
建設業の人手不足対策に使える補助金とは?2024年問題に効く制度の選び方を比較解説
「現場の職人が足りない」「時間外労働の上限規制で工期が組みにくくなった」——建設業の経営者にとって、人手不足はもはや一時的な悩みではなく、事業継続を左右する構造的な課題になっています。とくに2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業にも本格適用された、いわゆる2024年問題以降、限られた人員で生産性を上げる仕組みづくりが急務になりました。
その有力な選択肢が、設備投資やシステム導入を国が支援する補助金です。ただ、建設業向けの補助金を紹介する情報は「使える制度一覧」を並べただけのものが多く、「結局、自社はどれを選べばいいのか」が見えにくいのが実情です。この記事では、数年経営してきた中小の建設会社が人手不足対策として補助金を比較検討するという視点に立ち、どの制度がどんな場面に向いているのか、何を判断軸に選べばよいのかを整理します。
なお、補助金の上限額・補助率・要件は年度や公募回によって見直されるため、本記事の数値は執筆時点(2026年度時点)の目安です。実際の申請にあたっては、必ず各制度の最新の公募要領で確認してください。
人手不足対策の補助金は「省人化」と「業務転換」の2方向で考える
建設業の人手不足対策と一口に言っても、補助金の使いどころは大きく2つの方向に分かれます。ここを最初に押さえておくと、制度選びの迷いが減ります。
- 省人化(少ない人数で同じ仕事を回す):測量・施工・検査などの工程を機械やデジタルツールに置き換え、一人あたりの生産性を上げる方向。
- 業務転換・新分野進出(人手のかかる事業構造そのものを変える):付加価値の高い工法や新サービスへ展開し、少人数でも利益を出せる体質に変える方向。
2024年問題の本質は「限られた労働時間でどう成果を出すか」です。まずは現場の省人化から入るのが取り組みやすく、その中心になるのが次に紹介する省力化投資の補助金です。
建設業の人手不足対策で軸になる「中小企業省力化投資補助金」
人手不足の解消を正面から支援する制度として、まず比較検討したいのが中小企業省力化投資補助金です。この補助金には性格の異なる2つの枠があり、自社の状況によって向き不向きがはっきり分かれます。
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
あらかじめ国の審査を通った「省力化に役立つ汎用製品」がカタログに登録されており、その中から自社に合う製品を選んで導入する枠です。製品が決まっているぶん事業計画書の作成負担が軽く、販売事業者と一緒に申請を進められるため、補助金の申請が初めての事業者でも取り組みやすいのが特徴です。補助上限額は執筆時点で最大1,500万円が目安とされています。
建設業では、勤怠・労務管理や日報・施工管理のデジタル化など、現場の間接作業を減らす汎用ツールの導入と相性が良い枠です。「まず手軽に省人化を始めたい」「申請に手間をかけられない」会社に向いています。
中小企業省力化投資補助金(一般型)
カタログにとらわれず、自社の現場に合わせて設備やシステムを自由に組み合わせて導入できる枠です。そのぶん、省力化の効果を示す事業計画書をしっかり作る必要があります。補助上限額は従業員規模により異なり、執筆時点で最大1億円規模が目安とされる、大型投資にも対応した枠です。
測量・施工の自動化機器や、現場ごとの事情に合わせたカスタムのシステム構築など、「カタログ製品では足りない本格的な省人化投資」を考えている会社に向いています。投資規模が大きく計画づくりの体力がある会社ほど活かしやすい枠です。
比較軸を足すなら:補完的に検討できる補助金
省力化投資補助金を軸にしつつ、自社の目的によっては次の制度も比較対象になります。いずれも人手不足対策という観点で「使いどころ」を押さえておくと選びやすくなります。
新事業進出・ものづくり補助金 革新的新製品・サービス枠
新しい製品・サービスや生産プロセスの改善のための設備投資を支援する枠です。補助上限額は従業員規模や賃上げ特例の適用状況により異なり、最大で3,500万円が目安とされています(無条件の上限ではなく、最大規模かつ特例適用時の最大値です)。「単なる省人化ではなく、生産性を高める設備でビジネスの付加価値そのものを上げたい」場合に検討する制度です。
新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠
これまでと異なる新分野・新事業へ進出するための投資を支援する枠です。補助上限額は従業員規模や賃上げ特例により異なり、最大で9,000万円が目安とされています(こちらも最大規模+特例適用時の最大値です)。人手のかかる従来事業から、少人数でも利益を出せる新事業へ構造転換したい会社の選択肢になります。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
