宅地建物取引業免許(宅建業免許)」が必要です。免許を取得するには、事務所ごとに専任の宅地建物取引士を置くことなどの要件を満たす必要があります。
一方、オーナーから物件の管理だけを受託する管理業単体であれば、宅建業免許は原則として不要です。ただし、一定戸数以上の賃貸住宅を管理する場合は、賃貸住宅管理業法にもとづく登録が必要になる制度があるため、管理受託の規模によっては別途の登録要件を確認しておく必要があります。この免許・登録の要否の違いが、創業融資の事業計画書で説明すべき内容の出発点になります。
創業融資の審査で見られるポイントの違い
日本政策金融公庫の創業融資は、事業の実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査される点は共通ですが、管理業と売買・仲介業とでは、審査の中で説明の重みが置かれやすい論点が変わってきます。
- 売買・仲介業:収益は仲介手数料や売買差益が中心になるため、事業計画書では成約件数・成約単価の見込みの根拠(地域の取引相場、自身の営業経験・人脈など)が問われやすくなります。売上の波が大きくなりやすい業態のため、成約が少ない時期の運転資金の考え方も併せて説明できると計画の説得力が増します
- 管理業:収益は管理受託料が中心で、売買・仲介に比べると月々の収益が安定しやすい一方、管理戸数をどう積み上げていくかという営業計画(オーナーとの関係構築、管理会社としての強みなど)が問われやすくなります
制度上、自己資金の額や割合について固定の要件があるわけではありませんが、自己資金は審査の重要な判断材料になります。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておくのが基本です。
初期コストの違い:宅建業の供託金・保証協会加入料
売買・仲介業で宅建業免許を取得する場合、営業保証金を法務局に供託するか、宅地建物取引業保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付するかのいずれかの対応が必要になります。保証協会に加入する場合、供託金をそのまま用意するより初期費用を抑えられるケースが一般的ですが、加入までの手続き期間や必要書類は協会・地域によって異なるため、早めに窓口へ確認しておくと開業スケジュールが立てやすくなります。
管理業単体で開業する場合は、この供託・保証協会加入の費用は基本的に発生しません。そのぶん、事務所の内外装費や管理システムの導入費、オーナー開拓のための営業費用など、管理業ならではの初期コストを事業計画に織り込んでおく必要があります。
免許取得と融資申請、どちらを先に進めるべきか
売買・仲介業で開業する場合、「宅建業免許の取得を待ってから創業融資を申請する」「並行して進める」のどちらが良いか迷う方が多いところです。宅建業免許の審査には一定の期間がかかるため、事業計画書の作成や自己資金の準備といった創業融資側の準備は、免許申請と並行して進めておくと開業までの期間を短縮しやすくなります。ただし、融資の実行そのものは、免許取得や事務所の実態が整っていることが前提になるケースが一般的なので、最終的な融資実行のタイミングは免許取得後になると想定して資金繰り計画を立てておくと安心です。
管理業単体で開業する場合は宅建業免許の取得プロセスが挟まらない分、事業計画書の作成が整い次第、融資申請に進みやすいという違いがあります。
まとめ
不動産業での独立は、「管理業」か「売買・仲介業」かで、必要な免許・初期コスト・創業融資の審査で説明すべき論点が変わってきます。売買・仲介業は宅建業免許と供託金・保証協会加入費が必要になる一方、管理業はその負担がないぶん、管理戸数の積み上げ計画の説得力が問われます。どちらの業態で開業する場合も、事業計画書と自己資金の準備は融資審査の基本であることに変わりはありません。自分が目指す不動産業の形に合わせて、免許取得と融資申請のスケジュールを早めに整理しておきましょう。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























