
重機購入に補助金は使える?建設業が2026年度に狙える制度と落とし穴
「そろそろユンボを入れ替えたい」「ホイールローダーを1台増やしたいが、補助金でまかなえないだろうか」——建設業を営んでいると、一度は考えるテーマだと思います。インターネットで検索すると「重機購入に使える補助金◯選」といった記事がずらりと並び、上限2,500万円、最大7,000万円といった数字が目に入ります。
ただ、実際に申請の現場に立つと、多くの方が同じところでつまずきます。それは「重機を買うこと」そのものを補助してくれる制度は、基本的に存在しないという点です。ここを理解しないまま申請準備を進めると、時間をかけて書類を作った末に対象外と分かる、という結果になりかねません。
この記事では、一人親方や小規模な建設会社の経営者の方に向けて、重機の購入で現実的に検討できる補助金を整理し、よくある疑問にQ&A形式でお答えします。制度は改正が多いため、本記事は執筆時点(2026年7月)の情報にもとづいています。申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
結論:「重機を買うため」の補助金はない。問われるのは投資の目的
先に結論をお伝えします。国の補助金は、機械そのものを安く買わせるための制度ではありません。「その設備を入れることで、何をどう変えるのか」という事業の目的に対してお金が出ます。重機はあくまで、その目的を実現する手段という位置づけです。
そのため、審査で見られるのは重機の型番やスペックではなく、次のような点になります。
- 新しい製品・サービスを開発するために、その設備が必要なのか
- これまでとは異なる市場へ進出するために、その設備が必要なのか
- 人手不足の現場を省力化し、生産性を上げるために、その設備が必要なのか
逆に言えば、「古くなったから同じ機械に買い替える」という単純な更新投資は、どの制度でも最も通りにくいパターンです。競合記事の多くはこの前提に触れないまま制度を並べていますが、ここが最初の分かれ道になります。
2026年度に重機購入で検討できる補助金
そのうえで、建設業の設備投資で検討候補になる制度を、目的別に整理します。
1. 中小企業省力化投資補助金(一般型)|省力化が主目的なら本命
人手不足の現場を省力化するために、自社の課題に合わせた設備・システムを導入する場合の制度です。補助上限は1億円と大きく、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ導入することが必要です。3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均+4.0%以上伸ばす計画を求められ、賃上げ目標が未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる点には注意が必要です。
建設業では、限られた人員で工期を守るための工程の作り替えや自動化と結びつけられるかどうかが鍵になります。「既存事業の省力化・生産性向上」が主題であり、新しい事業を始める投資ではない、という線引きを押さえておきましょう。
2. 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)|登録済み製品を即効導入
あらかじめ登録された省力化製品から選んで導入するタイプで、補助上限は1,500万円(大幅賃上げ計画を盛り込む場合)です。労働生産性を年平均+3.0%以上向上させる計画が必要で、販売事業者と共同で申請する点が特徴です。
ただし、対象はカタログに登録された製品に限られます。汎用の油圧ショベルやホイールローダーがそのまま並んでいるわけではないため、狙っている機械がカタログにあるかどうかを最初に確認してください。カタログにない独自の設備であれば、一般型が筋になります。
3. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠
ここで注意していただきたいのが制度の名称です。2026年度(令和8年度)から、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合され、公募要領上の正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。いまも両者を別々の制度として紹介している記事が少なくないため、古い情報のまま準備を進めないようご注意ください。
このうち革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。補助上限は従業員規模によって変わり、1〜5人は750万円、6〜20人は1,000万円、21〜50人は1,500万円、51人以上は2,500万円です。大幅賃上げ特例を適用した場合は最大3,500万円まで広がりますが、これは最大規模かつ特例適用時の最大値であり、無条件の上限ではありません。補助下限は100万円、補助率は中小企業者が2分の1、小規模企業・小規模事業者は3分の2です。
重要なのは、単なる設備・システム導入や、既存製品・サービスの生産プロセス改善は本枠では対象外という点です。重機を入れて既存の工事を効率化するだけでは、この枠の趣旨から外れます。
4. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠
既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。補助上限は従業員1〜20人で2,500万円、21〜50人で4,000万円、51〜100人で5,500万円、101人以上で7,000万円、大幅賃上げ特例適用時は最大9,000万円です。補助率は中小企業者が2分の1となっています。
見落とされがちですが、この枠は補助下限が750万円と高く設定されています。小さな重機を1台入れる程度の投資額では、そもそも下限に届きません。また、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書が必要です。既存の建設業の延長で重機を入れる投資は「新事業進出」に該当せず対象外になりますので、たとえばドローン点検サービスへの参入など、申請者にとって新しい市場に出るという筋が立つかどうかが判断の軸になります。
5. 小規模事業者持続化補助金|小規模なら選択肢に
従業員数が一定以下(製造業その他は20人以下、商業・サービス業は5人以下)の小規模事業者を対象に、販路開拓やそれとセットで行う業務効率化を支援する制度です。補助上限は250万円(特例を使った場合)で、商工会・商工会議所の支援を受けて進める設計になっています。あくまで「販路開拓」が主題であり、重機そのものの購入を主目的にした申請には向きません。
よくある質問(Q&A)