業務効率化や売上向上に役立つITツール・ソフトウェアの導入を支援する制度です。補助上限額は執筆時点で最大3,000万円が目安とされています。施工管理や事務処理のソフト面のデジタル化で間接業務の人手を減らしたい場合に向いています。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路開拓や業務効率化を幅広く支援する制度で、補助上限額は執筆時点で最大250万円が目安です。「いきなり大型投資は難しいが、小さく省力化や業務改善を始めたい」一人親方や少人数の事業者にとって、はじめの一歩になりやすい制度です。
建設業が補助金を選ぶときの3つの判断軸
制度の中身を並べても、自社に合うかどうかは別の話です。比較検討の段階では、次の3つの軸で絞り込むと判断しやすくなります。
軸1:投資規模はどれくらいか
数十万〜数百万円の小さな改善なら小規模事業者持続化補助金やカタログ注文型、数千万円規模の本格投資なら省力化投資補助金(一般型)や新事業進出・ものづくり補助金が候補になります。投資額の見込みで、検討すべき制度はかなり絞れます。
軸2:申請の手間をどこまでかけられるか
事業計画書の作成負担は制度によって大きく異なります。計画づくりに時間を割きにくいならカタログ注文型のように負担の軽い枠から、専任者を置ける、または専門家の支援を受けられるなら計画書の必要な一般型やものづくり枠も視野に入ります。
軸3:目的は「省人化」か「事業の作り替え」か
今の業務を少ない人数で回したいなら省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金、事業構造そのものを変えて人手依存から脱したいなら新事業進出・ものづくり補助金の各枠、というように、人手不足対策のゴールによって最適な制度は変わります。
建設業が補助金申請でつまずきやすいポイント
比較検討の段階で知っておきたい、建設業ならではの注意点を挙げます。
- 汎用品は対象外になりやすい:一般的なパソコンや事務用品、単なる車両など、その事業以外でも広く使える汎用品は補助の対象外とされるのが一般的です。「省力化のための設備」という位置づけを明確にできるかが鍵になります。
- 省力化の効果を数字で示す必要がある:とくに一般型では、導入によってどれだけ作業時間や人員が削減できるかを計画書で説明する必要があります。現場の作業実態を数値で把握しておくと申請がスムーズです。
- 公募期間・要件は変わりやすい:補助金は年度や公募回ごとに要件や締切が変わります。「去年使えたから今年も同じ」とは限らないため、申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。
- 補助金は原則あとから入金される:多くの補助金は事業完了後の精算払いです。先に支払う資金の手当て(つなぎ資金)も含めて計画する必要があります。
なお、補助金で受け取った資金の税務上の取り扱い(収益計上や圧縮記帳など)は個別の判断が必要です。具体的な処理については税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 補助金と助成金は何が違いますか?
一般に、補助金は審査によって採択された事業者に交付され、助成金は要件を満たせば受給できるものが多いとされます。本記事で取り上げた省力化投資補助金などは審査のある補助金で、採択が保証されるものではありません。要件や採択の考え方は制度ごとに異なるため、最新の公募要領で確認してください。
Q. 申請すれば必ず採択されますか?
いいえ。補助金は審査を経て採択が決まるため、申請しても採択されない場合があります。事業計画の妥当性や省力化効果の説明などが評価されるため、要件に沿った準備が重要です。
Q. 複数の補助金を同時に使えますか?
同じ経費を対象に複数の補助金を重複して受けることは原則認められません。ただし対象経費や事業が分かれていれば、別々の制度を活用できる場合もあります。判断が難しいケースが多いため、申請前に専門家へ相談すると安心です。
Q. 補助金が入金されるのはいつですか?
多くの補助金は事業完了後の精算払いです。設備の購入代金などはいったん自社で立て替える必要があるため、入金までの資金繰りも合わせて計画しておきましょう。
まとめ
建設業の人手不足対策として補助金を比較検討するときは、まず「省人化」か「事業の作り替え」かという方向性を定め、その上で投資規模・申請の手間・目的という3つの軸で絞り込むのが近道です。人手不足解消を正面から狙うなら中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型・一般型)が軸になり、目的によって新事業進出・ものづくり補助金やデジタル化・AI導入補助金、小規模事業者持続化補助金が比較対象に加わります。
ただし、補助金は年度ごとに要件が変わり、採択も保証されません。自社の状況にどの制度が合うのか、計画書をどう組み立てるのかは判断に迷いやすいところです。制度選びや申請準備で迷ったときは、補助金支援の実績がある専門家に早めに相談することで、採択の可能性を高め、限られた時間を有効に使うことができます。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























