
木材加工業が使える補助金7制度|製材所・木工所の設備投資と省人化に効く選び方
製材所や木工所、プレカット工場を数年経営していると、「乾燥機やボイラがそろそろ限界」「モルダーや加工機を更新したいが数千万円かかる」「人が採れないので工程を自動化したい」といった投資判断が同時に押し寄せます。木材加工業は設備1台あたりの単価が大きく、電力・燃料費の負担も重い業種です。だからこそ、補助金をどう組み合わせるかで手元資金の減り方が大きく変わります。
この記事では、木材加工業の事業者が実際に検討しやすい補助金を7制度に絞り、投資の目的別に整理します。制度名を並べるだけでなく、2026年度に起きた制度統合や、上限額の実際の考え方、対象外になりやすい条件まで踏み込みます。なお、本記事の内容は執筆時点(2026年7月)の公募要領等に基づくものです。申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。
まず押さえたい2026年度の変更点:ものづくり補助金は名前が変わりました
木材加工業向けの補助金情報を検索すると、いまだに「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」を別々の制度として説明している記事が少なくありません。しかし2026年度(令和8年度)に両制度は統合され、公募要領上の正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。その中に「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」といった枠が置かれる構造です。
古い名称のまま情報収集していると、上限額や要件も旧年度のものを前提にしてしまいます。第1回公募は2026年6月29日に開始し、申請締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃が予定されています。設備の見積取得から逆算すると、検討開始が遅れると1回分見送りになりやすいスケジュールです。
木材加工業が使える補助金を投資目的別に整理する
1. 新しい製品・サービスを開発するなら|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠
集成材や内装建材の新規格品を開発する、加工精度を上げて新しい取引先に食い込む、といった「新製品・新サービスの開発を伴う設備投資」に向く枠です。補助下限は100万円。上限は従業員規模で変わり、5人以下750万円/6〜20人1,000万円/21〜50人1,500万円/51人以上2,500万円で、大幅賃上げ特例を適用するとそれぞれ850万円/1,250万円/2,500万円/3,500万円まで拡大します。
2. 新しい分野へ進出するなら|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠
製材中心の会社が家具・什器製造に進出する、木質バイオマス燃料の製造を始めるなど、新市場・新業態への進出が主役になる場合はこちらです。補助下限は750万円と高めで、上限は20人以下2,500万円/21〜50人4,000万円/51〜100人5,500万円/101人以上7,000万円、大幅賃上げ特例で最大9,000万円まで拡大します。
いずれの枠も補助率は中小企業者で2分の1(地域別最低賃金引上げ特例・小規模事業者・再生事業者は3分の2)です。基本要件として、付加価値額の年平均3%以上ではなく年平均4.0%以上の伸び、一人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上の伸び、事業場内最低賃金が地域別最低賃金プラス30円以上といった条件が課されます。賃上げ未達の場合は返還が生じうる設計なので、計画は慎重に組む必要があります。
3. 既存工程の人手を減らすなら|中小企業省力化投資補助金(一般型)
「新製品を作りたいわけではないが、いまの工程を回す人が足りない」という木材加工業の悩みに最も近いのがこの制度です。補助上限は1億円。3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められ、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れることが前提になります。
4. 既製の省力化機器を早く入れるなら|中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
登録済みのカタログ製品から選んで導入する即効性重視のタイプで、補助上限は大幅賃上げ計画を盛る場合で1,500万円です。労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要で、販売事業者との共同申請が原則になります。オーダーメイドの設備を組む余力がなく、汎用のロボットや搬送機器で現場負担を下げたい段階ならこちらが合います。
5. 受発注・在庫・原価の管理をIT化するなら|デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
木取りや歩留まりの管理、多品種少量の受注管理を紙とエクセルで回している工場は少なくありません。登録されたITツールの導入を支援するこの制度は、通常枠450万円、インボイス枠350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠3,000万円が上限です。IT導入支援事業者の支援を受けて申請する前提で、PCやタブレット単体の購入は原則として対象になりません。
木材乾燥機・ボイラの更新には「省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」も検討できます
ここは競合記事があまり触れていない論点です。木材加工業は木材乾燥機やボイラ、集塵機、コンプレッサなどエネルギー消費の大きい設備を抱えており、省エネ性能の高い設備への更新は省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)の射程に入ります。
この補助金は事業区分によって条件が大きく異なるため、区分を特定して検討することが欠かせません。設備単位型(従来枠)は補助上限1億円・補助率3分の1以内、GX設備単位型は上限3億円、電化・脱炭素燃転型は上限3億円(電化の場合は5億円)、エネルギー需要最適化型(EMS)は上限1億円で中小企業等は補助率2分の1以内です。下限は30万円に設定されています。
