
起業して何年で事業が安定する人が多いの?
起業の相談を受けていると、必ずといっていいほど出る質問があります。
「事業って、何年くらいで安定するものなんでしょうか?」
これは非常に気になるポイントですよね。生活の安定や将来計画、家族の安心感にも直結します。
ズバリ言います——多くの経営者は3年目あたりから安定の兆しをつかむケースが多いです。
ただし、それには理由があります。
1. なぜ「3年目」なのか?
開業1年目は、ほとんどが試行錯誤と赤字覚悟の期間です。
商品やサービスの市場適合(PMF)を見極め、顧客獲得のための営業活動や広告投資も必要になります。
この時期はキャッシュが出ていく一方で、安定からはほど遠い状況です。
2年目になると、ある程度の固定客やリピーターが生まれます。広告や営業も効率化され、売上が上がり始めますが、それでも波はあります。
3年目になると、過去2年間の経験から「勝ちパターン」が見え始め、安定した売上と利益を確保できる確率が高まります。
この頃には資金繰りも読みやすくなり、経営者としての判断スピードも格段に上がります。
2. 安定の定義とは?
「安定」と一口に言っても、人によって意味が異なります。
一般的には次のような状態を指します。
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月ごとの売上の変動が小さい
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固定費(家賃・人件費など)が無理なく払える
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経営者の生活費が事業収入でまかなえる
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手元キャッシュが数か月分以上ある
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突発的な出費にも対応できる
この5つが揃ってくるのが、多くの場合3年目前後というわけです。
3. 業種別の安定までの目安
飲食業
開業半年〜1年で顧客層が固定化し、3年目で地域に定着するケースが多い。
ただし競合やトレンド変化が早く、油断すると売上減少に。
小売業(リアル店舗)
1〜2年でリピーターを獲得、3年目以降はイベントや販促で安定化。
商圏分析と商品の入れ替えがカギ。
BtoBサービス業
契約単価が大きく、営業サイクルが長いので安定まで3〜5年かかることも。
継続契約や紹介が増えると一気に安定。
ネットビジネス
初期は集客の仕組みづくりに注力し、1〜2年で広告ROIが安定化。
ただしアルゴリズム変更や広告規制で変動リスクあり。
4. 安定までを早めるためのポイント
ポイント① PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の早期確立
顧客のニーズにピッタリ合った商品をいかに早く提供できるかが勝負です。
売れない商品の改良や撤退判断もスピーディに。
ポイント② 営業・集客の仕組み化
経営者自身が動かなくても売上が立つ仕組みを構築します。
SNS・広告・紹介・パートナー契約など複数チャネルを持つことが重要。
ポイント③ 固定費を抑える
固定費が高すぎると、売上が安定する前に資金が尽きます。
事務所・人件費・広告費は段階的に増やしましょう。
ポイント④ 手元キャッシュの確保
最低でも月商の3か月分の現金を用意しておくと、予期せぬ売上減にも耐えられます。
5. 実例
事例① コンサルティング業
初年度は飛び込み営業中心で不安定。2年目にオンライン集客を導入、3年目に顧客紹介が増加し、売上が安定化。
事例② 飲食業
開業当初は客足が伸びず苦戦。2年目からSNSと地域イベントで集客を強化し、3年目には常連客が全体の6割を占めるまでに。
6. 注意点:3年目の落とし穴
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慢心:安定した途端に新規営業をやめる
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固定費の増加:利益が出始めたときに高額投資や採用を急ぐ
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市場変化への対応不足:競合や環境の変化に遅れる
まとめ
起業から事業が安定するまでの期間は、人や業種によって異なりますが、多くは3年目前後がひとつの目安です。
ただし、安定は自然に訪れるものではなく、顧客ニーズの把握・集客の仕組み化・固定費管理といった経営努力が欠かせません。
あなたが今、1年目や2年目で「まだ安定しない…」と感じていても、それはごく普通のことです。
むしろ、この時期に基礎固めを徹底すれば、3年目にはしっかりとした土台の上で事業を伸ばせます。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。