
CIC開示とは?信用情報の確認で起業準備を万全にする方法
こんにちは、起業コンサルタント(R)、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、CFP®の中野裕哲です。
起業を考えているあなたにとって、忘れてはならないのが「信用情報」の確認です。なぜなら、起業後に融資やリース契約を申し込んだ際、その審査でチェックされるのが、この信用情報だからです。
今回は、信用情報機関の一つである「CIC(シー・アイ・シー)」の開示手続きや、情報の見方、改善を目指す際の考え方などについて、ズバリ丁寧に解説いたします。
CICとは何か?
CIC(株式会社シー・アイ・シー)は、主にクレジットカードやローンなどの信用情報を管理する機関で、個人信用情報機関の一つです。割賦販売法・貸金業法に基づく「指定信用情報機関」にも指定されています。
具体的には、次のような情報が登録されています:
- クレジットカードの契約内容と利用履歴
- 消費者ローン、カードローンなどの契約・返済状況
- 携帯電話・スマホ端末の割賦払い(分割払い)情報
- 返済状況(延滞・未払い・債務整理など)
- 申し込み履歴(クレジットカードやローンを申し込んだ記録)
- 利用記録(金融機関があなたの信用情報を照会した事実)
これらの情報は、金融機関が融資やクレジットカードの審査を行う際の、非常に重要な判断材料になります。
なぜ起業前にCICを確認すべきなのか?
ズバリ言います。
CICの信用情報は、あなたの「経済的な信用力」を示すデータです。起業後に融資を受けたい、リース契約やクレジットカードを作りたいという場合には、その前に必ず自分でチェックしておくべきです。
たとえば、次のような状況があると、融資審査でマイナス評価になることがあります:
- 過去にクレジットカードやローンの延滞がある
- 現在も未払い・長期延滞が続いている
- クレジットカードの利用額が常に限度額ギリギリになっている
- 短期間に複数のクレジットカードやローンを申し込んでいる
これらを「知らないまま放置」していると、「なぜか融資に通らない」「クレジットカードが作れない」という事態になりかねません。起業準備の一環として、事前に自分の信用情報を確認しておくことが、とても大切なリスク管理になります。
CIC情報の開示方法
CICでは、自分の信用情報を「本人開示」として確認することができます。
現在、開示方法は次の2通りです。
- インターネット開示(スマホ・PC)
- 郵送開示
以前は窓口に来社して行う「来社開示」もありましたが、2023年3月1日をもってサービス終了となっています。
開示手数料(2023年3月1日以降)は以下の通りです。
- インターネット開示:500円
- 郵送開示:1,500円(別途、定額小為替の発行手数料などが必要)
インターネット開示の流れ(起業準備の段階でもっともおすすめ)
- CICの公式サイトへアクセス
CICサイトの「インターネットで開示する」のページから手続きを開始します。 - 受付番号の取得
クレジット会社等に届け出ている自分の電話番号から、指定のナビダイヤルに電話し、音声ガイダンスに従って操作して6桁の受付番号を取得します。 - 本人情報の入力・本人確認
受付番号を使って画面の案内に従い、氏名・生年月日などの必要事項を入力します。最近は、マイナンバーカードを使ったオンライン本人確認の仕組みも導入されています。 - 開示手数料(500円)の支払い
クレジットカード・デビットカード・キャリア決済・PayPay・楽天ペイなど、案内された方法で決済します。 - 開示結果(PDF)の確認・ダウンロード
決済が完了すると、画面上にPDF形式の「信用情報開示報告書」をダウンロードできるボタンが表示されます。原則、即時に確認できます(一定時間以内であれば再ダウンロードも可能です)。
インターネット開示は、スマホだけでも完結でき、費用も安く、結果もすぐに確認できるので、起業準備中の方には特におすすめの方法です。
郵送開示の概要
インターネットでの手続きが難しい方は、郵送による開示も利用できます。
- CICサイトから「信用情報開示申込書」をダウンロードして印刷・記入
- 本人確認書類(運転免許証、保険証など)のコピーを同封
- ゆうちょ銀行や郵便局で1,500円分の定額小為替証書を購入し、同封
- 指定の宛先(CICの郵送開示センター)へ郵送
- 後日、信用情報開示報告書が「簡易書留・親展」で郵送されてくる
インターネット環境やマイナンバーカードの有無など、ご自分の状況に合わせて方法を選んでください。
開示情報の見方:ここをチェック!
