
クリーニング店の開業融資はいくら借りられる?設備資金と許可の段取り
クリーニング店の開業は、店舗の中でも設備投資の比重が大きい業種です。とくに有機溶剤を使うドライクリーニング機や乾燥機、ボイラーを自店に入れる場合、初期投資は数百万円から一千万円を超える規模になることも珍しくありません。手元資金だけで賄おうとすると、開業直後の運転資金が薄くなってしまいます。
そこで検討したいのが創業融資です。ただ、クリーニング店の場合は「設備をどこまで自前で持つか」「有機溶剤を扱う設備の許可・届出をいつ進めるか」で、必要な金額も申請の段取りも変わります。この記事では、2026年7月時点の情報をもとに、クリーニング店の開業融資の考え方を、設備の持ち方と許可の段取りという2つの軸から整理します。制度や金利は改定されますので、実際の申請にあたっては日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。
最初に決めるのは「取次店か、自家洗濯か」
クリーニング店の開業資金は、業態によって桁が変わります。融資の相談に入る前に、まずここを固めてください。
取次店(受付のみの店舗)は、洗濯そのものを提携先の工場に出す形です。店舗の内装、カウンター、コンピューターやレジ、什器が中心で、大型の洗濯設備は持ちません。物件取得費を含めても初期投資は比較的抑えやすく、必要な融資額も小さくなります。
自家洗濯(工場併設型)は、洗濯機・乾燥機、有機溶剤を使うドライクリーニング機、プレス機、ボイラー、給排水や電気の工事などが必要になります。設備の点数が多く、1台あたりの単価も高いため、初期投資は一気に膨らみます。その代わり外注費がかからず、仕上がりの品質や納期を自社でコントロールできます。
どちらを選ぶかで必要資金が変わるだけでなく、後述する許可・届出の重さも変わります。事業計画書を書き始める前に、この選択を先に済ませておくと話が早く進みます。
クリーニング店の開業で使える創業融資の基本
主な制度と融資限度額
個人事業主や中小企業が開業時に使う代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在はこちらが主力の制度になっています。融資限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円です。クリーニング店の設備投資であれば、制度の枠としては十分にカバーできる設計といえます。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。無担保・無保証人での借り入れも原則として可能です。
金利と据置期間
基準利率は、2026年6月1日現在、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15パーセントです。創業期の方が無担保で利用する場合は、原則として0.65パーセント(雇用の拡大を図る場合は0.9パーセント)の引下げが適用される可能性があります。ただしこれは案内文上の一般的な説明ですので、実際の適用可否は利用する制度・審査・条件によって異なります。申請先で確認してください。
なお、ウェブ上の記事には金利を「年2〜3パーセント台」と紹介しているものがありますが、これは古い時期の目安です。金利は改定されますので、必ず日付付きの最新の数字を見るようにしてください。
元金返済の据置期間は5年以内で設定できます。据置期間中は利息のみの支払いになりますので、クリーニング店のように認知が広がるまで売上が積み上がりにくい業態では、この据置をどう使うかが資金繰りを大きく左右します。
設備資金と運転資金で返済期間が違う
見落とされがちですが、同じ制度でも資金使途によって返済期間が異なります。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、次のとおりです。
- 設備資金:返済期間20年以内、据置期間5年以内
- 運転資金:返済期間は原則10年以内、据置期間5年以内
クリーニング店は設備資金の比重が大きい業態です。長く使う機械の代金を長い期間で返し、日々の支払いに充てる運転資金は別枠で組む、という切り分けができると、毎月の返済負担を平準化しやすくなります。申込みの段階で、どの支出が設備でどれが運転かを整理しておいてください。
有機溶剤を使う設備と許可・届出の段取り
クリーニング所を開設するときは、クリーニング業法にもとづき、所在地を管轄する都道府県知事(窓口は保健所)への届出が必要とされています。施設の構造設備についても基準が定められており、開設前後に検査が行われるのが一般的です。
さらに、有機溶剤を使うドライクリーニング機を設置する場合は、使用する溶剤の種類や設備の仕様に応じて、環境や消防に関わる法令上の手続きが別に関わってくることがあります。何がどこまで必要になるかは、溶剤の種類、設備の能力、建物の構造、そして自治体の運用によって変わります。
ここで大事なのは、物件を決める前に管轄の保健所へ相談しておくことです。理由は2つあります。1つは、契約してから構造設備の基準を満たせないと分かると、内装をやり直すか物件を変えるしかなくなるためです。もう1つは、融資の審査に関わるためです。
許可・届出と融資申請はどちらを先に進めるか
結論から言えば、並行して進めるのが現実的です。融資の申請には、設備の見積書や物件の情報を含む創業計画書が必要になります。一方で、施設の基準を満たせるかどうかが決まらないと、設備の構成も見積もりも固まりません。
順序としては、①業態(取次店か自家洗濯か)を決める、②候補物件について保健所に構造設備の相談をする、③設備業者から見積もりを取る、④その見積もりをもとに創業計画書を作り融資を申し込む、という流れが組みやすくなります。
