
設備が動き出す最初の半年を月次で見る。返済と保守費が先に来ても手元資金が尽きない考え方
補助金が決まり、数百万円の設備を入れる段階に来ると、次に気になるのは導入後の毎月のお金です。設備代の一部を補助金が負担してくれても、返済、保守費、消耗品、電気代といった毎月の支出は残ります。売上が設備の力で伸びるまでには時間がかかります。
この記事では、起業して間もない個人事業主や数名の事業者が、設備稼働後の半年を月ごとに並べて見る方法を、仮の数字を使って説明します。数字は考え方を示すための計算例であり、相場や統計ではありません。
資金が苦しくなるのは採択のあとの数か月です
補助金に採択されると、資金の心配が片づいたように感じます。ただ、補助金が埋めてくれるのは設備代の一部だけです。設備が入った翌月から、返済や保守費は毎月かかり始めます。一方で、設備が売上に結びつくのは、使い方に慣れ、受注が積み上がってからです。
つまり、支出は導入の月からすぐに増え、売上は数か月遅れて追いついてくる形になります。この差が最も開く時期に、手元の現金が足りるかどうかを事前に見ておくことが、この記事の中心です。
設備を入れると毎月増えるお金を洗い出します
まず、導入後に毎月増える支出を書き出します。設備代そのものとは別に、次の項目を確認してください。
- 借入をした場合の毎月の返済(元金と利息)
- 保守契約や定期点検の費用
- 消耗品、部材、工具の補充
- 電気代などの光熱費の増加
- 設置、搬入、工事など、本体価格に含まれていなかった費用
補助金を使う場合は、見積もりの段階で本体価格だけを見て計画を立てがちです。設置や周辺機器まで含めた総額で、自己負担がいくらになるかを先に出します。補助金の対象になる経費の範囲は制度ごとに決まっているため、対象外の費用が自己負担に加わる点も見込んでおきます。
仮の数字で半年分の月次を並べてみます
ここからは仮の数字です。設備の総額を600万円とし、補助金は半分の300万円が出る想定にします。自己負担の300万円は、自己資金100万円と借入200万円でまかないます。毎月の返済は4万円、保守費は1.5万円、消耗品と光熱費の増加は1万円と置くと、増える支出は月6.5万円です。
設備によって増える粗利(売上から仕入れや材料費を引いた額)は、最初の月はゼロで、少しずつ伸びると仮定します。
| 導入後 | 増える粗利 | 増える支出 | その月の差 | 累計の差 |
|---|---|---|---|---|
| 1か月目 | 0万円 | 6.5万円 | -6.5万円 | -6.5万円 |
| 2か月目 | 1万円 | 6.5万円 | -5.5万円 | -12万円 |
| 3か月目 | 3万円 | 6.5万円 | -3.5万円 | -15.5万円 |
| 4か月目 | 5万円 | 6.5万円 | -1.5万円 | -17万円 |
| 5か月目 | 6.5万円 | 6.5万円 | 0万円 | -17万円 |
| 6か月目 | 7万円 | 6.5万円 | +0.5万円 | -16.5万円 |
この仮の例では、月ごとの差は5か月目で釣り合いますが、累計では4〜5か月目に約17万円の持ち出しが最大になります。年間の損益で見ると黒字の見込みでも、この時期に口座の現金が減っていることが、月次で並べると見えてきます。実際の数字は、自分の設備と受注見込みで置き換えてください。
手元資金が最も減る月を見つけます
上の表は設備によって増減する分だけを見たものです。実際の資金繰り表では、これに家賃、仕入れ、生活費、税金や社会保険料などの既存の支出と入金を重ねます。そのうえで、月末の現金残高が最も低くなる月を探します。
確認したいのは次の3点です。
- 補助金が入金される時期。設備代を支払う時期と同じとは限りません。入金までの間を何で持たせるか、先に決めます。
- 納税や社会保険料など、まとまった支払いが設備の立ち上がり期と重なっていないか。
- 売上の入金が請求から遅れる取引先がある場合、その遅れも加味した残高になっているか。
補助金の入金時期や手順は、制度と公募回ごとに決まっています。使う補助金の公募要領で、いつ、どの段階で入金されるかを確認し、その日付を資金繰り表に入れてください。
予備資金は、最も減る月と遅れの余裕から決めます
予備資金の目安を一律の月数で決めることはできません。自分の表から逆算します。手順は次のとおりです。
- 月次の表で、現金残高が最も低くなる月と、その金額を出します。
- 立ち上がりが想定より遅れた場合を考えます。先ほどの仮の例で、売上の伸びが2か月遅れるとすると、増える支出6.5万円が2か月分上乗せされ、持ち出しの最大は約30万円になります。