初めてCICの開示情報を見ると、専門用語や記号の多さに戸惑うかもしれません。でも、大丈夫です。起業準備の観点から押さえておきたいポイントは決まっていますので、そこだけしっかりチェックしていきましょう。
注目すべき5つのポイント
- 契約中のクレジット・ローン一覧
どのカード・ローンをいくつ契約しているか、残高はいくらかを一覧で確認できます。 - 支払状況欄(延滞や遅れがないか)
延滞・債務整理などがあった場合には「異動」といったネガティブ情報として表示されます。3か月以上の延滞や自己破産などがあると「異動」として登録され、いわゆるブラック状態になります。 - 入金状況のマーク(アルファベットの記号)
直近2年分の返済状況が、月ごとに記号で表示されます。代表的な記号は次の通りです。- $:請求どおり、またはそれ以上の入金あり(正常)
- P:請求額の一部のみ入金(部分入金)
- A:契約者の都合による未入金(要注意)
- -:その月の請求も入金もなし(利用なしの月など)
- 空欄:クレジット会社から情報更新がなかった月
基本的には$がズラッと並んでいる状態が理想です。「A」「P」などが多いと、返済管理が甘いと判断される可能性があります。
- 保有期限(いつまで履歴が残るか)
各契約ごとに「保有期限」が表示されます。CICでは、クレジットやローンに関する多くの情報を、「契約期間中および契約終了後5年以内」というルールで保有するのが一般的です。 - 申し込み履歴(直近の照会履歴)
クレジットカードやローンの申込時に、金融機関が信用情報を照会した履歴が「申込情報」として表示されます。CICでは、この申込情報は照会日から6か月間保有されます。
特に、「A(未入金)」や「P(部分入金)」が多い場合や、「異動」と記載されている場合は、起業後の融資審査でマイナス評価となる可能性が高くなりますので要注意です。
情報に誤りがあったら?訂正の手続き方法
まれに、「完済しているはずのローンが未払いになっている」「身に覚えのない契約が載っている」といった誤記録(または不正利用)が見つかることがあります。この場合は、必ず訂正手続きを行いましょう。
訂正の基本的な流れ
ポイントは、「CICではなく、まず登録元(カード会社・ローン会社)に連絡する」という点です。
- 開示情報のコピーを手元に保管
どの契約の、どの部分に誤りがあるのか、ページや項目をメモしておきます。 - 登録元会社(クレジットカード会社・ローン会社など)に連絡
開示報告書に記載されている「登録会社名」に直接連絡し、「CIC開示でこのような記載があったが、事実と違う」と伝え、調査・訂正を依頼します。 - 必要に応じて証拠書類を提出
領収書、完済証明書、通帳コピーなど、事実を示す資料を求められることがあります。 - 登録元会社が訂正し、CICの情報も更新される
調査の結果、誤りであることが確認されれば、登録元会社がCICに訂正データを送信し、CICの情報が修正されます。
なお、「事実に基づく延滞」や「実際に行った債務整理」などについては、原則として訂正・削除はできません。あくまで「誤った情報」や「不正な登録」があった場合に訂正される仕組みです。
登録元会社と話がかみ合わない場合や、どうしても解決しないときには、CICを通じた「異議申立て」の仕組みもありますので、その場合はCICや専門家に相談してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1:CICを確認するだけで信用情報に悪影響はありますか?
A:ありません。本人による開示請求は、金融機関が審査で見る信用情報とは別枠で管理されており、審査に影響しないとされています。何度開示しても、それが原因でカードやローンの審査に落ちることはありませんので、ご安心ください。
Q2:延滞履歴はどれくらいで消えますか?
A:一般的には、クレジットやローンの契約が終了してから最長5年程度で、CICからその契約に関する情報(延滞情報を含む)が抹消されるとされています。
ただし、延滞が続いて契約自体が終了していない場合などには、その間も情報は残り続けます。あくまで「契約が終了してから」のカウントですので、まずは延滞を解消し、契約を整理することが先決です。
Q3:複数のローン申込みをすると不利ですか?
A:短期間に多くのクレジットカードやローンに申し込むと、その「申込情報」がCICに多く残り、金融機関から「資金繰りに困っているのでは?」と警戒される可能性があります。これを俗に「申込みブラック」と呼ぶこともあります。申込情報はCICでは6か月間保有されますので、むやみに同時多発的な申込みをするのは避けましょう。
Q4:CIC以外にも信用情報機関はありますか?
A:はい、あります。代表的な個人信用情報機関は次の3つです。
- CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- JICC(日本信用情報機構)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
金融機関によって、どの機関に加盟しているかが異なります。起業後に銀行融資も検討している方は、CICだけでなく、JICCやKSCの情報も必要に応じて確認しておくと安心です。
Q5:法人を設立すれば個人信用情報は関係ない?
A:いいえ、設立したばかりの法人や個人事業の場合、金融機関は会社の実績だけでは判断できません。そのため、代表者個人の信用情報が非常に重視されます。起業前からご自身の信用情報を整えておくことは、法人であっても融資に大きく影響します。
起業成功のカギは「信用の見える化」
ズバリ言います。
起業を成功させるには、「信用」を整えることがとても大事です。売上・利益の前に、「この人になら、お金を貸しても大丈夫だ」「この会社なら、取引しても安心だ」と思ってもらえるかどうかが、ビジネスの出発点になります。
信用情報の管理は、融資だけでなく、オフィスや店舗の賃貸契約、仕入れやリース契約、さらには事業用クレジットカードの作成など、ありとあらゆる場面に関わってきます。
「自分の信用を数字と履歴で管理する」ことを習慣にできれば、あなたの事業はより強く、より安定したものになっていくでしょう。
ぜひ、一度CICの開示を行い、自分自身の「経済的健康診断」をしてみてください。そして、不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























