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コラム

赤字でも融資相談できる?公庫・商工会議所・自治体・銀行の条件と段取り

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赤字決算のときに相談する窓口はどこか|公庫・商工会議所・自治体・取引銀行の入口条件と段取り

直近の決算が赤字になり、資金調達をどこに相談すればよいか分からないまま時間だけが過ぎている。数年経営してきた中小企業や個人事業主の方から、よくいただくご相談です。

このとき多くの方が「赤字でも貸してくれる金融機関はどこか」という探し方をします。ただ実務の感覚では、この探し方はあまりうまくいきません。赤字のときに使える資金調達のルートは、窓口ごとに先に踏まなければいけない手続きが違うからです。相談先を選ぶというより、自社が入口の条件に立てる窓口はどこかを見極める作業に近いといえます。

この記事では、赤字決算の状態から動き出す経営者に向けて、4つの窓口それぞれの入口条件と、そこにたどり着くまでの段取り・時間感覚を整理します。記載の制度内容・数字は2026年8月時点の情報です。制度や利率は変わりやすいため、申込み前には必ず最新の公式情報をご確認ください。

「断らない金融機関」を探すより、入口の条件を見るほうが早い

赤字だから融資を受けられないと決まっているわけではありません。日本政策金融公庫は政府系金融機関として、民間金融機関では対応が難しいケースにも積極的に取り組む位置づけを持っており、業況が悪化している事業者向けの制度も用意されています。

一方で、「赤字でも必ず借りられる」ということでもありません。融資の可否は個別の審査で決まります。そして見落とされがちなのが、審査にたどり着く前の段階です。窓口によっては、申込みの前に商工会議所の経営指導を受けていることや、市区町村の認定を取っていることが前提になります。ここを知らないまま「まず銀行に電話してみよう」と動くと、数週間を無駄にすることがあります。

なお、自社の赤字が外的要因による一時的なものなのか、数期にわたる構造的なものなのか、あるいは設備投資や採用による先行投資の結果なのかは、どの窓口でも最初に問われます。決算書のどの数字がどう影響しているかという踏み込んだ判断は税務・会計の専門領域にあたりますので、整理しきれない場合は顧問の税理士に相談しながら進めてください。

窓口1:日本政策金融公庫(国民生活事業)

赤字・業況悪化の局面でまず候補に挙がるのが、日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)です。社会的・経済的環境の変化などの外的要因により、一時的に業況が悪化している方を対象とした制度です。

国民生活事業の場合、融資限度額は4,800万円、返済期間は設備資金が15年以内(うち据置期間3年以内)、運転資金が8年以内(うち据置期間3年以内)とされています(2026年8月時点)。

入口の条件として押さえておきたいのは、対象の定義に「外的要因」「一時的」という言葉が入っている点です。取引先の急な減産、原材料や光熱費の高騰、周辺環境の変化など、自社の外側で何が起きたのかを事実にもとづいて具体的に説明できるかどうかが分かれ目になります。「売上が落ちたので」で止まる説明では、この制度の考え方と噛み合いません。

段取り:事前の認定や第三者の指導は必要ありませんので、4つの窓口のなかでは比較的すぐに動き出せます。ただし書類の準備と面談は必要で、創業融資の一般的な目安として、書類提出後おおむね3週間から1か月程度をみておくと安全です。

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窓口2:商工会議所・商工会(マル経融資)

小規模事業者であれば、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)も選択肢に入ります。適用利率は特別利率Fの年2.60%(固定)で(2026年6月1日現在)、利率の面では有利な水準です。

ただしこの制度は、思い立ってすぐ申し込めるものではありません。商工会議所・商工会等の経営指導を受けていることが要件になっているためです。つまり相談の起点は金融機関ではなく、地元の商工会議所・商工会の窓口になります。

段取り:経営指導を受けるところから始まるため、資金が必要になる時期から逆算してスケジュールを組む必要があります。「来月までに資金が要る」という段階で初めて窓口に行くと、間に合わないことがあります。

窓口3:自治体(制度融資・セーフティネット保証)

自治体の融資あっせん制度、いわゆる制度融資も候補です。これは自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みで、自治体が利子補給や預託などで関与し、信用保証協会が保証を付けることで、民間金融機関からの借入をしやすくする設計になっています。

