
清掃業の創業計画書|売上根拠は定期契約とスポットで積み上げ方を分ける
清掃会社やハウスクリーニング会社、ビルメンテナンス会社に勤めた経験を生かして独立する場合、創業融資の審査で作り込みが求められるのは事業計画書です。清掃業の開業は大きな設備投資が要らず、必要になるお金の中心は当面の運転資金になりやすい業種です。事業として創業した実績がなくても事業計画書と自己資金などをもとに判断されるとされており、実績の薄い創業期はこの計画書の作り込みが結果を左右します。設備投資額が小さい業種ほど、審査で確認されるのは「借りたお金を何に使うか」よりも「借りたお金をどう返していくのか」、つまり毎月どれだけの売上が見込めるのかという根拠です。本記事では、清掃業の事業計画書をどの欄からどの順番で埋めていくかを整理します。
清掃業の創業融資で事業計画書がカギになる理由
清掃業の開業では、店舗の内装や大型設備をそろえる必要が少なく、必要になるのは主に清掃用具や車両、当面の運転資金です。日本政策金融公庫の創業融資でも、審査では事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料をこの二つに限定してよいわけではなく、経験や資金使途の妥当性なども含めて総合的に見られますが、実績の薄い創業期ほど計画書の説得力が結果を左右する構造は変わりません。清掃業のように設備投資が小さい業種では、資金使途の内訳よりも、借りたお金をどう回収していくのかという売上の根拠のほうが問われやすくなります。
書き始める前に決めること|法人向け定期契約か、個人宅向けスポットか
清掃業とひとくくりにいっても、法人向けのオフィスビルや店舗の定期清掃と、個人宅向けのハウスクリーニングのスポット清掃では、売上の積み上がり方がまったく違います。定期契約は一件ごとの単価は控えめでも、契約が続く限り毎月の売上が積み上がっていく形です。スポット清掃は一件あたりの単価を高めに設定できますが、毎月の依頼件数を自分で稼働させて積み上げる形になります。事業計画書の売上の欄は、この二つを漠然と足し合わせて書くと根拠があいまいになりやすいため、まず自分の事業がどちらを主軸にするのかを先に決めてから、それぞれの積み上げ方に合わせて数字を作っていきます。
【本題】事業計画書を埋める順番のチェックリスト
清掃業の事業計画書は、様式の上から順番に空欄を埋めていくと、売上の根拠が後付けになりがちです。次の四つの順番で組み立てると、数字同士のつながりを説明しやすくなります。
- ①法人向け定期契約と個人宅向けスポット清掃のどちらを主軸にするかを決める
- ②主軸に合わせて売上の積み上げ式を作る
- ③積み上げた売上をもとに、必要な運転資金と人件費・外注費を逆算する
- ④借入希望額と返済計画を、算出した運転資金と据置期間の考え方に合わせて埋める
審査では事業計画書と自己資金などをもとに判断されるとされていますが、この「など」には計画全体の一貫性も含まれます。売上の根拠から運転資金、借入希望額までが一本の計算でつながっている計画書は、項目ごとに独立した数字を並べただけの計画書よりも説明がしやすくなります。
💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころは、自己資金は総額の何分の一が必要かとよく聞かれました。実際には金額や割合の要件は制度上決まっておらず、多いほど有利になりやすいという位置づけです。清掃業のように運転資金中心の計画でも、割合にとらわれず、積み上げた売上の根拠を丁寧に示すほうが伝わりやすくなります。
定期契約(法人向け)を主軸にする場合の売上根拠の作り方
法人向けの定期清掃を主軸にする場合、売上の積み上げ式は基本的に「契約件数かける月額単価かける契約継続の見込み」で組み立てます。ここで書くべきなのは業界の相場ではなく、自分がこれまで担当してきた現場の実績や、独立後に営業をかけられる先の見込みです。前職での担当件数や単価の実績があるなら、それを土台にして初年度に獲得できそうな契約件数を積み上げ、月次の売上見込みに落とし込みます。契約件数が増えるペースは一定ではないため、開業直後の数か月は少なめに見積もり、営業が軌道に乗った後の月から契約が積み上がっていく形で計画を作ると、月ごとの運転資金の必要額も見えやすくなります。積み上げた契約件数と月額単価は、事業計画書の売上見込みの欄にそのまま根拠として書き込める数字になります。
スポット(個人宅向け)を主軸にする場合の売上根拠の作り方
個人宅向けのスポット清掃を主軸にする場合は、「稼働可能な件数かける客単価かける稼働率」という式で積み上げます。一人で稼働する場合は一日に対応できる件数に上限があるため、まず自分が実際に稼働できる日数と一日あたりの対応件数を決め、そこに問い合わせから成約に至る割合を掛け合わせて月間の受注件数を見込みます。個人宅向けは繁忙期と閑散期の差が出やすい業態でもあるため、年間を通じて一定の件数を見込むのではなく、月ごとに増減を織り込んで計画を作ると、運転資金が不足しやすい時期を事前に把握できます。定期契約とスポットの両方を扱う場合は、それぞれの積み上げ式を別々に作ったうえで合算し、どちらが主軸かが分かるように比重を示しておきます。
数字を埋めたあとに見落としやすいポイント
売上と運転資金の数字を積み上げたら、審査で見られる点も確認しておきます。まず、審査の判断材料は事業計画書と自己資金などをもとに判断されるとされており、この二つだけで機械的に決まるわけではありません。次に、創業融資だからといって決算書を見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認の対象になりますし、代表者が他に会社を経営している場合はその会社の決算書も見られます。すでに決算が済んでいる会社がある場合は、その内容も踏まえて説明できるように整理しておくと安心です。また、清掃業では現場の実務経験があっても、法人向け営業や資金繰りの経験が薄いケースもあります。同業のメンターに相談しているという説明だけでは経営への関与としては弱く見られやすいため、事業運営に直接関わる体制を計画書の中で示しておくことが有効です。判断に迷う点は、申請先や専門家に確認しながら整えていきます。
まとめ
清掃業の創業融資では、設備投資よりも運転資金の裏付けとなる売上の根拠が問われます。事業計画書を埋めるときは、先に法人向け定期契約と個人宅向けスポット清掃のどちらを主軸にするかを決め、その主軸に合った積み上げ式で売上を作り、そこから運転資金と人件費・外注費を逆算し、最後に借入希望額と返済計画を埋めるという順番で進めると、数字の根拠を一貫して説明できます。本記事の内容は執筆時点の社内情報にもとづく一般的な整理のため、実際の申請にあたっては最新の公式情報や専門家の確認もあわせて行ってください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
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