- その金額を、既存の生活費と事業の固定費を払ったあとでも手元に残せるかを確認します。
手元に残せない場合は、設備の導入時期を遅らせる、借入額を見直す、保守契約の内容を絞るなど、導入前に調整できる項目があります。導入してから慌てるより、事前に調整するほうが選択肢は多くなります。
売上が遅れたときの判断の分かれ目
表のとおりに売上が伸びないことは、十分あり得ます。そのときは、次の順で状況を見ます。
まず、遅れの原因が設備の稼働にあるのか、受注そのものにあるのかを切り分けます。稼働が原因なら、慣れや段取りの改善で取り戻せる余地があります。受注が原因なら、設備を増やす前に営業や販路を見直す必要があります。
次に、返済に影響が出そうな場合は、現金が尽きる前に借入先へ相談します。返済条件の変更に応じてもらえるかは、借入先の判断です。借入の条件については、次の点を押さえておきます。
2026年9月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.75〜5.35%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申込先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内の範囲で認められることがあり、据置中は利息のみの支払いとなります。なお、適用される利率や据置期間は審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選んで決められるものではありません。
💬 執筆者の三浦から一言
賃上げなどの目標が計画どおりに進まなかったときの扱いは、補助金ごとに分かれます。中小企業省力化投資補助金は、一般型では返還が発生しうる一方、カタログ注文型では減額とされています。資金繰り表をつくる前に、使う制度がどちらにあたるのかを確かめて、返還を想定した予備枠を置くかどうかを決めておくと、あとの判断が楽になります。
補助金の条件が資金計画にどう響くか
補助金の条件は、資金計画の前提になります。中小企業省力化投資補助金(一般型)を例に、資金繰りに関わる点を挙げます。以下は第8回公募の内容で、2026年10月6日時点の確認です。
- 補助上限は従業員規模別で、5人以下は750万円(大幅賃上げ特例を使う場合は1,000万円)です。補助率は1/2で、小規模事業者と再生事業者は2/3です。上限は最大額であり、実際の補助額は計画と審査で決まります。
- 単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要があります。ただし、汎用設備を単体で入れるだけでは対象外で、複数設備の組み合わせなどでオーダーメイド性を示す事業計画が求められます。
- 3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均+4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標も要件です。未達の場合は、達成率に応じて返還が発生しうるとされています。
- 事業実施期間は交付決定から17か月です。
- 対象外になりやすい例に、従業員0名などがあります。
また、交付決定より前に行った発注、契約、支払いは補助の対象になりません。小規模事業者持続化補助金でも同じ扱いです。採択の通知を受けただけで設備を発注すると、補助の対象から外れる可能性があります。資金繰り表の起点は、交付決定の日付に置いてください。
補助金の課税や減価償却など税務の扱いについては、税理士に確認してください。
まとめ:まず自分の数字で、半年分の月次表を作ります
設備導入後の資金繰りは、次の順で整えます。
- 導入後に毎月増える支出を、返済、保守費、消耗品、光熱費まで洗い出す。
- 設備で増える粗利を、慎重な立ち上がりで置く。
- 半年分の月次表で、現金残高が最も低くなる月を見つける。
- その月に、補助金の入金時期と納税の時期が重なっていないかを確かめる。
- 立ち上がりが遅れた場合の持ち出しを足して、予備資金の額を決める。
設備の発注前にこの表ができていれば、導入時期や借入額を調整する余地が残ります。制度は改定されることがあるため、申請前に最新の公募要領や事務局(J-Grants・各事務局サイト)で必ず確認してください。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























