
保育所の2施設目を開設するための追加融資|1施設目の実績が審査でどう見られるか
1施設目の運営が軌道に乗り、待機児童のニーズや自治体からの打診を受けて2施設目を考え始めた。そんなタイミングで最初に立ちはだかるのが、開設資金をどう調達するかという問題です。
ところが、インターネットで「保育所 開業 融資」と調べて出てくる情報の多くは、これから初めて事業を始める方に向けた創業融資の解説です。2施設目は前提が違います。すでに1施設を運営している事業者としての申請になるため、審査で見られるポイントも、使える制度も変わってきます。
この記事では、2026年7月時点の情報をもとに、保育所の2施設目開設で追加融資を申請するときの考え方と進め方を整理します。
2施設目の資金調達は、創業融資の延長ではありません
1施設目のときは、事業として創業した実績がない状態からのスタートでした。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。つまり計画の説得力が中心の評価でした。
2施設目では、そこに「1施設目の運営実績」という材料が加わります。これは有利にも不利にも働きます。定員充足率が安定していて、決算も黒字で推移していれば、2施設目の計画にも現実味があると受け止められやすくなります。逆に、1施設目の稼働が計画を下回っていたり、赤字が続いていたりすると、「まず既存施設を立て直すのが先ではないか」という論点が生まれます。
つまり2施設目の申請では、これから作る施設の計画書だけでなく、1施設目の数字そのものが審査資料になるということです。ここが創業融資との一番大きな違いです。
1施設目から2期を終えていないなら、創業期向けの条件が視野に入ります
見落とされやすいのが、制度上の「創業期」の定義です。日本政策金融公庫の国民生活事業では、創業期の方を「新たに事業を始める方」または「事業開始後、税務申告を2期終えていない方」と案内しています。
2施設目であっても、1施設目の事業開始から税務申告を2期終えていなければ、この創業期の区分に該当する可能性があります。該当すれば、原則として無担保・無保証人での利用が案内されているほか、利率の引下げも視野に入ります。引下げ幅は原則0.65パーセント、雇用の拡大を図る場合は0.9パーセントとされています。なお「雇用の拡大を図る場合」は対象者の区分ではなく、引下げ幅が大きくなる条件にあたります。
主力制度である「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。この制度を利用する場合の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、据置期間はいずれも5年以内とされています。据置期間中は利息のみの支払いになるため、2施設目の定員が埋まるまでの立ち上がり期間を吸収しやすくなります。
金利は2026年6月1日現在で、無担保・税務申告2期未了の場合の基準利率が年3.45〜5.15パーセント、無担保・2期以上完了の場合が年3.50〜5.20パーセントです。実際の適用可否や適用利率は利用する制度・審査・条件により異なりますので、詳細は申請先でご確認ください。
2施設目の追加融資で準備しておきたいもの
1施設目の数字を説明できる状態にする
直近の決算書に加えて、月次の定員充足率、職員配置の状況、人件費率の推移など、運営の実態が分かる資料を揃えておきます。数字が計画とずれている場合は、その理由と対策をこちらから説明できるようにしておくと、面談での印象が変わります。
自己資金
制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいのが実情です。1施設目の内部留保をどこまで2施設目に回せるかを整理し、面談時点で口座に確認できる形にしておきましょう。
資金使途と返済原資
2施設目は、物件取得や内装工事、備品の購入といった設備資金と、開設から定員が埋まるまでの運転資金の両方が必要になります。資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提です。どこまでを含められるか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。
申請から実行までのスケジュール感
書類提出後、融資実行までの目安はおおむね3週間から1か月です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度を見込んでおくと安全です。
2施設目の場合、物件の契約時期や自治体との協議のタイミングと融資のスケジュールが絡み合います。物件を押さえてから資金の目処を立てるのではなく、資金調達の見通しと物件探しを並行して進めるほうが、結果的に無理のない計画になりやすいでしょう。
整備費の補助を使う場合は「順番」に注意してください
認可保育所や小規模保育事業の開設では、自治体の整備費補助を利用できる場合があります。ただし補助金は原則として後払いで、交付決定の前に契約や発注をしてしまうと対象外になるのが一般的です。
そのため、補助金を当てにしていても、工事費や物件費の支払いは一度自社で立て替える必要があります。この立替期間をどう乗り切るかを、融資と合わせて設計しておくことが欠かせません。補助の要件や金額は自治体ごとに大きく異なりますので、募集要項を早い段階で確認しておきましょう。
よくある質問
1施設目の融資がまだ残っていても、2施設目の融資は申し込めますか。
既存の借入があること自体が申込みを妨げるわけではありません。ただし、既存借入の返済負担を含めた資金繰りが成り立つかどうかは当然に見られます。1施設目と2施設目を合算した収支計画を示せるように準備してください。
自治体の制度融資も使えますか。
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。融資を実行するのは民間金融機関で、信用保証協会は保証を付ける役割を担い、自治体は利子補給などで関与します。日本政策金融公庫の融資と組み合わせて検討されることもありますので、地域の窓口で条件を確認してみてください。
1施設目のときと同じ計画書の作り方でよいですか。
2施設目では、既存施設の実績を踏まえた数字の根拠が求められます。1施設目の実際の定員充足の推移や人件費の実績をもとに、2施設目の見込みを組み立てるほうが説得力が出ます。
まとめ
保育所の2施設目の追加融資では、1施設目の運営実績が審査の中心的な材料になります。数字が良ければ強い後押しになりますし、思わしくなければ、その理由と対策を自分の言葉で説明できるかどうかが問われます。
また、1施設目の事業開始から税務申告を2期終えていない段階であれば、創業期向けの条件が視野に入る可能性があります。時期によって選べる制度と条件が変わりますので、2施設目の構想が出てきた段階で、資金調達の設計を始めておくことをおすすめします。
本記事の数字・制度は2026年7月時点の情報にもとづくものです。制度や金利は変わりやすいため、申請の際には必ず日本政策金融公庫等の最新の公式情報をご確認ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























