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コラム

介護施設を複数展開するための融資戦略を教えてください

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介護施設を2施設目以降に拡大するための融資戦略|公庫・民間の使い分けと審査の見せ方

介護事業を数年経営し、1施設目が軌道に乗ってきた。次は2施設目、3施設目へ——。そう考えたとき、最初の壁になるのが拡大期の資金調達です。創業時とは違い、すでに事業実績があるからこそ、融資の選択肢も審査で見られるポイントも大きく変わります。本記事は、複数展開を狙う介護事業者に向けて、拡大期に使える融資の選択肢と使い分け、既存事業の実績の見せ方、多店舗化に特有の資金繰りの考え方を整理します。なお、融資制度や金利は変わりやすいため、本記事は執筆時点(2026年6月)の情報にもとづく内容であり、最新の条件は必ず申請先で確認してください。

拡大期の資金需要は「1施設目の創業融資」とどう違うのか

介護施設の複数展開でつまずきやすいのは、「1施設目で借りられたから2施設目も同じように借りられるはず」という思い込みです。創業時の融資は、事業計画書と自己資金を軸に「これから事業を始める人」として審査されました。一方、2施設目以降の拡大融資では、すでに動いている既存施設の実績そのものが評価対象になります。決算内容・稼働率・人員体制・既存借入の返済状況が、新規施設の計画と同じくらい重視されるのです。

また、拡大期は必要資金の規模も性質も変わります。介護施設の新規開設には、内装・設備・備品といった設備資金に加え、開設から介護報酬の入金が安定するまでの運転資金が必要です。介護報酬は国保連を経由するため、サービス提供月から実際の入金まで約2か月のタイムラグがあります。複数施設を抱えると、このタイムラグ分の立替が施設数だけ積み上がる点が、単独施設のときとの決定的な違いです。

拡大期に使える融資の選択肢と使い分け

2施設目以降では、創業時より選べる手段が広がります。代表的なのは次の3系統です。それぞれ性格が異なるため、組み合わせて考えるのが基本になります。

日本政策金融公庫

政府系金融機関である日本政策金融公庫は、創業期だけでなく事業拡大局面でも選択肢になります。主力制度の一つ「新規開業・スタートアップ支援資金」は、融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)と設定されており、原則として無担保・無保証人での借入が可能です。数字はあくまで執筆時点の目安として捉え、最新は公庫の公式情報を確認してください。

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民間金融機関のプロパー融資・制度融資

1施設目の取引実績がある場合、地域の銀行・信用金庫からのプロパー融資(金融機関が自らのリスクで貸す融資)や、自治体・信用保証協会が関わる制度融資も現実的な選択肢になります。プロパー融資は実績と信頼関係がものを言うため、1施設目の運営を通じて取引銀行と関係を築けているかが効いてきます。制度融資は信用保証協会の保証が付くことで金融機関が貸しやすくなる仕組みで、創業期から拡大期まで幅広く使われます。

実務上は、公庫と民間を同時並行で相談する「協調融資」的な進め方も選択肢です。1か所で全額を賄おうとせず、設備資金は長期で組める制度、運転資金は別枠で確保する、といった役割分担で必要額を満たす設計が、拡大期では効いてきます。

複数展開で審査に効く「実績」と「事業計画」の見せ方

拡大融資の審査で最大の武器になるのは、既存施設の実績です。逆に言えば、ここが弱いと「拡大より既存の立て直しが先では」と見られかねません。次の点を、数字とともに示せるよう準備しておきましょう。

  • 既存施設の稼働率・利用者数の推移(安定して埋まっていること)
  • 直近の決算における黒字基調と、既存借入の返済が滞りなく進んでいること
  • 採用・定着の体制(介護は人員配置基準があるため、人を確保できる運営力そのものが評価される)
  • 1施設目で得たノウハウを2施設目にどう移植するか(運営の再現性)

