
信用金庫の創業融資は使えるか|公庫との違いと併用のメリットを整理
創業融資というと日本政策金融公庫を思い浮かべる方が多いですが、信用金庫でも創業期の事業者向けの融資を利用できる場合があります。「信用金庫は実績のある事業者向け」というイメージを持っている方もいますが、実際には創業支援に力を入れている信用金庫も少なくありません。この記事では、信用金庫の創業融資の位置づけと、公庫との違い、両方を併用するメリットについて整理します。
信用金庫でも創業融資は利用できる
信用金庫には、信用保証協会付き融資(制度融資)を通じて、創業期の事業者向けに融資を行う仕組みがあります。信用保証協会が保証を付けることで、実績が少ない創業期でも融資を受けやすくなる制度で、自治体・信用金庫・信用保証協会の三者が関わる形で提供されることが多くなっています。地域によっては、信用金庫が独自に創業支援に力を入れているケースもあり、公庫だけが選択肢ではないことを理解しておく価値があります。
公庫と信用金庫の創業融資、何が違うのか
日本政策金融公庫は政府系金融機関として、直接お金を融資する形で創業融資を行っています。無担保・無保証人での借入が原則として可能で、実績の乏しい創業期にも積極的に対応する性質があります。一方、信用金庫の創業融資は、信用保証協会の保証を介して提供されることが多く、地域との関係性を重視する傾向があります。どちらも創業期の事業者を後押しする制度ですが、審査の視点や、その後の付き合い方に違いがあります。
公庫と信用金庫を併用するメリット
公庫と信用金庫の両方から融資を受ける、いわゆる「協調融資」を選択する事業者もいます。併用のメリットとしては、まず調達できる資金の総額を増やせる可能性がある点が挙げられます。公庫単独の限度額では足りない場合に、信用金庫からの借入を組み合わせることで、必要な開業資金を確保しやすくなります。また、開業前から地域の信用金庫と取引を始めておくことで、開業後の運転資金や、将来的な追加融資の相談先としての関係を早くから築けるという側面もあります。
💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころ、公庫だけで開業した方より、開業前から信用金庫とも取引を始めていた方のほうが、開業後の追加相談がスムーズに進む印象がありました。融資額そのものより、早い段階で関係を作っておくことの価値を感じる場面が多くありました。
併用を検討する際の注意点
公庫と信用金庫の併用を検討する場合、それぞれの金融機関に事業計画書や必要書類を個別に提出することになります。同じ内容の書類でも、金融機関ごとに求められる形式や補足資料が異なることがあるため、準備には相応の時間がかかることを見込んでおく必要があります。また、複数の借入を抱えることになるため、返済計画が無理のない範囲に収まっているか、事前にシミュレーションしておくことも大切です。
フランチャイズ加盟者にとっての位置づけ
フランチャイズ加盟者の場合、本部から示される開業費用の一覧をもとに、公庫単独で足りるのか、信用金庫との併用が必要なのかを早い段階で見積もっておくとよいでしょう。開業前から地域の信用金庫と関係を築いておけば、開業後の運転資金や、多店舗化を検討する段階での相談先としても機能しやすくなります。1店舗目の開業時から、公庫と信用金庫の両方を視野に入れて資金計画を組み立てる加盟者も見られます。
どちらから先に相談すべきか
公庫と信用金庫のどちらに先に相談すべきかについて、明確な決まりがあるわけではありません。実績が乏しい創業前の段階では、公庫の創業融資が有力な選択肢になりやすいため、まず公庫に相談し、その結果や必要資金の見込みを踏まえた上で、信用金庫への相談を検討するという順番を取る事業者が多く見られます。一方で、開業予定地に地縁があり、信用金庫との関係を早くから作っておきたい場合は、公庫と並行して信用金庫にも相談を始めるという進め方もあります。どちらの順番にも一長一短があるため、自分の状況に合わせて判断するとよいでしょう。
金融機関それぞれに何を確認すべきか
公庫と信用金庫、それぞれに相談する際は、単に融資が受けられるかどうかだけでなく、開業後にどのような相談ができるのかもあわせて確認しておくとよいでしょう。公庫は創業期の資金調達に強い一方、開業後の日常的な経営相談は信用金庫のほうが身近な存在になりやすい傾向があります。それぞれの金融機関がどのような役割を果たしてくれるのかを理解した上で相談することで、開業前後を通じた資金面のサポート体制を作りやすくなります。
よくある質問
Q. 公庫と信用金庫、どちらか一方しか使えないということはありますか。
A. 制度上、両方を利用すること自体は可能です。ただし、それぞれの審査基準や必要書類を満たす必要があるため、無条件に両方から満額を借りられるわけではありません。
Q. 信用金庫の創業融資は、公庫より審査が厳しいのですか。
A. 一概にどちらが厳しいとは言い切れません。信用金庫は地域との関係性や信用保証協会の保証の有無を重視する傾向があり、公庫は実績の乏しさそのものに積極的に対応する性質があります。視点が異なると理解しておくとよいでしょう。
まとめ
信用金庫でも、信用保証協会付き融資などを通じて創業融資を利用できる場合があります。公庫と信用金庫は審査の視点や関係性の築き方が異なるため、どちらか一方に限定せず、状況に応じて併用を検討することで、資金調達の選択肢と開業後の相談先を広げることができます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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