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コラム

起業家のリスク対策:公庫の団信制度を徹底解説

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公庫の団信とは?起業家が知っておくべき安心の仕組み

こんにちは、起業コンサルタント(R)、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、CFP®の中野裕哲です。

起業にあたって日本政策金融公庫から融資を受けようとしている方に、ぜひ知っておいてほしい制度があります。
それが一般に「公庫の団信」と呼ばれている、日本政策金融公庫(国民生活事業)の事業資金融資に付けられる「団体信用生命保険(団信保険)」です。

この団信は、公益財団法人 公庫団信サービス協会が運営している制度で、万一のときに「公庫の借入金をゼロにしてくれる」安心のしくみです。

今回は、この制度の仕組みやメリット、加入条件、そして注意点まで、起業家の立場からズバリ丁寧に解説いたします。


そもそも団信とは何か?

団体信用生命保険(団信・団信保険)とは、
借入をしている人が万一亡くなったり、所定の高度障害状態になった場合に、保険金で残りの借入金を完済するための保険です。

住宅ローンでおなじみの団信と同じ考え方ですが、
ここでお話しするのは、事業資金(創業融資など)に付けるタイプの団信です。

日本政策金融公庫の場合、

  • 日本政策金融公庫(国民生活事業)や沖縄振興開発金融公庫からの事業資金融資
  • 借入をしている個人事業主または法人の代表者(連帯保証人)が対象

となっており、「公庫で借りた事業資金専用の団信」とイメージしていただくとよいでしょう。


公庫の団信(事業資金融資用)の特徴

日本政策金融公庫の事業資金融資に付けられる団信保険(事業資金融資)の主なポイントを整理しておきます。

  • 加入は任意(入らなくても公庫の融資は利用できます)
  • 対象は公庫の事業資金融資(普通貸付・生活衛生貸付など)
  • 個人事業主または法人の代表者(かつ連帯保証人)が加入者
  • 年齢要件:加入申込日現在「満15歳以上満68歳未満」
  • 保障内容:死亡または所定の高度障害状態になったときに残高を保険金で弁済
  • 法人・個人事業主いずれも利用可能(条件を満たせばOK)
  • 保険料(特約料)は年払い・掛け捨てで、借入残高に応じて毎年変動

ズバリ言います。
「自分に万一のことがあっても、公庫への返済で家族や会社を困らせたくない」
という起業家には、とても心強い制度です。


どんなときに役立つの?

起業初期は、まだ事業が安定していないことも多く、
「もし自分に何かあったら、家族や従業員に借金を残してしまうのでは…」
と不安を感じる方も多いと思います。

そんなとき団信に加入していれば、万一の場合、

  • 公庫への借入残高が保険金で弁済される(実質ゼロになる)
  • ご家族が返済を引き継ぐ必要がなくなる
  • 事業や会社の整理・清算を比較的スムーズに行いやすくなる
  • 残された会社の資金繰りや、遺族の生活資金面の安心感が高まる

つまり、「事業用の借金についての、もしもの保険」というイメージです。


加入条件のポイント(誰が入れる?)

公庫の団信(事業資金融資用)に加入できるのは、ざっくり言うと次のような方です。

ご加入いただける方(借入の条件)

  • 日本政策金融公庫(国民生活事業)から「普通貸付」または「生活衛生貸付」などの事業資金融資を受ける個人事業主または法人
  • (一部の特別貸付などは対象外の場合があります)

被保険者(実際に保険の対象となる人)

  • 個人事業主本人
  • 法人の場合:代表者であり、かつその公庫融資の連帯保証人になっている方
  • 加入申込日(告知日)現在、満15歳以上満68歳未満であること
  • 生命保険会社の審査(告知に基づく承諾)が必要

なお、団信に加入しなかったり、生命保険会社から加入を断られても、「そのことだけ」を理由に公庫融資が受けられなくなることはありません
(公庫自身も、「融資と団信は別のもの」と明示しています)