スケジュール感の目安も押さえておきましょう。融資は書類提出後おおむね3週間から1か月で実行されますが、創業計画書や自己資金のエビデンス、見積書を整える準備期間を含めると、申請準備に1か月、審査と実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。設備の納期と工事期間はこれとは別に発生しますので、開業予定日から逆算して動き出す必要があります。
ドライクリーニング機は融資で買うか、リースにするか
高額な設備なので、「リースにすれば初期費用を抑えられるのでは」と考える方も多くいます。実際にリースには初期費用を抑えられるメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
クリーニング店の場合、機械の故障は営業の停止に直結します。修理負担が自社側になる契約かどうかは、契約前に確認しておきたいところです。また、中途解約のしにくさは、開業後に業態を変えたくなったときの足かせにもなります。
融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
クリーニング店の創業融資でつまずきやすい3点
1. 自己資金の準備の仕方
公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいのが実情です。「総額の何分の1が必須」といった固定の要件があるわけではない、と理解しておいてください。
準備するうえでのポイントは、面談の時点で口座に確認できる形にしておくことです。また、創業前に自費で取得した資格や、先に購入した設備・備品、テストマーケティングにかけた費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておきましょう。
2. 業界未経験からの参入
クリーニング業は、洗濯物の処理を行う施設ではクリーニング師の設置が求められるなど、専門性が問われる業種です。未経験で参入する場合、事業計画書の中で経験不足をどう補うかが審査上の論点になりやすくなります。
このとき、「同業のメンターから定期的に助言を受けている」「経理や専門技術を業務委託でプロに任せている」といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。より説得力を持たせるには、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。
3. 設備見積もりの精度
設備資金は見積書が根拠になります。機械本体だけを拾って、給排水や電気の工事、搬入据付、溶剤や消耗品の初期購入分が抜けていると、後から資金が足りなくなります。設備業者に見積もりを依頼するときは、工事と据付まで含めた総額で出してもらうようにしてください。
よくある質問
取次店から始めて、後から自家洗濯に切り替えることはできますか
事業の展開としては十分に考えられる進め方です。ただし洗濯設備を導入する段階で、あらためて施設の基準を満たす必要が出てきますし、追加の資金調達も必要になります。将来の切り替えを想定しているのであれば、最初の物件選びの段階で、設備を置ける広さや電気容量、給排水の条件を確認しておくと移行がスムーズになります。
自己資金がほとんどない状態でも申し込めますか
制度上、自己資金の額や割合の要件が決められているわけではないため、申込み自体は可能です。ただし自己資金は審査の重要な判断材料ですので、少ない状態では計画の説得力を他の要素で補う必要があります。「必ず借りられる」というものではありませんので、開業時期に余裕があるなら、自己資金を積みながら準備を進める方が結果的に近道になることが多いです。
一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか
日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
また、原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
設備の代金は融資が実行されてから支払えばよいですか
資金の流れとしてはそうなりますが、設備の納期と工事のスケジュールは融資の実行時期と連動しません。発注のタイミングや支払い条件を設備業者とどう調整するかは、申込みの段階で融資の担当者にも共有しておくと、行き違いを防げます。
まとめ
クリーニング店の開業融資は、まず「取次店か自家洗濯か」で必要資金の規模を決め、そのうえで設備資金と運転資金を切り分けて組み立てるのが基本の型です。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金であれば、限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)、設備資金は返済期間20年以内・据置5年以内、運転資金は原則10年以内・据置5年以内という枠組みで検討できます。基準利率は2026年6月1日現在、無担保・創業期で年3.45〜5.15パーセントです。
有機溶剤を使う設備を入れるなら、物件契約の前に管轄の保健所へ相談し、施設の基準を確認したうえで見積もりを固めてください。許可・届出と融資の準備を並行させ、開業日から逆算して2か月以上の余裕を見ておくことが、無理のない立ち上げにつながります。制度や金利は変わりますので、申請の際は必ず最新の公式情報を確認しながら進めてください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