注意したいのは要件の中身です。設備単位型(従来枠)では、現在使用している設備を指定設備へ更新したうえで、省エネ率10%以上、省エネ量1キロリットル以上、または経費当たり省エネ量1キロリットル/千万円以上のいずれかを満たす必要があります。単なる老朽化更新では説明が弱く、更新前後で用途が同じであることも求められます。また設備単位型・GX設備単位型では対象が設備費中心で、据付費・工事費・撤去費・配管などは対象外になりやすい点も押さえておきたいところです。重油ボイラから電気式やバイオマス由来の熱源へ切り替える構想がある場合は、電化・脱炭素燃転型のほうが筋が通ることもあります。
従業員20人以下の工場なら小規模事業者持続化補助金という選択肢もあります
製造業その他の区分では、常時使用する従業員20人以下が小規模事業者の範囲です。家族経営に近い木工所であれば小規模事業者持続化補助金が使えます。補助率は3分の2(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は4分の3)、基本の上限は50万円で、インボイス特例と賃金引上げ特例の要件を満たせば最大250万円まで上乗せされます。
ただし販路開拓が主題の制度なので、設備投資そのものを主役にはできません。展示会出展やウェブサイトの整備、試作品の製作などが中心になります。第20回公募では広報費・ウェブサイト関連費にそれぞれ交付申請額30万円(税込)の上限が設けられ、いずれもそれだけの申請は不可とされています。申請にはGビズIDプライムと、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要です。第20回の申請受付は2026年11月5日開始、締切は2026年12月15日17時、様式4の発行受付締切は2026年12月4日で、期限後の発行依頼は理由を問わず受け付けられません。
木材加工業がつまずきやすい3つのポイント
上限額は「最大値」であって、自社の上限ではありません
3,500万円や9,000万円という数字は、最大の従業員規模かつ大幅賃上げ特例を適用した場合の最大値です。従業員5人以下の製材所であれば、革新的新製品・サービス枠の上限は750万円(特例適用で850万円)が現実的な水準になります。ここを取り違えると、投資計画そのものが成り立たなくなります。
省力化投資補助金(一般型)は「汎用設備を1台買うだけ」では対象になりません
対象になるのはオーダーメイド性のある設備です。判定基準としては、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせてより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合、または事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合が挙げられています。単価50万円以上という要件を満たしていても、汎用設備を単体で導入するだけの事業は対象外です。木材加工業でいえば、加工機を1台入れ替えるだけの計画ではなく、材の投入から搬送、検品までを一連で組み替える構成にできるかが分かれ目になります。
発注のタイミングと相見積を軽視すると、採択されても補助されません
省エネ・非化石転換補助金は交付決定前の契約・発注が不可で、事業開始日は交付決定日です。原則として3者以上の価格競争・見積取得も求められ、補助対象経費は価格競争等の結果による最低価格が上限になります。小規模事業者持続化補助金でも交付決定日前の発注・契約・支払は対象外で、単価50万円(税抜)超の機械装置等には2者以上の相見積が必要です。設備業者に任せきりにすると、見積条件や対象外経費の切り分けでつまずきやすい部分です。
よくある質問
木材乾燥機の更新に複数の補助金を同時に使えますか
同一の経費に複数の国の補助金を重ねて充てることは原則できません。乾燥機の省エネ更新は省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)、その周辺の工程自動化は中小企業省力化投資補助金(一般型)というように、投資対象と目的を分けて設計するのが基本の考え方になります。組み合わせ方は事業計画全体の見え方に影響するため、早い段階で専門家に相談されることをおすすめします。
中古の加工機でも補助対象になりますか
制度によって扱いが異なります。省エネ・非化石転換補助金では中古品は対象になりにくく、小規模事業者持続化補助金の機械装置等費では中古品が条件付き(50万円税抜未満かつ2者以上の見積が必要)で扱われています。中古設備を前提にした計画は、まず制度側の扱いを確認してから組み立ててください。
採択されれば必ず全額が補助されますか
そうとは限りません。補助率の上限があるうえ、賃上げや労働生産性の目標が未達の場合、制度によっては減額や返還の対象になります。中小企業省力化投資補助金(一般型)や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の各枠は返還が生じうる設計で、カタログ注文型にも減額規定があります。補助金は後払いが原則であることも含め、資金繰りは融資とセットで考えておくと安全です。
まとめ
木材加工業の設備投資は、「何を買うか」よりも「何のための投資か」で使える制度が決まります。新製品開発なら革新的新製品・サービス枠、新分野進出なら新事業進出枠、既存工程の省人化なら中小企業省力化投資補助金の一般型かカタログ注文型、管理業務のIT化ならデジタル化・AI導入補助金、乾燥機やボイラの省エネ更新なら省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)、小規模な工場の販路開拓なら小規模事業者持続化補助金という整理になります。
そのうえで、上限額は従業員規模で変わること、省力化投資にはオーダーメイド性が求められること、交付決定前の発注は対象外になることの3点を外さないでください。制度は毎年見直されるため、検討に入る前に最新の公募要領を確認し、投資の時期と公募スケジュールを突き合わせておくことが結果を左右します。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