取引先の再生手続きや経済環境の悪化といった事情がある場合には、信用保証協会のセーフティネット保証を利用する道もあります。この場合、事業所のある市区町村の認定を受ける必要があります

段取り:認定の申請、金融機関との面談、信用保証協会の審査と、関係する先が多いぶん工程が増えます。どこから入るのか(自治体の窓口か、取引のある金融機関か)を最初に決めておかないと、同じ説明を何度も繰り返すことになります。

窓口4:既存の取引金融機関(条件変更という別トラック)

新しく借りることだけが選択肢ではありません。手元の資金繰りが厳しい原因が既存借入の返済負担にあるのなら、返済条件の見直しを取引金融機関に相談するという方向もあります。

新規融資と条件変更は、必要になる説明の中身も、話が進む速さも異なります。どちらが自社に合うかは状況によって変わりますので、取引のある金融機関には早めに状況を共有しておくことが大切です。

「制度融資は信用保証協会からお金を借りる制度」は誤解です

窓口を間違えやすい最大の原因がここです。制度融資において、実際に資金を出すのは民間金融機関です。信用保証協会は保証を付ける役割であり、協会が直接貸し付けるわけではありません。自治体は利子補給や預託といった形で関与します。

この3者の役割を取り違えたまま動くと、「保証協会に融資を申し込みに行く」といった噛み合わない相談になり、そのぶん時間を失います。制度融資を検討するなら、自治体の窓口と取引金融機関のどちらから入るのかを最初に決めておくと、手戻りが減ります。

相談の順番を決める3つの質問

質問1:赤字の原因を外部要因として説明できますか

いつ・何が起きて・どの費目にどう影響したのかまで分解できるなら、日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)や、信用保証協会のセーフティネット保証の考え方と噛み合いやすくなります。分解できない場合は、まず何が起きているのかの整理からです。

質問2:資金が必要になるのはいつですか

時間に余裕がないほど、事前の認定や経営指導が必要な窓口は現実的でなくなります。逆に半年以上の余裕があるなら、利率面で有利なマル経融資を視野に入れて、商工会議所・商工会への相談から始める組み立てが取れます。

質問3:既存借入の返済負担はどの程度ですか

返済負担が資金繰りを圧迫している状態で新規融資だけを追いかけると、借りられたとしても数か月後に同じ状況に戻ります。条件変更という選択肢も並べたうえで、取引金融機関に相談することを検討してください。

よくある質問

2期連続の赤字でも相談できますか

相談すること自体は可能です。ただし期数が重なるほど、なぜ改善しなかったのかという点に説明が求められやすくなります。前期と今期で何が違い、これから何を変えるのかを整理してから臨むほうが、話が具体的になります。

一度審査に落ちた後、すぐに再申請してもよいですか

原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。事業計画の説得力、改善策の具体性など、否決の理由を特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。なお日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で公庫内には審査に落ちた記録が残るため、次の審査ではその経緯を考慮して慎重に扱われる可能性があります。

複数の窓口に同時に相談してもよいですか

取引方針は金融機関ごとに異なるため、相談先を複数持つこと自体は珍しくありません。ただし説明する内容がぶれると信頼を損ないます。赤字の理由・改善策・返済原資の説明は、どこに出しても同じ内容になるよう先に固めておくことをおすすめします。

決算書が赤字だと提出しないほうがよいですか

決算書がある事業者の場合、その内容は審査の材料になります。赤字の決算書があること自体を伏せようとするのではなく、中身を説明できる状態にしておくほうが前に進みやすくなります。

まとめ

赤字決算のときに探すべきなのは「断らない金融機関」ではなく、自社が入口の条件に立てる窓口です。日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は外的要因による一時的な業況悪化という定義が入口、マル経融資は商工会議所・商工会の経営指導が要件、セーフティネット保証は市区町村の認定が必要、既存借入の条件変更は取引金融機関との対話が起点になります。

それぞれ踏むべき手順と所要時間が違うため、資金が必要になる時期から逆算して窓口を選ぶことが実務上の要点です。動き出しが遅れるほど、事前手続きが必要な有利な窓口から順に選べなくなっていきます。

そして、どの窓口を選んでも共通して問われるのは、赤字になった理由・改善の具体策と時期・返済原資の見通しの3点です。ここが整理できていれば、決算が赤字であっても話を前に進められる余地はあります。資金繰りに不安を感じた段階で、早めに相談先を確保しておくことをおすすめします。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。


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