加入の方法と流れ

公庫の団信は、「融資のときまでに」申し込む必要があります。途中からの加入はできませんので注意が必要です。

  1. 公庫の融資相談・申込
    創業融資(普通貸付など)を申し込む際に、担当者へ「団信も検討したい」とお伝えください。
  2. 融資の審査・決定
    公庫の融資が内定・決定したあと、団信加入の手続きに進みます。
  3. 団信の申込(ネットまたは書面)
    公庫団信サービス協会・保険会社が指定する方法で、

    • 申込書兼告知書(健康状態の告知)
    • 必要に応じて追加資料

    などを提出します。
    最近は、公庫の電子契約とセットでネット申込を行うケースも増えています。

  4. 生命保険会社による審査
    公庫の融資審査とは別に、保険会社が団信の審査を行います。
  5. 融資実行+団信の保障スタート
    融資が実行されるタイミングで団信も開始。以後、公庫の残高に応じて保障が続きます

重要なポイントは、「融資実行後の途中加入はできない」という点です。
「起業してしばらくしてから考えよう」と思っていると、そもそも申し込めないことになってしまいますのでご注意ください。


保険料(特約料)はどのくらい?支払い方法は?

ここが少し誤解されやすいポイントです。

ズバリ言います。
公庫の団信保険料は、「金利に〇%上乗せされる方式」ではありません。
「年払いの掛け捨て特約料」として、融資残高に応じた金額を支払う仕組みになっています。

保険料(特約料)の基本ルール

  • 年払い・掛け捨て(解約しても原則として払った分は戻らない)
  • 借入残高が減るのに応じて、毎年の掛金は少しずつ減っていく
  • 1年目の掛金は、公庫の融資金から差し引かれて支払われる
  • 2年目以降は、原則として指定口座からの口座振替で年1回支払い

保険料の目安

公式サイトの目安や実務での感覚としては、例えば:

  • 融資金額1,000万円・5年返済の場合:初年度の年間特約料はおおむね2〜3万円台が目安
  • 返済期間が長くなるほど、合計の特約料は増える
  • 返済が進むにつれて、年ごとの掛金は少しずつ下がっていく

正確な金額は、借入額や返済期間などによって変わります。
公庫団信サービス協会の「掛金シミュレーション」で、事前に試算しておくと安心です。

税務上の取り扱い(ざっくり)

  • 法人の場合:団信の掛金は損金(経費)算入が可能とされるのが一般的です。一方、団信で借入金が弁済された場合、その分は益金(収入)として課税対象になります。
  • 個人事業主の場合:掛金は必要経費にはならない一方、万一のときの債務弁済については、原則として所得税は課税されません

細かい取り扱いは変わることもありますので、最終的には税務署や顧問税理士に確認していただくのが安心です。


加入できないケースや注意点

団信はとても心強い制度ですが、「どんな人でも必ず入れる」わけではありません。主な注意点を挙げておきます。

1. 健康状態によっては加入できない場合がある

団信加入には、生命保険会社の審査(告知内容に基づく)が必要です。
持病や入院歴がある場合でも、一律NGではありませんが、内容によっては加入を断られることもあります。

2. 告知義務違反は絶対にNG

既往症や現在の治療状況を隠して申告した場合、告知義務違反となり、いざというときに保険金が支払われない可能性があります。
ここはズバリ、「正直に全部書く」ことが大原則です。

3. 掛け捨て保険であることを理解しておく

途中で任意解約をしても、原則としてすでに払った掛金は戻ってきません(掛け捨て)。
ただし、公庫の借入を繰上完済・借換えなどで完済した場合には、未経過分の掛金が清算・返金される取扱いがあります。

4. 「融資実行後」に加入したくなっても遅い

先ほども触れましたが、公庫の団信は「ご融資の時までに申込が必要」で、途中加入はできません
「事業がうまくいき始めたら考えよう」では手遅れになってしまいますので、創業融資の申込タイミングで一緒に検討しておきましょう。