事業計画書では、新規施設単体の収支だけでなく、複数施設を合算した全社ベースの資金繰りを示すことが重要です。1施設目の利益で2施設目の立ち上げ期を支えられるのか、それとも全施設が同時に資金を必要とする時期が来ないか——審査担当者はこの全体像を見ています。エリア戦略も説得材料になります。既存施設の近隣に出すなら人員やノウハウの共有メリット、離れたエリアなら新たな需要を取りに行く根拠を、地域の高齢者人口や競合状況とあわせて言語化しておくと計画の説得力が増します。

多店舗化の資金繰りと据置期間の考え方

複数展開では、各施設の立ち上げ期が資金繰りの谷になります。ここで活用したいのが据置期間です。日本政策金融公庫の制度では、元金返済の据置を5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなります(執筆時点の制度内容。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間は設備資金20年以内・運転資金原則10年以内、据置はいずれも5年以内が一例)。新規施設が黒字化し、介護報酬の入金サイクルが安定するまでの初期負担を抑えられるため、複数施設を並行して立ち上げる局面と相性が良い仕組みです。

ただし据置はあくまで返済の先送りであり、据置明け後は元金返済が乗ってきます。複数施設の据置期間が重なると、数年後に各施設の元金返済が一斉に始まり、資金繰りが急に締まることがあります。借りる段階から、施設ごとの返済開始時期が過度に集中しないよう、全社のキャッシュフロー計画とあわせて設計しておくことが大切です。

複数展開でよくある失敗と注意点

拡大期に陥りやすいパターンを、あらかじめ押さえておきましょう。

  • 1施設目の好調さを過信して計画が楽観的になる:立地・人員・利用者層が変われば再現できるとは限りません。新規施設は新規施設として保守的に見積もるのが安全です。
  • 運転資金を軽視する:介護報酬の入金タイムラグを織り込まず設備資金中心で借りると、開設直後の人件費・家賃で資金が詰まります。立ち上げ期の運転資金を十分に確保しておきましょう。
  • 既存借入の状況を整理しないまま申し込む:既存施設の返済負担と新規の返済を合算した全社の返済能力で見られます。手元で全社ベースの返済計画を把握してから臨むことが欠かせません。

なお、施設の指定申請(介護保険の事業者指定)や、人員に関する労務手続き、法人としての登記などは、それぞれ専門の手続きが伴います。これらの具体的な進め方は介護事業に詳しい行政書士・社会保険労務士・司法書士など各専門家に相談し、本記事では資金調達の戦略部分に絞ってお伝えしています。融資金や事業に関わる税務上の取り扱いについても、判断は税理士に確認するのが安全です。

よくある質問(FAQ)

Q. 1施設目の融資を返済中でも、2施設目の融資は受けられますか

既存借入があること自体が直ちに不利になるわけではなく、既存施設の収益と返済の状況、全社での返済能力が見られます。既存施設が安定して黒字基調で、返済も滞りなく進んでいれば、むしろ実績としてプラスに働く場合があります。ただし可否は審査により決まるため、断定はできません。

Q. 拡大期も無担保・無保証人で借りられますか

日本政策金融公庫の制度には原則として無担保・無保証人で利用できるものがありますが、適用される条件や利率は制度・審査・担保の有無によって変わります(執筆時点の情報)。希望する金額・条件で借りられるかは事前の相談で確認するのが確実です。

Q. 公庫と銀行のどちらに相談すべきですか

どちらか一方に絞る必要はありません。拡大期は、設備資金と運転資金を分けて複数の金融機関で役割分担する設計が有効なケースが多いため、両方に相談したうえで全体の資金計画を組むのがおすすめです。

まとめ

介護施設の複数展開における融資戦略の核心は、「創業融資の延長」ではなく「既存事業の実績を武器にした拡大融資」として臨むことです。日本政策金融公庫と民間金融機関・制度融資を性格に応じて使い分け、既存施設の稼働率・決算・運営力を数字で示し、複数施設を合算した全社ベースの資金繰りと据置の設計まで描けると、審査の説得力が大きく変わります。融資制度や金利・条件は変わりやすいため、本記事の数字は執筆時点(2026年6月)の目安として捉え、実際の申請にあたっては最新の公式情報と専門家のサポートを活用してください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

中野裕哲紹介画像

この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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