
スタジオ系ジムとマシン系ジムで開業融資はいくら変わる?設備資金と運転資金の内訳から考える
ジムの開業を検討していると、「レッスン中心のスタジオ系にするか、24時間セルフ利用のマシン系にするか」で迷う場面が出てきます。このとき見落とされやすいのが、業態によって必要な資金の総額よりも「内訳」が大きく変わるという点です。
創業融資は、設備資金と運転資金で限度額も返済期間も別に設計されています。つまり、同じ2,000万円を借りるにしても、その内訳がどちらに寄っているかで、返済の組み方も審査での説明の仕方も変わってきます。本記事では、2026年8月時点の情報をもとに、スタジオ系とマシン系で資金構成がどう違い、融資をどう組み立てるとよいのかを整理します。
スタジオ系とマシン系では「総額」より「内訳」が違う
まず、それぞれの業態がどこにお金を使うのかを押さえておきます。
マシン系(24時間セルフ型)の資金構成
- トレーニングマシン一式が投資の中心になり、設備資金の比率が高くなりやすい
- 入退室のセキュリティシステム、防犯カメラ、無人運営のための管理システムが必要になる
- 常駐スタッフを置かない運営を前提にできるため、人件費の負担は相対的に軽くなりやすい
- 会員数が損益分岐点を超えるまでの期間を見込んだ運転資金が必要になる
スタジオ系(レッスン型)の資金構成
- 大型マシンを揃えない分、設備資金は抑えやすい一方で、床材・鏡・音響・空調など内装工事の比重が上がりやすい
- インストラクターの人件費が開業初月から発生するため、運転資金の比率が高くなりやすい
- レッスンの枠数が売上の上限を決めるため、稼働率の想定が資金計画に直結する
- 指導の質が集客の源泉になるので、採用と育成にかかる時間も資金計画に織り込む必要がある
マシン系は「先に設備へ投じて後から回収する」構造、スタジオ系は「毎月の固定費を回しながら会員を積み上げる」構造です。この違いが、そのまま融資の組み立て方の違いになります。
創業融資の枠は設備資金と運転資金で分かれている
個人事業主や中小企業が創業時に検討する代表的な選択肢が、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主力制度となっています。なお、この制度は2024年3月までは「新規開業資金」という名称でした。
制度上の数字を確認しておきます。
- 融資限度額は7,200万円で、うち運転資金は4,800万円という内訳になっています
- 返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内です(同資金を利用する場合の例)
- 元金返済の据置期間は、いずれも5年以内です。据置期間中は利息のみの支払いです
ここが業態差と噛み合ってきます。設備資金の比率が高いマシン系は、長い返済期間を設定できる部分が大きくなるため、月々の返済額を平準化しやすい構造です。一方、運転資金の比率が高いスタジオ系は、返済期間が原則10年以内の枠に多くを乗せることになるため、同じ借入額でも月々の返済負担が重くなりやすいという違いが生まれます。
業態別に必要な融資額をどう積み上げるか
開業資金の相場は立地・規模・居抜きかスケルトンかで大きく変わるため、他社の総額をそのまま当てはめても意味がありません。次の順番で自社の数字を積み上げてください。
- 設備資金を洗い出す: マシン系ならマシン本体・セキュリティ・管理システム、スタジオ系なら内装工事・床材・鏡・音響・空調。いずれも見積書を取得して積み上げます
- 物件取得にかかる費用を確認する: 物件を借りて始める以上、契約時にまとまった支出が発生します。金額と支払時期を先に押さえます
- 毎月の固定費を出す: 家賃、人件費、水道光熱費、システム利用料、広告費。マシン系は光熱費と保守費、スタジオ系は人件費が重くなりやすい項目です
- 損益分岐会員数に到達するまでの月数を見積もる: ここに毎月の固定費を掛けたものが、必要な運転資金の目安になります
- 自己資金を差し引く: 残りが必要な融資額です
スタジオ系は④の月数が長くなりがちで、マシン系は①が大きくなりがちです。どちらの業態でも、「なぜこの金額が必要なのか」を費目ごとに説明できる状態にしておくことが、事業計画書の説得力につながります。
マシン系で必ず検討されるリース。融資とどう使い分けるか
マシン系ジムでは、トレーニングマシンをリースで導入する選択肢が必ず候補に挙がります。初期費用を抑えられる点は確かにメリットですが、次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。とくにマシン系の場合、設備の大半をリースにすると設備資金の借入額は減りますが、毎月の固定費が増えて運転資金の必要額が膨らむという関係にあります。どちらか一方に寄せるのではなく、全体の資金繰りで見ることが大切です。
審査で見られるポイントは業態で変わるのか
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていませんが、自己資金の額は重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいのが実情です。自己資金は面談の時点で口座に確認できる形にしておきましょう。
また、創業前に自費で取得した資格や、購入した備品、テストマーケティングにかかった費用などは、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることがあります。インストラクターとしての指導資格を自費で取得しているケースは、スタジオ系の開業では珍しくありません。領収書は必ず保管しておいてください。
業態そのもので審査の基準が変わるわけではありませんが、説明すべき論点は変わります。マシン系であれば無人運営のリスク管理と会員獲得の見通し、スタジオ系であればインストラクターの確保とレッスン枠の稼働率。それぞれの業態で「収益が読める理由」を計画書の中で示せるかどうかが問われます。
金利と申請スケジュールの目安(2026年8月時点)
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定され、据置中は利息のみの支払いとなります。
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間から1か月程度が目安です。創業計画書や自己資金の裏づけ資料、見積書などを整える時間を含めると、準備に1か月、審査・実行に1か月、合計で2か月程度を見込んでおくと安心です。内装工事の着工時期や物件契約のタイミングから逆算して動き出してください。
よくあるご質問
業態を決めきれていない段階でも相談できますか
相談自体は可能です。ただし融資の申込みには、設備の見積書や物件の情報など、業態が固まっていないと用意できない書類が含まれます。方向性を絞ってから具体的な準備に入るほうが、結果的に早く進みます。
スタジオ系とマシン系を組み合わせた複合型でも融資は受けられますか
業態の組み合わせ自体が制限になるわけではありません。ただし設備資金と運転資金の両方が膨らみやすいため、必要額の根拠と、会員がどう積み上がるのかの見通しを、より丁寧に説明できるように準備しておく必要があります。
自己資金は面談時点で全額入金しておくべきですか
はい、原則として面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
まとめ
スタジオ系ジムとマシン系ジムでは、開業に必要な資金の総額よりも、設備資金と運転資金のどちらに寄るかという内訳が大きく異なります。マシン系は設備資金が中心で返済期間を長く取りやすく、スタジオ系は人件費を含む運転資金が中心で、返済期間が原則10年以内の枠に乗る割合が高くなります。同じ借入額でも月々の負担感が変わるのは、この構造の違いによるものです。
まずは設備・物件・固定費・立ち上がり期間の4つを自社の数字で積み上げ、そこから自己資金を差し引いて必要な融資額を出してください。リースを組み合わせる場合も、設備資金が減る代わりに固定費が増える関係を踏まえて、全体の資金繰りで判断することが大切です。なお、本記事の内容は2026年8月時点の情報です。金利や制度の条件は変わることがあるため、申請前には必ず日本政策金融公庫などの最新の公式情報をご確認ください。
業態選びと資金計画は、本来は切り離して考えられるものではありません。どちらの業態が自分に向いているのか、その場合いくら借りるべきなのかで迷われた際は、創業融資の支援実績がある専門家にご相談ください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