Q. 古くなった重機を同じ機種に買い替えたいのですが、対象になりますか?
単純な買い替えは、どの制度でも対象になりにくいのが実情です。補助金は「投資によって何が改善するのか」を計画で示すことが前提のため、原状回復にとどまる更新投資では計画が立ちません。同じ買い替えでも、新しい工法に対応する、あるいは省力化によって作業人数を減らせるといった目的を伴うかどうかで扱いが変わります。
Q. ダンプやトラックなど、公道を走る車両は対象になりますか?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠では、汎用のパソコンやスマートフォン、車両、家賃、建物の単なる購入などは対象外と整理されています。汎用性が高く他の用途にも転用できるものは、制度を問わず対象外になりやすいとお考えください。狙っている機械が「機械装置」と「車両」のどちらに区分されるかは判断が分かれやすいところですので、公募要領や事務局への確認をおすすめします。
Q. 中古の重機でも補助金は使えますか?
中古品の扱いは制度ごとに異なり、条件が付くことがあります。たとえば小規模事業者持続化補助金では、機械装置等費の中古品は条件付きの取り扱いです。見積の取り方など制度固有のルールがあるため、中古で検討している場合は、購入先を決める前に該当制度の公募要領で条件を確認してください。
Q. 補助金はいつ入金されますか?
補助金は原則として後払い(精算払い)です。つまり、重機の代金はいったん全額を自社で支払う必要があります。ここを見落とすと、採択されたのに支払いができないという事態になりかねません。日本政策金融公庫などの融資とあわせて資金計画を立て、入金までのつなぎ資金を確保しておくことが実務上のポイントです。補助金と融資は「どちらか」ではなく「組み合わせて使う」そんな発想が現実的です。
Q. 先に発注してもいいですか?
いけません。交付決定の前に発注・契約・購入をしたものは対象外になります。「良い機械が見つかったので先に押さえておこう」という判断が、そのまま失格につながります。重機は納期が読みにくい商材ですが、順番を逆にしないでください。
Q. 投資額が小さい場合はどうなりますか?
制度には補助下限があります。前述のとおり新事業進出枠は750万円、革新的新製品・サービス枠は100万円が下限です。投資額が小さい場合は、下限のない制度や小規模向けの制度を検討することになります。上限額だけを見て制度を選ぶと、この点を見落としがちです。
申請前に押さえておきたい3つの実務ポイント
- 基本要件は数字で約束するもの:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、付加価値額を年平均+4.0%以上、一人当たり給与支給総額を年平均+3.5%以上伸ばし、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることが基本要件です。未達の場合は返還を求められます。「とりあえず出す」で扱える制度ではありません。
- 事業計画は自分で作る:事業計画は申請者自身が作成することが求められ、外部への丸投げは不採択・取消の対象です。専門家の支援を受ける場合も、計画の中身を自社で説明できる状態にしておく必要があります。
- スケジュールから逆算する:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は2026年6月29日から始まり、締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃とされています。電子申請にはGビズIDプライムが必要で、取得には日数がかかります。回次と時点を確認し、逆算して動きましょう。
なお、補助金を受け取った場合の会計・税務上の取り扱いには注意が必要な場合があります。詳細は税理士などの専門家にご相談ください。
まとめ
重機の購入に使える補助金を探すとき、出発点は「どの制度が使えるか」ではありません。「この投資で何を変えるのか」です。省力化が主題なら中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)、新製品・新サービスの開発を伴うなら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠、新しい市場への進出なら同 新事業進出枠、小規模で販路開拓が主題なら小規模事業者持続化補助金、というように、目的が決まって初めて制度が決まります。
そして、上限額の大きさで制度を選ばないこと、補助下限と交付決定前発注の禁止を必ず確認すること、後払いに備えて融資とあわせた資金計画を立てておくこと。この3点を押さえておけば、大きな遠回りは避けられます。自社の重機投資がどの制度の対象になりそうか、迷ったら早めに確認し、公募スケジュールから逆算して準備を進めていきましょう。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























