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コラム

創業融資 自己資金|融資審査で重要な自己資金の考え方

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創業融資の審査で最も重視される要素の一つが「自己資金」です。「自己資金はいくら必要か」「親から借りたお金は自己資金になるか」「貯金以外でも自己資金として認められるか」――こうした疑問は、申込前に必ず整理しておきたい論点です。

本記事では、創業融資における自己資金の考え方を、金額の目安・認められる場合・認められない場合・自己資金の見せ方の観点で実務的に整理します。

創業融資における自己資金とは

創業融資の文脈での「自己資金」とは、「自分の資金として、創業に投入できるお金」のことを指します。融資審査では、申込人が事業に対してどれだけ自己負担できるか、つまり「事業への本気度と準備度合い」を測る指標として重視されます。

自己資金が重視される理由

  • 準備度合いの証明:時間をかけて自己資金を積み上げてきた事実が、事業への準備度合いを示す
  • 本気度の証明:自分のお金を投入する覚悟が、事業への本気度を示す
  • 返済能力の補強:自己負担が大きいほど、返済原資の確保がしやすい
  • レバレッジの妥当性:借入額が自己資金の何倍までなら現実的かを判断する基準になる

自己資金の目安

「創業資金総額の10分の1以上」が一般的な目安

一般的に、創業資金総額の10分の1以上が自己資金として求められると言われています。たとえば創業資金総額が1,000万円なら、自己資金100万円以上が一つの目安です。

ただし、これはあくまで「最低ライン」であり、それ以上の自己資金があるほうが審査の通りやすさは上がります。

「借入額は自己資金の2〜3倍」が実態の目安

制度上の上限ではなく、実態としては「借入額は自己資金の2〜3倍まで」が一つの目安です。

  • 自己資金100万円:借入の目安は200〜300万円程度
  • 自己資金300万円:借入の目安は600〜900万円程度
  • 自己資金500万円:借入の目安は1,000〜1,500万円程度

これも事業計画の質・経営者の経歴・業種により変動します。同業経験が長く、緻密な事業計画がある場合は、3倍を超える借入が認められることもあります。

自己資金として認められやすい場合

1. 給与から毎月積み立ててきた預貯金

最も評価が高い自己資金です。給与から毎月一定額を積み立ててきた通帳の履歴は、「コツコツ準備してきた事実」を最もよく示します。創業を決意してから数年かけて積み立ててきた場合、面談での説得力も上がります。

2. 退職金

退職してから創業する方の退職金は、自己資金として認められます。退職金が振り込まれた通帳の記録が証明になります。

3. 配偶者・家族の協力資金

配偶者の貯金や家族の協力資金は、配偶者の同意が確認できれば、自己資金として扱われることがあります(運用は機関により異なる)。生活費との関係や、家族の理解を示せると安心です。

4. 保険積立金の解約返戻金

長年積み立ててきた生命保険・終身保険などの解約返戻金は、自己資金として認められます。解約証明書・通帳への入金履歴が証明になります。

5. 株式・投資信託などの売却金

投資資産を売却して創業資金にする場合、売却履歴・通帳入金が確認できれば自己資金として扱われます。

6. 不動産売却金

不動産を売却した資金も、契約書・通帳入金履歴で証明できれば、自己資金として認められます。

7. 過去の事業利益

個人事業主から法人化する場合や、副業から本業化する場合に、過去の事業で積み上げた利益は自己資金として扱われます。確定申告書・通帳の記録でを示します。

自己資金として認められにくい場合

1. 直前の親族からの借入

創業直前に親や兄弟から振り込まれた「借入」は、自己資金として認められません。「贈与」として明確に位置づけられても、贈与税の論点や、本人の準備度合いの証明にならないことから慎重に扱われます。

2. タンス預金(出所不明の現金入金)

「タンスから出してきた現金」「家族が持っていた現金」を直前に通帳に入金しても、出元が証明できないため自己資金として認められないことが多いです。

3. 借りた資金

消費者金融・カードローン・ノンバンクから借りた資金は、当然ながら自己資金にはなりません。直前に高額な借入を増やすと、信用情報照会で発覚し、審査評価を大きく落とします。

4. 他人名義の通帳に入っている資金

家族名義など、申込人本人以外の名義の通帳に入っている資金は、原則として自己資金になりません(配偶者協力資金などの例外を除く)。

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自己資金の「見せ方」のポイント

1. 通帳は最新まで記帳しておく

申込書類として通帳のコピーを提出します。最新まで記帳されていない通帳は印象を落とすため、申込直前に必ず記帳します。記帳ページを含めて、過去半年〜1年分のコピーを準備します。