ケーススタディ:団信加入で助かったケース・加入していなかったケース

イメージを持っていただくために、典型的なケースを2つご紹介します(あくまでイメージ事例です)。

ケース1:団信加入でご家族が守られた例

40代の個人事業主Aさんは、公庫から800万円の創業融資を受ける際に団信に加入しました。
起業2年目、さあこれからというタイミングで、突然の病気でお亡くなりになってしまいました。

このとき、団信によって公庫への借入残高はすべて保険金で弁済されました。
ご家族が返済を引き継ぐ必要はなく、事業の整理も比較的スムーズに進めることができました。

ケース2:団信未加入で遺族に負担が残った例

一方、Bさんは「自分は健康だから大丈夫」と考え、団信には加入せずに500万円の創業融資を受けました。
ところが、その1年後に交通事故で急逝。事業はまだ軌道に乗る前で、十分な資金余力もありませんでした。

結果として、遺族が債務整理等を含めた対応を迫られることになり、大きな精神的・経済的負担が残りました。

もちろん、すべてのケースがこの通りになるわけではありませんが、「団信に入っていたかどうか」で状況が大きく変わり得るということは、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。


よくある質問(FAQ)

Q1:団信は必須ですか?

A:いいえ、任意です。加入しなくても、公庫の融資を受けることはできます。
あくまで、「万一のときの備えとしてどうするか」を経営者ご自身が判断するための制度です。

Q2:法人名義の融資でも団信は使えますか?

A:はい、法人でも利用可能です。
法人の場合は、代表者が連帯保証人となる形で借入をしており、その代表者が被保険者になるのが一般的です。

Q3:保険料は別途払うのですか?

A:はい。
団信の掛金(特約料)は、金利に上乗せする方式ではなく、年払いの保険料として支払います

  • 1年目:融資金から差し引き
  • 2年目以降:指定口座からの年1回振替

ですので、「団信に入ったから金利が上がる」という仕組みではありません。

Q4:途中で解約できますか?

A:解約(脱退)の申出は可能ですが、掛け捨て保険のため、原則として既に支払った掛金は戻りません
一方、公庫の借入を繰上完済した場合などには、未経過分の掛金が返金される取扱いがあります。

Q5:加入できるか不安です。健康診断は必要ですか?

A:基本的には、申込書兼告知書による「健康状態の告知」で審査されます。
内容によっては、追加で診断書などを求められることもありますが、最初から全員に健康診断を課す仕組みではありません

持病があるからといって自動的に加入不可というわけではありませんので、まずは正直に告知を行うことが大切です。


最後に:公庫団信は「経営者の覚悟」と「家族への思いやり」

ズバリ言います。
起業とは、夢の実現であると同時に、リスクと正面から向き合うことでもあります。

公庫の団信は、
「自分に何かあっても、家族や会社、従業員に借金を背負わせない」
という、経営者としての大切な覚悟の表れでもあります。

保険料はかかりますが、それ以上の安心を手にできる制度です。
迷ったときは、まずは公庫の窓口や専門家に相談しつつ、ご自身とご家族の状況に合った判断をしていきましょう。

大切な人を守るためにも、この制度をぜひ有効活用して、
安心の創業スタートを切ってくださいね。応援しています!

※本記事は執筆時点の制度概要をもとにしています。具体的な条件・金額・取扱いは変更されることがありますので、必ず最新の日本政策金融公庫および公庫団信サービス協会の情報をご確認ください。


【無料相談のご案内】

弊社では、中野裕哲を中心とした所属専門家チーム(起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士、中小企業診断士、FP、元日本政策金融公庫支店長、元経済産業省系補助金審査員など)が一丸となって、幅広い起業支援・経営支援を行っております。
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この記事を書いた人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)

V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。

【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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