
宅建業免許の申請代行と創業融資申請はセットで依頼できる?|依頼範囲と進める順番の整理
宅建業免許の取得と創業融資、同じ窓口に頼めるのか|依頼範囲の切り分け方
不動産会社で経験を積み、いよいよ自分の会社を立ち上げる。そのとき同時に走り出すのが、宅地建物取引業(宅建業)の免許取得と、創業融資の申請です。どちらも書類が多く、独立準備と並行して進めるには重い作業になります。「まとめて専門家に頼んでしまえないだろうか」と考えるのは自然な発想です。
結論から言えば、窓口を1つにまとめること自体は可能です。ただし、依頼できる中身は2つの手続きで性質が違います。この違いを知らないまま「両方お任せ」の前提でスケジュールを組むと、開業日が後ろにずれたり、資金の出入りが読めなくなったりします。
この記事では、何を頼めて何を頼めないのかという依頼範囲の線引きと、免許と融資をセットで進める人が実際に詰まりやすい4つのポイントを整理します。なお、記載している数字・要件は2026年8月時点で確認した内容です。制度は変わり得るため、実際の申請前には申請先でご確認ください。
結論:まとめて相談はできますが、中身は「代理」と「支援」で性質が違います
2つの手続きの性質を先に押さえておきます。
宅建業免許の申請は、行政書士が代理できる手続きです
宅建業免許の申請は、官公署(都道府県知事または国土交通大臣)に提出する書類を作成し、提出する手続きです。この領域は行政書士の業務にあたるため、書類の作成から提出までを本人に代わって進めてもらうことができます。事務所の要件確認や欠格事由の整理といった、申請前に固めておくべき論点の相談も含めて依頼できます。
創業融資の申請は、事業者本人が主体になる手続きです
一方、創業融資はやや事情が異なります。日本政策金融公庫の創業融資では、書類の提出だけでなく面談が必要で、この面談は事業者本人が受けます。事業計画の中身を説明し、質問に答えるのは本人です。
そのため、専門家が担うのは「申請の代行」ではなく、創業計画書の作成支援、数字の組み立ての整理、面談に向けた準備の支援といった支援の側になります。「融資の申請代行」という言葉が使われることがありますが、実態としては本人が申請者として立ち、その準備を専門家が伴走する形です。
V-Spiritsグループのように、行政書士法人と融資支援の担当が同じグループ内にある場合は、窓口を1つにして両方を並行して進めることができます。ただし、その場合でも面談に出るのは本人という点は変わりません。ここを「全部やってもらえる」と読み違えると、後述するスケジュールの前提が崩れます。
免許と融資をセットで進める人が詰まる4つのポイント
1. スケジュールを直列に組んで、開業が2か月以上後ろにずれる
もっとも多い詰まり方が、「免許が下りてから融資を申し込む」という直列の組み方です。
創業融資は、書類提出後おおよね3週間から1か月程度で実行されるのが目安です。ただしこれは提出後の話で、創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書などを整える準備期間を含めると、合計で2か月程度を見ておくのが安全です(2026年8月時点で確認した内容)。
宅建業免許の審査期間は、免許権者(都道府県知事か国土交通大臣か)によって異なるため、申請先での確認が必要です。仮にここに1か月以上かかるとすると、直列で組んだ場合は免許取得から開業までにさらに2か月が積み上がります。免許の準備と融資の準備は並行して進められる部分が多いため、どこまで重ねられるかを最初に設計しておく価値があります。
2. 営業保証金・分担金の支出タイミングを資金計画に織り込んでいない
宅建業を開業するには、法務局に営業保証金を供託するか、宅地建物取引業保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付するか、いずれかの手続きが必要です。金額は営業保証金なら本店1,000万円・支店1か所につき500万円、保証協会に加入する場合は本店60万円・支店30万円とされています(2026年8月時点で確認した公表情報。詳細は申請先・保証協会でご確認ください)。
実務上は保証協会に加入するケースが多く、その場合でも協会への入会金などが別途かかります。ここで注意したいのは、この支出が免許取得の過程で必要になる一方、融資の実行はそれより後になる可能性があるという時間差です。
「融資が下りたら払えばいい」という前提で組むと、実際には手元資金から先に出ていく場面が生じます。資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提ですが、個別の支出をどう扱うかは判断が分かれる領域です。判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えてください。
3. 「丸投げできる」前提で日程を押さえてしまう
1つ目とも関連しますが、免許側でも融資側でも、本人が動かないと進まない場面があります。免許側では事務所の実態確認に関する対応、融資側では面談です。
特に融資の面談は日程が指定されるため、退職前で平日の時間が取りにくい方は、ここが最大のボトルネックになります。「専門家に頼んだから自分は待つだけ」という段取りで独立日を先に決めてしまうと、日程調整で全体が後ろにずれます。
4. 免許取得を前提にした計画が、融資側で説明しきれていない
創業融資の審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つに限られるわけではなく、経験や資金使途、面談での説明なども含めて総合的に見られます。
宅建業の場合、免許が下りていない段階で融資の相談に入ることも珍しくありません。そのとき「免許はいつ、どういう見込みで取得するのか」「取得までの期間、収入はどうなるのか」を計画の中で説明できているかが論点になります。免許の取得見込みと売上の立ち上がりが計画上つながっていないと、審査で説明を求められる部分が増えます。
💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころの感覚で申し添えると、自己資金は面談の時点で口座に確認できる形になっているかを見ています。見られているのは残高の大きさだけではなく、そのお金がどういう経緯で貯まったのかを説明できるかどうかです。免許側の支出が先に出ていく段取りになる場合は、その動きも合わせて説明できるように整理しておくと、面談での話が進みやすくなります。
何を頼めて、何を自分でやるのか
依頼範囲を整理すると、次のように分かれます。
専門家に頼める部分
- 宅建業免許の申請書類の作成・提出(行政書士の業務)
- 事務所の要件や欠格事由など、申請前に確認すべき論点の整理
- 創業計画書の作成支援、売上・資金繰りの数字の組み立ての整理
- 面談に向けた準備(想定される確認事項の洗い出しなど)
- 免許と融資、2つのスケジュールをどう重ねるかの設計
本人が動く部分
- 創業融資の面談(本人が出席して説明します)
- 自己資金の準備と、その経緯を説明できる状態にしておくこと
- 事務所の確保、免許要件を満たす体制づくり
- 事業計画の中身そのもの(数字の根拠は本人の想定が土台になります)
なお、会社を設立して開業する場合、設立登記の手続きは司法書士、設立後の税務は税理士の領域になります。宅建業免許・創業融資と合わせて相談したい場合は、これらの専門家が同じグループ内にいるかどうかも窓口選びの判断材料になります。
スケジュールと数字の目安
並行して進めるうえで、押さえておきたい数字を整理します。いずれも2026年8月時点で確認した内容で、制度は変わり得るため申請先での確認が必要です。
創業融資の主な数字
- 主な制度:日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」(2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度になりました)
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 基準利率:2026年6月1日現在、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%
- 利率引下げ:創業期の方が利用する場合、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先でご確認ください
- 返済期間:設備資金20年以内、運転資金は原則10年以内(新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例)
- 据置期間:5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります
- スケジュール:書類提出後おおむね3週間〜1か月。準備を含めると合計2か月程度
免許が下りるまでは営業ができず、売上が立ち始めるのはその後です。この空白期間に返済が重なると資金繰りが厳しくなりますが、据置期間を使えば、その間は利息のみの支払いに抑えられます。免許の取得見込み時期と据置期間の設定を重ねて考えると、資金計画が組みやすくなります。
よくある質問
Q. 創業融資の申請そのものを代行してもらえますか
創業融資は面談を含め、事業者本人が申請者として進める手続きです。専門家が担うのは創業計画書の作成支援や面談準備といった支援にあたります。「申請代行」という表現が使われることはありますが、面談に出るのは本人という点は変わりません。
Q. 免許が下りる前でも融資の相談はできますか
相談自体は免許取得前から可能です。むしろ、免許の準備と融資の準備を並行して進めた方が、全体のスケジュールは短くなります。ただし、免許の取得見込みと売上の立ち上がりを事業計画の中でつなげて説明できる状態にしておく必要があります。
Q. 自己資金はいくら用意すればよいですか
公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧「新創業融資制度」にあった自己資金の割合要件のような固定要件は現行制度にはありません。一方で、自己資金の額は審査の重要な判断材料になります。金額の決まりはないものの、自己資金が多いほど審査で有利になりやすい、という整理になります。
Q. 一度融資を断られると、次の申請に影響しますか
日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
まとめ
宅建業免許の申請代行と創業融資の申請をセットで依頼できるかという問いには、次のように整理できます。
- 窓口を1つにまとめて相談することは可能。ただし免許側は「代理」、融資側は「支援」で、依頼できる中身の性質が違う
- 創業融資の面談は本人が受けるため、「丸投げ」を前提に独立日を決めると日程が後ろにずれる
- 免許と融資を直列に組まず、並行して進められる部分を最初に設計する
- 営業保証金または弁済業務保証金分担金の支出タイミングと、融資実行のタイミングの時間差を資金計画に織り込む
- 免許の取得見込みと売上の立ち上がりを、事業計画の中でつなげて説明できるようにしておく
2つの手続きは目的も所管も違いますが、独立する側から見れば1本のスケジュールです。どちらか一方だけを最適化しても開業日は動きません。記載した数字・要件は2026年8月時点の内容であり、制度は変わり得ます。実際の申請にあたっては、申請先および専門家にご確認ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























