
ペット業種の創業融資は担保なし・保証人なしで受けられる?条件と金利のトレードオフ
トリミングサロンやペットホテル、ペットショップの開業を準備していると、資金調達のところで手が止まる方が多くいらっしゃいます。「持ち家がないので担保に出せるものがない」「親や配偶者に保証人を頼みたくない」——この2つがそろうと、そもそも借りられるのかどうかが分からなくなります。
結論から言えば、創業期の方は原則として無担保・無保証人で日本政策金融公庫の各種融資制度を利用できます。ただし、ネット上には古い制度の情報がかなり残っていて、そのまま読むと前提を間違えます。この記事では2026年8月時点の情報をもとに、担保・保証人まわりでよくある3つの誤解を整理し、そのうえで「担保を付けないこと」に伴うトレードオフまでお伝えします。
前提の確認:「新創業融資制度」はもうありません
まず、記事を読み進める前に押さえておきたい前提があります。無担保・無保証人の代表格として紹介されることの多い「新創業融資制度」は、2024年3月に廃止されています。現在は、無担保・無保証人の枠組みが各融資制度のなかに組み込まれる形になりました。
公庫の創業融資の主力は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月までの名称は「新規開業資金」で、2024年4月に改称・拡充されました。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
いまも「新創業融資制度なら無担保・無保証人で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)」と書いている記事を見かけますが、これは廃止された制度の数字です。金額の感覚がずれたまま資金計画を組むと、あとから組み直しになります。
担保・保証人まわりでよくある3つの誤解にお答えします
Q1. 担保に出せる資産がなくても申し込めますか
はい、創業期の方であれば原則として無担保で各種融資制度を利用できます。ここでいう「創業期の方」とは、次のいずれかに当てはまる方を指します。
- 新たに事業を始める方
- 事業開始後、税務申告を2期終えていない方
トリミングサロンをこれから開く方はもちろん、開業して1年目・2年目で税務申告が2期に達していない方も、この区分に入ります。賃貸の店舗物件で始める方や、自宅の一室を使って小規模に始める方でも、担保が用意できないこと自体が申込みの妨げになるわけではありません。
Q2. 保証人も立てられないのですが、無保証人でも大丈夫ですか
創業期の方は、原則として無担保・無保証人で利用できる設計になっています。以前は「新創業融資制度」という特例を使うことで無担保・無保証人を実現していましたが、前述のとおりこの制度は廃止され、いまは各制度に無担保・無保証人の枠組みが組み込まれています。つまり、無担保・無保証人にするために特別な制度を選ぶ、という考え方自体が現在は当てはまりません。
ただし、実際の取扱いは利用する制度や個別の審査・条件によって変わる可能性があります。「必ず無担保・無保証人になる」と決めつけず、申込先で条件をご確認ください。
Q3. 自己資金は創業資金の10分の1以上ないとダメ、と書いてありましたが本当ですか
これは古い情報です。現行の制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。「創業資金総額の10分の1以上」という記述は、廃止された新創業融資制度にあった要件で、いまの制度にそのまま当てはめられるものではありません。
とはいえ、自己資金の額が審査の重要な判断材料であることは変わりません。額や割合の決まりはないものの、自己資金が多いほど審査で有利になりやすい、と考えておくのが実情に近い理解です。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。
なお、創業前に自費で取得した資格や、先に購入したトリミングテーブル・シャンプー台などの設備、テストマーケティングの費用は、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておいてください。
担保を付けないと、条件はどう変わるのか
ここが競合記事であまり語られていない部分です。「担保なしで借りられる」ことは事実ですが、それは無条件に有利という意味ではありません。金利の面では、担保を付けたほうが低い水準に設定されています。
2026年6月1日現在の基準利率を並べると、次のようになります。
- 無担保・税務申告2期未了(創業期など):年3.45〜5.15%
- 有担保:年2.50〜4.80%
幅があるのは、返済期間や据置期間の有無、制度ごとの個別規定によって適用される利率が変わるためです。担保に出せる資産をお持ちの方が「無担保のほうが手軽だから」と選ぶと、金利面では不利になる可能性があります。逆に、担保がないことで選択肢が閉ざされるわけではない、という理解でよいでしょう。
金利の引下げに担保の有無は関係しません
