
中小企業成長加速化補助金、輸出の取り組みは計画にどう位置づけるか
輸出に取り組んでいる、あるいはこれから輸出を広げていきたいと考えている経営者の方から、「中小企業成長加速化補助金の計画書では、輸出比率をどのくらいに置けばいいのか」という質問をいただくことがあります。結論からお伝えすると、この補助金には輸出比率や海外売上高といった、輸出そのものを測る数値要件は設けられていません。輸出の取り組みを無理に数値目標として切り出すのではなく、別の審査項目の文脈の中で語ることが、この制度の計画書づくりでは重要になります。
結論:輸出に専用の数値要件はない
中小企業成長加速化補助金の公募要領を確認すると、「事業の目的」の中に輸出という言葉が出てきます。将来の売上高100億円を目指す企業への投資を支援するという制度の趣旨を説明する部分で、売上高100億円規模の企業は賃金水準が高く、輸出による外需獲得やサプライチェーンへの波及効果も大きいため地域経済へのインパクトが大きい、という内容が書かれています。
つまり、輸出は「なぜこの制度が売上高100億円を目指す企業を支援するのか」という背景説明の中で、地域経済への効果の一例として挙げられているにすぎません。この部分には、輸出比率を何パーセント以上にするといった数値の基準は示されていません。
一方で、実際に採択を決める審査の項目を見ると、事情が変わります。審査内容は①経営力と②波及効果という二つの項目で構成されていますが、どちらの項目の説明文にも「輸出」という言葉自体は登場しません。この点が、輸出に取り組む会社が計画書を書く際に戸惑いやすいポイントだと考えられます。
「輸出比率」を置こうとする前に確認したいこと
輸出に力を入れている会社ほど、計画書の中に輸出に関する指標を入れたくなるのは自然な発想です。しかし、審査内容①経営力・②波及効果のどちらにも輸出という単語が出てこない以上、「輸出比率◯%以上」のような基準をあらかじめ満たそうとする発想自体が、この補助金の審査の枠組みとは噛み合いません。
この補助金で評価されるのは、売上高100億円に向けた中長期のビジョンと、それを実現する事業戦略が論理的に構築されているか、という点です。輸出はその戦略の中に出てくる要素の一つであって、輸出そのものが独立した審査項目になっているわけではありません。したがって、計画書を作る際にまず確認したいのは、「輸出の取り組みを、どの審査項目を説明するための材料として使うか」という位置づけです。輸出比率のような数値を単独で用意する前に、この整理を済ませておくことが、的を外さない計画書につながります。
輸出の取り組みは「経営力」の文脈で語る
審査内容①経営力では、将来の売上高100億円、あるいはさらなる成長に向けた中長期的なビジョンと事業戦略が問われます。具体的には、補助事業期間を含む今後5年程度について、高い売上高成長率が示され、それを実現できる事業戦略になっているかが見られます。
輸出に取り組んでいる、あるいは取り組む予定の会社であれば、輸出の拡大によって見込まれる売上の伸びを、この売上高成長率の根拠の一つとして組み込むという語り方が考えられます。輸出先の市場規模や、これまでの輸出実績の積み上げといった材料を使って、今後5年間の売上高成長率がどのように実現されるのかを説明する、という流れです。
審査内容①経営力には、企業の収益規模に応じたリスクを取った投資かどうか、つまり売上高に対する設備投資額の比率が高い水準にあるかという観点も含まれています。輸出向けの生産体制を整えるための投資であれば、この設備投資額の比率を説明する材料にもなり得ます。輸出を軸にした計画書を書く際は、「輸出をしているから評価される」のではなく、「輸出の取り組みが売上高成長率や投資の規模をどう後押しするか」という形で経営力の項目に落とし込む、という順序で考えると整理しやすくなります。
審査内容①経営力では、高い付加価値増加率が示されているかどうかも見られます。輸出向けの商品・サービスは国内向けよりも高い価格で販売できる場合があり、その分だけ付加価値が積み上がりやすいという側面もあります。輸出による価格面での優位性が、労働生産性の向上や付加価値増加率の計画にどうつながるのかを数字で示せると、経営力の項目の説明に厚みが出ます。あわせて、投資によって生まれた利益を賃上げとしてどう従業員に還元していくのかという計画も、この項目の中で問われる点です。
輸出の取り組みは「波及効果」の文脈でも語れる
審査内容②波及効果では、域内仕入の拡大や地域における価値創造に資する事業かどうかが問われます。具体的には、川上の調達先や川下の販売先などサプライチェーンを通じた波及効果があるか、ものづくりの高度化やイノベーションの創出につながるか、地域資源の活用を通じて地域経済の成長を牽引する事業かどうか、といった観点です。
輸出に取り組む会社の多くは、原材料や部品、資材などを国内の調達先から仕入れています。輸出によって売上が伸びれば、その分だけ国内の調達先への発注も増える、という構図が成り立つ場合があります。これは、審査内容②波及効果が求めている「域内仕入の拡大」や「サプライチェーンを通じた波及効果」そのものに当てはまる説明です。輸出で得た売上の増加が、国内の取引先にどのように広がっていくのかを具体的に示すことができれば、波及効果の項目で輸出の取り組みを語ることができます。
この際に有効なのは、輸出の売上と国内調達の関係を数字でつなげて示すことです。例えば、輸出向けの受注が増えたことで、どの調達先への発注量がどの程度増えるのかを具体的に書けると、「輸出による外需獲得」が「域内仕入の拡大」という波及効果の評価軸にどう結びつくのかが伝わりやすくなります。輸出比率そのものを示す必要はなく、輸出によって生まれた売上の流れが地域の取引先にどう広がるのかを説明できれば十分です。
なお、審査内容②波及効果には、下請取引先への適切な取引姿勢やBCPの策定といった項目も含まれています。輸出を中心に事業を展開している会社であっても、こうした項目は輸出とは別の論点として、計画書の中でそれぞれ個別に整理しておく必要があります。
まとめ
中小企業成長加速化補助金において、輸出による外需獲得は「事業の目的」の中で、売上高100億円企業が地域経済に与える効果の一例として触れられているだけで、輸出比率のような専用の数値要件は制度上どこにも設けられていません。実際の審査内容①経営力・②波及効果にも、輸出という言葉自体は登場しません。
輸出に取り組む会社が計画書を作る際は、輸出比率のような数値目標を単独で用意するのではなく、輸出の取り組みを経営力の項目では売上高成長率や投資の根拠として、波及効果の項目では域内仕入やサプライチェーンへの効果として、それぞれ語るという整理が実務的です。制度の目的に書かれている輸出への言及と、実際に審査される項目の違いを理解したうえで計画書の構成を考えることが、的を外さない第一歩になります。
💬 執筆者の三浦から一言
輸出に力を入れている会社ほど、輸出比率のような数値基準を満たさないと不利になるのではと身構えてしまいがちです。ですが審査で見ているのは経営力と波及効果という枠組みであり、輸出はその中で語る材料の一つに過ぎません。まず自社の輸出の取り組みがどちらの項目に効いてくるのかを整理することから始めてみてください。
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弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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