
セレクトショップの内装費・什器費は創業融資で賄える?設備資金としての扱いと準備の進め方
「セレクトショップを開きたいけれど、内装工事とハンガーラック・什器で数百万円かかりそう。これは創業融資で借りられるのだろうか」——アパレル販売の経験を活かして独立を考えている方から、よくいただくご相談です。
開業資金の相場を紹介する記事は多いのですが、その費用が融資の中でどう扱われるかまで踏み込んだ情報は多くありません。この記事では、内装費・什器費が創業融資の資金使途としてどの区分に入るのか、区分が変わると何が変わるのかを整理し、申請前に準備しておくことまでをまとめます。数字は2026年7月時点の情報で、制度・金利は変わりやすいため、申請時は日本政策金融公庫などの公式情報をご確認ください。
内装費・什器費は「設備資金」として扱われます
創業融資を申し込むときは、借りたお金を何に使うかを「資金使途」として示します。資金使途は大きく設備資金と運転資金に分かれ、店舗の内装工事費や、什器・備品の購入費は設備資金にあたります。セレクトショップであれば、壁や床の工事、照明、ハンガーラック、什器、レジまわりの機器などが該当します。
一方、仕入れ代金や人件費、家賃などの毎月出ていく支出は運転資金です。開業時はこの2つが同時に必要になるため、どちらか一方だけで組み立てると資金が足りなくなります。「内装にいくら、開業後の仕入れと固定費にいくら」という形で、最初から分けて考えておくことが大切です。
資金使途を分けると、返済期間まで変わります
設備資金と運転資金を分けるのは、書類上の形式だけの話ではありません。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内と、資金使途によって異なります。据置期間はいずれも5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いです。
内装工事のように金額が大きく、長く使う投資は設備資金として長めの返済期間を取り、仕入れや固定費の運転資金は別に組む。この組み立てができているかどうかで、開業後の毎月の返済負担がかなり変わります。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、セレクトショップの規模であれば制度の枠が制約になることは多くありません。
使う制度と金利の目安(2026年7月時点)
ここで1つ注意点があります。開業ノウハウの記事には、いまでも「新創業融資制度」を現役の制度として紹介しているものが見られますが、この制度は2024年3月に廃止されています。現在の主力は日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です(2024年3月までの名称は「新規開業資金」で、2024年4月に改称・拡充されました)。古い制度名で情報を集めていると、条件の前提がずれてしまうので気をつけてください。
金利は、2026年6月1日現在の基準利率で、創業期(税務申告を2期終えていない場合)は年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。ただしこれは案内文上の一般的な説明で、実際の適用可否は利用する制度・審査・条件によって異なりますので、申請先でご確認ください。
担保・保証人については、創業期の方は原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。
内装費・什器費で申請するときに準備するもの
見積書は設備資金の根拠になります
設備資金を申請するときは、金額の根拠として工事業者や什器の販売業者からの見積書が必要になります。「内装一式300万円」のような大きな1行だけの見積書だと、何にいくらかかるのかが読み取れません。工事区分ごとに内訳が分かれた見積書をもらっておくと、計画書との整合も取りやすくなります。複数社から相見積りを取っておくと、金額の妥当性を自分の言葉で説明できるようになります。
自己資金は面談時点で確認できる形に
創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。「総額の何分の1が必須」といった固定の要件はないということです。とはいえ、自己資金の額は審査の重要な判断材料で、多いほど有利になりやすいのが実情です。原則として面談の時点で口座に確認できる形にしておきましょう。
開業前に自費で買ったものは記録を残す
創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入、テストマーケティング費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。セレクトショップの準備段階では、展示会やイベント出店での小規模なテスト販売、什器の先行購入などが該当し得ます。領収書は必ず保管していてください。
什器はリースにすべきか、融資で購入すべきか
什器やレジまわりの機器は、リースを提案されることもあります。初期費用を抑えられるのがリースの利点ですが、次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
セレクトショップは、扱うブランドや客層の変化に合わせて店内のレイアウトを組み替える場面が出てきます。中途解約が難しいという条件は、この業態では実務上効いてきます。融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
内装費・什器費の申請でつまずきやすい3点
1. 工事の追加費用で見積りと実際がずれる
居抜き物件で内装を活かすつもりが、電気容量や給排水の都合で追加工事が必要になる、といったことは珍しくありません。見積り段階で余裕を持たせず、ぎりぎりの金額で申請すると、不足分を自己資金や運転資金から捻出することになります。想定外が起きやすい工事だという前提で、金額を組んでおくほうが安全です。
2. 実店舗とネット販売を並行するときは内訳を分ける
セレクトショップは、実店舗と自社の通販を並行して立ち上げるケースが増えています。この場合、店舗の内装・什器と、撮影機材や通販サイト構築の費用が混ざりがちです。どちらも事業に必要な投資ですが、計画書の中で用途と金額を分けて示しておくと、事業の設計が見えやすくなります。
3. 工事の着工日から逆算してスケジュールを組む
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度を見ておくと安全です。内装工事の着工日や物件の契約時期が先に決まっていると、資金の入金が間に合わないという事態になりかねません。工事のスケジュールを引くときに、融資の時間軸も一緒に置いておいてください。
よくあるご質問
Q. 什器を中古で揃える場合も設備資金として申請できますか
中古であっても事業に必要な備品の購入であれば、設備資金として計画に含めること自体は可能です。ただし個人間の取引などで見積書や領収書が取れないと、金額の根拠を示しにくくなります。書類が残る形で購入することをおすすめします。
Q. アパレルの販売経験しかなく、経営は未経験です。不利になりますか
未経験の領域がある場合は、事業計画書の中でどう補うかが論点になります。「知り合いに相談できる」「専門業務は外部に任せる」といった説明は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力が出ます。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
まとめ
セレクトショップの内装費・什器費は、創業融資の設備資金として資金使途に組み込める費用です。ポイントは、運転資金と分けて設計することにあります。設備資金は返済期間20年以内、運転資金は原則10年以内と条件が異なり、この分け方が開業後の返済負担に直結します。
準備の面では、内訳の分かる見積書、面談時点で確認できる自己資金、開業前の支出の領収書という3つが軸になります。什器をリースで揃えるかどうかは、初期費用の軽さだけでなく、所有権や中途解約の条件まで含めて比べてください。
そして、工事のスケジュールと融資の時間軸を並べて考えることが、実務では何より効いてきます。物件が決まってから慌てて動くのではなく、内装のプランを描く段階で資金の組み立てを並行させておくと、開業までの流れがぐっと楽になります。資金使途の分け方や計画書の内容に迷ったら、早めに専門家にご相談ください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























