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コラム

一人親方から法人化するときの創業融資と建設業許可の同時取得

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一人親方から法人化するときの融資と建設業許可の同時取得

一人親方として現場をこなしてきた方が「そろそろ法人化したい」と考えるとき、多くの場合セットで気になるのが事業資金の融資建設業許可です。法人成りのタイミングで資金を確保し、同時に許可を取れれば、元請けからの受注拡大や信用力アップに一気につながります。一方で、この2つは要件や手続きが絡み合っているうえ、「法人成りだから創業融資が使える」と誤解したまま計画を進めてしまうケースも見られます。

この記事では、建設業で独立してきた個人事業主・一人親方の方に向けて、法人化と同時に融資と建設業許可を取りに行くときの考え方、進め方、注意点を実務目線で整理します。

一人親方の法人成りでは「創業融資」が使えない点に注意

まず押さえておきたいのが、一人親方として事業を続けてきた方がそのまま法人化(法人成り)する場合、原則として日本政策金融公庫の「創業融資」(新規開業・スタートアップ支援資金など)の対象にはなりません。創業融資は「新たに事業を始める方」または「事業開始後、税務申告を2期終えていない方」を対象とした制度のためです(2026年6月時点)。すでに個人事業として一定期間営業し、確定申告の実績がある事業を法人という器に移すだけでは、「新たに事業を始める」とは扱われにくいのが実務上の考え方です。

この場合に検討することになるのは、創業融資ではなく通常の融資制度です。法人成り後の資金調達は、事業実績(個人事業主時代の確定申告・売上実績を含む)をもとに審査される通常の融資の枠組みで進めることになります。「法人化すれば創業融資が使える」と思い込んで計画を立てると、資金調達のスケジュールが崩れる原因になるため、早い段階で日本政策金融公庫や専門家に相談し、自分のケースがどちらに当たるかを確認しておくことが重要です。

なぜ「融資」と「建設業許可」を同時に考えるのか

一人親方のまま個人で建設業許可を取ることも可能ですが、法人化と同時に許可を取得する方が、その後の事業展開で有利になるケースが多くあります。理由は大きく2つです。

  • 元請け・公共工事の受注条件をクリアできる:500万円以上(建築一式は1,500万円以上)の工事を請けるには建設業許可が必須。法人の方が元請けの取引条件を満たしやすい。
  • 許可の財産的基礎要件を資本金・融資で同時に満たせる:後述する「純資産500万円」または「500万円以上の資金調達能力」という要件を、資本金や融資の組み立てでクリアできる。

なお、法人化によって金融機関からの融資審査そのものが個人事業主のときより有利になる、とは一概には言えません。一方で、決算書という形で経営状況を開示できるようになることから、金融機関以外の取引先(元請け・仕入先など)からは信用されやすくなる側面があります。融資の可否は法人か個人かではなく事業実績・計画の内容で判断される、という前提を押さえたうえで、対外的な信用力向上のメリットとして法人化を捉えるのが実態に近い理解です。

つまり、資金計画(融資)と許可要件(建設業許可)を別々に考えるのではなく、最初から1つの設計図として組み立てるのが成功の近道です。

建設業許可の基本|法人化で押さえるべきポイント

個人の建設業許可は法人に引き継げない

まず大前提として、一人親方として個人で取得した建設業許可は、そのまま法人へ引き継がれません。法人化する場合は、原則として法人として新たに建設業許可を申請し直す必要があります(事前認可による承継制度もありますが、要件・手続きが限定的です)。

ここで特に注意したいのが「空白期間」です。個人事業を廃業してから法人で許可が下りるまでの間に、500万円以上の工事を請け負うと無許可営業として違法になります。許可換えのスケジュールは余裕をもって組み、空白期間に大型工事を入れないよう調整しましょう。

財産的基礎要件は「純資産500万円」か「資金調達能力500万円」

一般建設業許可を取るには、財産的基礎要件として次のいずれかを満たす必要があります。

  • 自己資本(純資産)の額が500万円以上であること
  • 500万円以上の資金を調達する能力があること(金融機関の残高証明など)

新設法人の場合、資本金を500万円以上にすれば純資産要件を満たせるため、設立時の資本金設定が許可取得のカギになります。また、定款の「事業目的」に取得したい業種が記載されていないと、後から変更登記が必要になり費用も時間もかかります。会社設立の段階で許可を見据えた定款にしておくことが重要です。

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法人成り後に使える融資(日本政策金融公庫)の活用ポイント