2. 積立履歴がわかる形で示す

給与振込→自動積立→定期預金、という形で毎月積み立ててきた経緯が分かれば、「コツコツ準備してきた」事実が伝わります。通帳の入出金履歴で積立の実態を示します。

3. 大きな入金の出元を説明できる資料を準備

退職金・保険解約返戻金・売却金など、まとまった入金がある場合は、それぞれの出元を証明できる資料(退職金通知・解約証明書・売却契約書)を一緒に準備します。

4. 直前の通帳整理に注意

申込直前に複数の通帳から1つの通帳にまとめると、「直前の大きな入金」に見えて怪しまれます。可能なら、申込の数ヶ月前から自己資金口座を一本化しておくとスムーズです。

自己資金を増やす実務的な工夫

1. 申込タイミングを後ろ倒しにして積立

「あと3ヶ月で30万円積み立てられる」なら、申込タイミングを後ろ倒ししたほうが、有利な条件で借りられる可能性があります。創業日と申込タイミングを並行して検討します。

2. 退職金の受領タイミングを活用

退職して創業する場合、退職金の受領後に申込むことで、自己資金を大きく見せられます。退職→入金→申込の順序で動きます。

3. 保険・株式・不動産の資産整理

保険積立・株式・不動産などを売却・解約して自己資金に充てる場合、売却タイミングを申込前に整えておきます。

4. 家族からの贈与・出資

家族からの贈与・出資は自己資金として認められやすいですが、贈与税の論点があります。年間110万円までは贈与税基礎控除の範囲内ですが、それを超える場合は贈与税の検討が必要です。税理士に相談すると安全です。

自己資金が少ない場合の選択肢

1. 申込時期を見直す

自己資金が少ない状態で無理に申込むより、数ヶ月〜半年で自己資金を積み増してから申込むほうが、結果的に有利な条件で借りられることが多いです。

2. 借入希望額を下げる

自己資金との関係で、現実的な借入希望額に絞ります。「必要額を超えた希望」より「自己資金から逆算した適切な希望額」のほうが、審査通過の可能性は上がります。

3. 補助金との併用を検討

融資だけでなく、補助金(小規模事業者持続化補助金など)を併用して、自己負担分を軽減する選択肢があります。補助金は返済不要なので、創業初期の負担を抑えられます。

4. 副業や別事業で資金準備

創業前に副業や別事業で自己資金を増やしておくのも一つの手です。副業の収益が自己資金として通帳に積み上がる経緯が、面談でのプラス材料になります。

よくある質問

Q. 自己資金100万円は少なすぎますか?

「絶対に少なすぎる」とは言えませんが、希望融資額との関係で見ます。借入希望額が200〜300万円なら100万円の自己資金で対応可能ですが、1,000万円借りたいなら自己資金100万円では難しいケースが多いです。

Q. 親から「贈与」として受け取った資金は自己資金になりますか?

贈与であれば自己資金として認められる場合があります。ただし、贈与契約書を作成しておくことや、贈与税の論点(年間110万円超は課税対象)に注意が必要です。「借入」と「贈与」では扱いが異なります。

Q. クレジットカードや消費者金融で資金を借りて自己資金にできますか?

できません。借入金は自己資金として認められません。むしろ、直前に高額な借入を増やすと信用情報照会で発覚し、審査評価を大きく落とします。

Q. 通帳に大きな金額が入金された日が直前ですが、どう説明すれば良いですか?

退職金・保険解約返戻金・株式売却金・不動産売却金など、証明できる資料があれば自己資金として認められる可能性があります。一方、「タンス預金」「親族からの援助」「不明な入金」は説明が難しくなります。

まとめ

創業融資における自己資金は、金額そのものだけでなく、「積立履歴」「準備度合い」が総合的に評価されます。重要なのは次の3点です。

  • 創業資金総額の10分の1以上を最低ラインに、希望借入額の3分の1〜2分の1程度を目標にする
  • 給与からの積立履歴がある預貯金が最も評価が高く、直前の大きな入金は慎重に扱われる
  • 通帳の見せ方・出元の証明資料を準備して、面談で説明できる状態にする

「自社の自己資金で借入希望額は適切か」「自己資金が少ない場合の戦略を検討したい」と感じる場合は、一度専門家に相談すると、自己資金と借入計画のバランスを整理しやすくなります。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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