
資金繰りが苦しいとき最初にやるべきこと|中小企業の経営者が打つべき手順を解説
「来月の支払いに資金が足りないかもしれない」——経営をしていれば、誰もが一度は資金繰りの不安に直面します。売上が立っていても、入金と支払いのタイミングがずれれば、手元の現金が尽きる「資金ショート」は起こり得ます。大切なのは、パニックにならず正しい順番で手を打つことです。
この記事では、起業直後の個人事業主や中小企業の経営者に向けて、資金繰りが苦しいときに真っ先にすべきことを、実務の手順に沿ってわかりやすく解説します。やってはいけない対応や、相談先の選び方も整理しますので、いざというときの行動指針にしてください。
まずやるべきは「現状の見える化」
資金繰りが苦しいと感じたら、感覚で動く前に、まず数字で現状を把握します。最優先は資金繰り表の作成です。難しく考える必要はなく、次の3つを書き出すだけでも、状況は一気に見えやすくなります。
- 今ある現預金:すぐ使える残高はいくらか
- これから入ってくるお金:売掛金・受注済みの入金予定(金額と入金日)
- これから出ていくお金:仕入・人件費・家賃・税金・社会保険料・借入返済など(金額と支払日)
これを直近2〜3か月分、できれば週単位で並べると、「いつ・いくら足りなくなるのか」がはっきりします。資金繰りで最も怖いのは、不足が起きること自体ではなく、気づくのが遅れることです。早く正確に把握できれば、打てる手の選択肢は格段に増えます。
支払いの優先順位を決める
資金が不足しそうなとき、すべての支払いを同じように扱ってはいけません。止めると事業が立ち行かなくなるもの、遅れると影響が特に大きいものから優先順位をつけます。一般的には、次のような順序で考えます。
- 人件費:従業員の生活と信頼に直結する
- 税金・社会保険料:滞納すると延滞税やペナルティ、差押えのリスクがある(払えない場合は放置せず後述の猶予制度を相談)
- 仕入・外注費:事業継続に不可欠な取引先への支払い
- 家賃・リース・借入返済:交渉や条件変更の余地があるもの
ポイントは、「払えないものを黙って遅らせない」こと。支払いが難しいとわかった時点で、早めに相手へ相談するほうが、信頼を保ちやすくなります。
入金を早く、出金を遅くする
手元資金を厚くする基本は、「お金が入るのを早め、出るのを遅らせる」ことです。具体的には次のような打ち手があります。
- 売掛金の回収を早める:未回収の請求がないか確認し、入金サイトの短縮を相談する
- 固定費の見直し:使っていないサブスク、過剰なリース、割高な契約を削減する
- 在庫の圧縮:過剰在庫を現金化する
- 支払いサイトの調整:取引先と支払い時期の相談をする(一方的な遅延ではなく事前交渉で)
こうした自助努力は、金融機関に追加の支援を相談する際にも「経営努力をしている会社」として評価されやすく、後の交渉を有利にします。
足りないときの資金調達・公的支援
自助努力をしてもなお資金が不足する見込みなら、外部からの資金調達を検討します。代表的な選択肢を整理します。
日本政策金融公庫の融資
政府系金融機関である日本政策金融公庫には、業績が一時的に悪化した中小企業を支えるセーフティネット貸付などの制度があります。民間金融機関と並行して相談できる、中小企業の資金繰りの重要な受け皿です。
信用保証協会の保証付き融資
取引のある銀行・信用金庫から借りる際、信用保証協会の保証を付けることで融資を受けやすくなる場合があります。経営状況や業種によっては、セーフティネット保証などの制度が使えることもあります。
返済条件の変更(リスケジュール)
すでに借入があり、返済負担が重い場合は、金融機関に返済条件の変更(リスケ)を相談する方法があります。一定期間、毎月の返済額を減らしてもらうことで、資金繰りを立て直す時間を確保できます。リスケは早めに、誠実な事業改善計画とセットで相談するのが基本です。
税金・社会保険料の猶予
税金や社会保険料の支払いが難しいときは、放置せず、税務署や年金事務所に猶予・分割の相談をしましょう。要件を満たせば、納付の猶予が認められることがあります。
なお、これらの制度は要件や内容が改定されることがあります。利用を検討する際は、最新の公式情報を確認するか、専門家に相談してください。
やってはいけない対応
資金繰りが苦しいときほど、判断を誤ると傷を深くします。次のような対応は避けましょう。
- 高金利の借入に手を出す:目先の現金欲しさに高コストの資金を借りると、かえって資金繰りが悪化します
- 税金・社会保険料を相談せず滞納し続ける:延滞税や差押えのリスクが高まります
- 金融機関への相談を後回しにする:手遅れになってからでは、打てる手が限られます
- 粉飾した資料で融資を申し込む:信頼を失い、その後の支援が受けられなくなります
よくある質問(FAQ)
Q. 赤字でも融資は受けられますか?
A. 赤字だから必ず断られるわけではありません。赤字の理由や今後の改善見通しを、根拠ある事業計画で説明できるかが重要です。ただし、状況によっては受けられないこともあります。
Q. まず誰に相談すればよいですか?
A. 取引のある金融機関、顧問の税理士、そして資金調達に詳しい専門家が相談先になります。早い段階で相談するほど、選べる手段が増えます。
Q. リスケをすると今後の融資に影響しますか?
A. 一定の影響はありますが、事業を続けて立て直すことが最優先です。誠実に計画を実行し、業績を回復させることで、再び正常な取引に戻していけます。
まとめ
資金繰りが苦しいときに真っ先にすべきことは、①資金繰り表で現状を「見える化」する、②支払いの優先順位を決める、③入金を早め・出金を遅らせる、という3つの初動です。そのうえで足りなければ、日本政策金融公庫の融資・保証付き融資・リスケ・税金の猶予など、公的な仕組みを早めに活用します。逆に、高金利の資金に飛びつく、相談を後回しにする、といった対応は状況を悪化させます。
資金繰りの問題は、早く動くほど選択肢が多く残ります。「どの制度が使えるか」「どう金融機関に相談すればよいか」で迷ったら、融資に精通した専門家へ早めに相談することが、立て直しへの近道です。ひとりで抱え込まず、使える手を一つずつ確実に打っていきましょう。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