創業融資ではなく通常の融資制度を検討する

前述のとおり、一人親方からの法人成りでは創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金など)の対象になりにくいため、日本政策金融公庫の通常の融資制度(一般貸付など、事業実績のある事業者向けの制度)の活用を検討することになります。制度の詳細・対象要件・金利は取扱いや時期によって異なるため、具体的な内容は日本政策金融公庫の窓口や専門家に確認しながら進めるのが確実です(2026年6月時点)。

建設業の融資審査で重視されるポイント

法人成り後の融資では、次のような点が重視されます。

  • 実務経験・職歴:一人親方としての年数や売上実績は強い武器になる。前職・独立後の経験を事業計画書で具体的に示す。
  • 個人事業主時代の確定申告の実績:法人成り前の売上・利益の推移が、事業の継続性・信頼性を示す根拠になる。
  • 受注見通し:元請けとの取引予定、工事単価、月々の受注見込みを根拠とともに記載する。
  • 資金使途の妥当性:車両(トラック・重機)、工具、運転資金など、何にいくら使うかを明確にする。

一人親方時代の確定申告の数字がそのまま実績として評価されるため、独立後の所得をきちんと申告してきたかどうかも審査に影響します。

同時取得を成功させる進め方とスケジュール

法人化・融資・建設業許可を同時に進めるときは、順番と段取りが重要です。おおまかな流れは次のとおりです。

  • (1) 事業計画の整理:資金計画と許可要件(資本金・経営業務管理責任者・専任技術者など)を同時に設計する。
  • (2) 会社設立:許可を見据えた事業目的・資本金(500万円以上が目安)で法人を設立する。
  • (3) 融資の申請:日本政策金融公庫の通常の融資制度へ申し込む。個人事業主時代の実績・確定申告内容が審査の根拠になる。
  • (4) 建設業許可の申請:財産的基礎要件(純資産または資金調達能力500万円)を満たした状態で申請する。

資本金で純資産要件を満たすのか、融資・残高証明で資金調達能力を示すのかによって、設立時の資本金設計が変わります。ここを最初に決めておかないと、後から増資や追加手続きが必要になり、二度手間になります。

よくある失敗と注意点

  • 「法人化すれば創業融資が使える」と思い込む:法人成りの場合は原則対象外。通常の融資制度で計画を立てる。
  • 空白期間に500万円以上の工事を請けてしまう:許可換えの段取りミスで無許可営業になる。スケジュールに余裕を持つ。
  • 資本金を運転資金のつもりで使ってしまう:資本金は会社のお金になり、純資産要件の維持にも関わる。生活費・納税を圧迫しない範囲で設定する。
  • 定款の事業目的に業種を入れ忘れる:後から変更登記が必要になり費用と時間が増える。
  • 融資と許可を別々の専門家に依頼してバラバラに進む:要件が連動しているため、まとめて相談した方が手戻りが少ない。

なお、金利・限度額・要件などの制度内容は変更されることがあります。申請時点では必ず日本政策金融公庫や各都道府県の建設業許可窓口の最新の公式情報を確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 一人親方から法人化した場合、創業融資は受けられますか?
A. 原則として対象になりにくいです。創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金など)は「新たに事業を始める方」「税務申告を2期終えていない方」を対象とした制度のため、個人事業として実績のある事業を法人化しただけでは対象外と扱われるのが一般的です。この場合は、日本政策金融公庫の通常の融資制度を検討することになります。まったくのゼロから新しく法人を設立して事業を始める場合は、通常の創業融資の対象になり得ます。

Q. 資本金は必ず500万円必要ですか?
A. 一般建設業許可の財産的基礎要件を「純資産500万円」で満たす場合の目安です。「500万円以上の資金調達能力」を残高証明などで示す方法もあるため、資金状況に応じて設計できます。

Q. 法人化すると個人事業主より融資を受けやすくなりますか?
A. 法人か個人かという形態そのものが融資審査で有利になるとは一概には言えません。融資の可否はあくまで事業実績・事業計画の内容で判断されます。一方で、決算書という形で経営状況を開示できることから、金融機関以外の取引先からは信用されやすくなる側面があります。

まとめ

一人親方から法人化するときは、「法人成りでは創業融資が使えない」という前提を踏まえたうえで、融資と建設業許可を「別々の手続き」ではなく「ひとつの資金・要件設計」として同時に組み立てることが成功の近道です。ポイントは、(1)法人成りは創業融資の対象になりにくく通常の融資制度を検討する必要があること、(2)個人の許可は法人に引き継げないこと、(3)財産的基礎要件を資本金または資金調達能力で満たすこと、の3点です。空白期間の工事や資本金の扱いなど、見落とすと事故になる論点も多いため、早い段階で全体スケジュールを設計しておきましょう。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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