
ドッグラン・ペットカフェ開業の資金調達と動物取扱業登録を並行して進める手順
ドッグランやペットカフェの開業準備を始めると、「創業融資の相談はいつ行けばいいのか」「動物取扱業の登録は物件を借りる前か後か」という順番の問題に必ずぶつかります。開業系の記事は必要な資格と費用の一覧で終わり、融資の記事は許認可に触れないため、この2つを同じ時間軸に並べた情報がほとんどありません。
実際には、どの登録が必要かによって物件の条件も資金使途も変わり、それが融資の申し込み時期を決めます。さらに、開業時期を左右する最大の要因が資金ではなく「人」であるケースも珍しくありません。この記事では、トリミングサロンやペットホテルでの勤務経験を経て独立を考えている方を想定し、登録と融資を並行させる手順を5つのステップで整理します。数字は2026年8月時点で確認できる情報にもとづくものです。
ステップ1:自分の業態を分解して、必要な登録の種別を確定する
第一種動物取扱業は、動物の販売・保管・貸出し・訓練・展示・競りあっせん・譲受飼養という種別ごとに登録します。「ドッグランだから」「カフェだから」というくくりでは決まりません。実際にやることを1つずつ書き出して、どの種別に当たるかを確認していきます。
- 店内で動物を客に見せる・触れ合わせる(看板犬・看板猫がいるカフェ、保護猫カフェなど)→ 展示
- 客の動物を有料で預かる(一時預かり、ペットホテル併設)→ 保管
- しつけ教室・トレーニングを有料で行う→ 訓練
- 客が自分の犬を連れてきて遊ばせるだけのドッグラン→ 登録の要否は運営形態によって判断が分かれるため、計画段階で自治体の窓口に確認する
そのうえで、カフェとして飲食を提供するなら食品衛生法にもとづく飲食店営業許可と食品衛生責任者が別に必要になります。ドッグランに小さなカフェを併設し、預かりサービスも始めるという計画なら、動物取扱業の複数種別と飲食店営業許可を同時に取りにいくことになります。ここで種別を1つ取りこぼすと、開業後に営業内容を変えられなくなります。
ステップ2:動物取扱責任者を誰にするかを決める
ここが開業スケジュールの最大の分岐点です。第一種動物取扱業の登録には、事業所ごとに常勤かつ専属の動物取扱責任者を1名以上選任する必要があります。ひとり開業なら、当然その1名はご自身です。
2020年6月の動物愛護管理法改正で、この要件は厳しくなりました。現在は次のいずれかを満たす必要があります。
- 獣医師の免許を持っている
- 愛玩動物看護師の免許を持っている
- 営もうとする種別に係る半年以上の実務経験(常勤の職員としての在職に限る)などがあり、かつ、その種別の知識・技術を1年以上教育する学校その他の教育機関を卒業している
- 専門性を持つ団体の資格試験に合格しており、かつ第一種動物取扱業者のもとで6か月以上の実務経験がある
実務経験は常勤での期間が求められるため、非常勤やアルバイトでの勤務期間は算入できない扱いになっています。資金の準備が整っていても、この要件を満たす人がいなければ登録申請そのものができません。勤務先を辞めるタイミングと、通信講座などで資格を取るタイミングを、開業予定日から逆算して置いてみてください。詳細な要件は自治体ごとに運用が分かれるため、登録手続きそのものは行政書士などの専門家に相談しながら進めると確実です。
ステップ3:物件を決める(登録も融資も、物件が決まらないと前に進まない)
登録は事業所ごとに行うため、物件が決まらないと申請できません。同じことが融資にも当てはまります。創業融資の審査では設備資金の見積書を求められますが、内装工事も設備も物件が決まらなければ見積もりが出ないからです。
ドッグラン・ペットカフェの場合、物件選びには一般的な飲食店と違う条件が加わります。屋外スペースの広さと地面の仕上げ、鳴き声への配慮、給排水の位置、動線を分けられる間取りといった条件です。用途地域や近隣の状況によって候補が絞られるため、物件探しは早めに動き出す領域になります。
ステップ4:資金使途を「設備」と「運転」に分けて、融資の形を決める
日本政策金融公庫の創業融資の主力は「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました(旧称は「新規開業資金」で、2024年4月に現在の名称へ改称・拡充されています)。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
この制度を利用する場合の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、据置期間はいずれも5年以内です。長く使う資産は長く返せる設備資金で組めるため、フェンス・人工芝・空調・厨房設備といった投資と、開業後しばらくの人件費や仕入れを分けて考えると、返済の形が見えてきます。
ステップ5:申請から実行までの時間を逆算する
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定され、据置中は利息のみの支払いとなります。創業期の方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。
💬 執筆者の小峰から一言
金融機関側から見ると、無担保で借りられることと金利が下がることは別の話です。創業期の引下げは担保を出すかどうかで対象が変わるものではないため、実家の不動産を担保に出せば金利が下がると考えて話を進める必要はありません。担保の有無は別の判断材料として扱われますので、まずは資金使途と返済の組み方を先に固めるほうが話が早くなります。
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間から1か月が目安です。創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書などをそろえる時間を含めると、準備に1か月、審査と実行に1か月で、合計2か月程度を見ておくと無理がありません。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。自己資金については、制度上の額や割合の要件は決まっていませんが、審査の重要な判断材料になります。面談の時点で口座に確認できる形にしておいてください。創業前に自費で購入した設備や備品、テストマーケティングにかけた費用などは、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることがありますので、領収書は保管しておきます。
なお、創業融資だからといって決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社でも一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が別に会社を経営している場合はその会社の決算書も確認の対象になります。
ペット業界の経験がない場合はどうするか
会社員から未経験で参入する場合、経験不足をどう補うかが計画上の論点になります。同業の知人から定期的に助言を受けている、専門技術を業務委託で任せている、といった対策は、経営そのものへの関与としては弱く、説得力を持たせにくい部分です。事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整える方向で補うほうが筋が通ります。
そもそもステップ2の動物取扱責任者の要件を満たすには、常勤での実務経験か、教育機関の卒業か、団体資格の取得が必要になります。未経験からの参入は、この要件を満たす過程がそのまま経験不足のカバーにもなる、という見方もできます。
準備チェックリスト
- やることを1つずつ書き出し、展示・保管・訓練のどの種別に当たるかを整理したか
- 飲食を提供するなら、飲食店営業許可と食品衛生責任者を計画に入れたか
- 動物取扱責任者を誰にするか決め、要件を満たす時期を開業予定日から逆算したか
- 物件の条件(屋外スペース・給排水・鳴き声への配慮・用途地域)を先に洗い出したか
- 資金使途を設備資金と運転資金に分け、返済期間の違いを踏まえて配分したか
- 融資の準備1か月+審査・実行1か月を、登録申請のスケジュールと重ねて置いたか
まとめ
ドッグラン・ペットカフェの開業では、動物取扱業の登録と創業融資が、物件と人という2つの共通項でつながっています。物件が決まらなければどちらも動き出せず、動物取扱責任者の要件を満たす人がいなければ登録申請ができません。資金の話を先に詰めても、この2つが揃わなければ開業日は動きません。
本記事の制度・数字は2026年8月時点で確認できる情報にもとづくものです。融資制度や利率は変わりやすく、動物取扱業の運用も自治体によって差がありますので、実際の申請前には申請先の最新情報をご確認ください。登録の種別の判断や、融資のスケジュールの組み方で迷われた場合は、開業予定の内容をお持ちのうえご相談ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