もうひとつ、誤解されやすい点があります。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、この引下げは担保の有無によって対象が変わるものではありません。無担保でも有担保でも、創業期の方であれば引下げの対象として案内されています。
「無担保で借りる人だけの優遇」と説明している情報もありますが、そうではありません。なお「雇用の拡大を図る場合」は対象者の区分ではなく、引下げ幅が0.65%から0.9%に変わる条件にあたります。適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず、申込先でご確認ください。
返済期間と据置期間
新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内です。元金返済の据置期間はいずれも5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いになります。開業直後にトリミングの予約が埋まるまで時間がかかる業種では、この据置をどう使うかで初期の資金繰りがかなり変わります。
公庫のほかに検討できる選択肢
担保・保証人がないことを前提に資金調達を考えるなら、公庫以外の選択肢も知っておくと判断の幅が広がります。
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。よく「信用保証協会経由の融資」と説明されますが、正確には融資の実行主体(お金の出し手)は民間金融機関で、信用保証協会は保証を付ける役割を担います。自治体は利子補給や預託などで関与します。手続きに関わる先が多いぶん、公庫単独より時間がかかる傾向があります。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所・商工会等の経営指導を受けることが要件になる制度で、金利は一律2.60%の固定です(2026年6月1日現在)。ただし一定期間の事業実績が前提になるため、これから開業する段階では使えません。開業後の運転資金を考えるときの選択肢として覚えておくとよいでしょう。
ペット業種で気をつけたいこと
第一種動物取扱業の登録と融資申請の関係
トリミングサロン、ペットホテル、ペットショップを営むには、第一種動物取扱業の登録が必要です。登録には施設の基準や常勤の動物取扱責任者を置くことなどが求められ、自治体によって運用にも差があります。物件を決める段階で管轄の窓口に相談しておかないと、契約後に基準を満たせないことが分かって計画全体が止まります。融資の申込みと並行して、登録の見通しを立てておいてください。
機材をリースにするか、融資で購入するか
トリミングテーブル、シャンプー台、ドライヤー、ケージなど、開業時に必要な機材は少なくありません。初期費用を抑えるためにリースを検討される方もいますが、リースには次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
「保証人を立てたくないからリースにする」という発想で選ぶと、リース契約のほうで連帯保証人を求められて本末転倒になることがあります。融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
法人で開業する場合の決算書
法人を設立してペット事業を始める方に、ひとつ補足があります。創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。
申請から実行までのスケジュール
申請から融資実行までは、書類提出後おおよそ3週間〜1か月程度が目安です。創業計画書、自己資金のエビデンス、見積書などの書類を整える時間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見込んでおくと安全です。物件の契約や動物取扱業の登録と並行して動くことになりますので、逆算して早めに着手してください。
まとめ
ペット業種の開業で担保や保証人が用意できなくても、創業期の方は原則として無担保・無保証人で公庫の各種融資制度を利用できます。ただし、次の3点は情報の鮮度に注意してください。
- 「新創業融資制度」は2024年3月に廃止済み。現行の主力は新規開業・スタートアップ支援資金で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 自己資金の額・割合の要件は現行制度にはない。ただし審査の重要な判断材料であることに変わりはない
- 担保なしは手軽だが、基準利率は有担保のほうが低い。金利引下げの対象になるかどうかに担保の有無は関係しない
本記事の数字は2026年8月時点(基準利率は2026年6月1日現在)の情報です。制度や金利は見直されますので、申込前には必ず日本政策金融公庫の公式情報でご確認ください。判断に迷う点があれば、専門家に相談しながら計画を整えることをおすすめします。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























