
非接触測定機の補助金申請で、削減できる測定時間を数字にする方法
非接触測定機の導入に補助金を使いたいと考えたとき、多くの現場が最初に行き詰まるのは制度選びではありません。「この測定機を入れると、何がどれだけ良くなるのか」を数字で書けない、という段階です。ノギスやマイクロメータ、あるいは三次元測定機ですでに測れている工程に新しい測定機を足す投資は、社外の目には「同じことを速くするだけ」に映ります。この記事では、測定工数から年間の削減時間を積み上げる考え方と、その数字を制度の要件にどうつなぐかを、多品種少量の加工現場を想定して整理します。
非接触測定機は「すでに測れているもの」への投資になりやすい
非接触測定機を検索すると、測定機メーカーや商社、申請窓口の案内が並びます。書かれているのは「この制度が使えます」「申請を代行します」という売る側の情報が中心で、買う側が申請書に何を書くのかという話はほとんど出てきません。
非接触測定機の価値は、接触式では時間がかかる形状や、薄物・柔らかい対象、多数の測定点を短時間で取れる点にあります。ただし現場の実感としては「測れなかったものが測れるようになる」よりも、「測れてはいたが遅い」工程の置き換えになることのほうが多くなります。この場合、投資の効果は新しくできるようになったことではなく、消えた時間として現れます。ならば、時間で説明するのが素直な組み立てです。
削減時間を積み上げる四つの数字
効果を時間で説明すると決めたら、感覚ではなく実測から積み上げます。使う数字は四つで足ります。
1. 測定1点あたりの時間を実測する
まず、いま使っている測定方法で1点測るのに何秒かかっているかを、ストップウォッチで測ります。ここで測るのは測定そのものの時間だけではありません。ワークを測定台に据える、基準を出す、記録用紙や表計算ソフトに書き写す、という前後の作業まで含めた実時間を取ります。非接触測定機が短縮するのは測定そのものより、この段取りと記録の部分であることが珍しくないためです。
2. 1ロットあたりの測定点数を数える
次に、1ロットで何点測っているかを図面と検査基準書から数えます。抜き取り検査なら、抜き取り率と実際の測定点数を分けて書き出します。ここを「だいたい20点くらい」で済ませると、あとの掛け算がすべて推測になります。代表的な品番を3つほど選び、実際の検査記録から拾うほうが確実です。
3. 年間のロット数を掛ける
1点あたりの時間に測定点数を掛けると1ロットの検査時間になり、そこへ年間のロット数を掛けると年間の測定時間が出ます。多品種少量の現場では、点数の多い品番と回数の多い品番が一致しないことがよくあります。品番ごとに計算して合計するほうが、実態に近い数字になります。
4. 検査待ちで止まっている時間を足す
ここまでは検査担当者が手を動かしている時間です。実際にはもう一つ、検査が終わるのを待って次工程や出荷が止まっている時間があります。初物検査の結果を待って量産に入れない、最終検査が終わらず出荷が翌日にずれる、といった滞留です。この待ち時間は測定作業の時間には現れませんが、削減効果としては大きく効きます。工程間の仕掛かり在庫や納期遅れの記録から拾えることがあります。
💬 執筆者の三浦から一言
削減時間をどこまで強気に積むかは、どの制度で出すかによって変わります。目標が未達だったときの扱いが制度ごとに違うからです。中小企業省力化投資補助金でも、一般型は達成率に応じた返還がありうる一方、カタログ注文型は減額という設計になっています。積んだ数字は後から自分に返ってくる約束なので、届く根拠のある範囲で置いてください。
積み上げた時間を労働生産性の要件に接続する
年間の削減時間が出たら、それを制度の様式に載せます。既存工程の省力化として出す場合の受け皿になるのが、中小企業省力化投資補助金(一般型)です。
この制度では、3年から5年の事業計画を組み、労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められます。賃上げ目標も要件に含まれ、未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる設計です。設備投資としては、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要があります。
ここで先ほどの数字が効きます。年間で何時間の測定工数が減るのかが実測から積み上がっていれば、労働生産性の分子と分母のどちらをどう動かすのかを、根拠を示しながら書けます。逆に「測定が速くなり生産性が向上します」という文章だけでは、計画の中で数字が孤立します。
もう一つ、対象設備の考え方にも触れておきます。一般型が想定しているのはオーダーメイド性のある設備で、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせる場合や、導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合が該当します。単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外とされています。測定機本体だけを見るのではなく、治具、ワークの受け渡し、測定データを受け取る側の仕組みまで含めて構成を描くと、この考え方と削減時間の計算が一つの計画の上でつながります。
時間ではなく製品で説明するほうが合う場合
同じ非接触測定機でも、導入の目的が「今までの精度では受けられなかった仕事を受けられるようにする」ことなら、積み上げた数字の置き場所が変わります。この場合に対応するのが、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠です。
公募要領1.0版(令和8年6月・初版発行2026年6月29日)では、自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組が対象とされ、既存製品・サービスの生産等プロセス改善は本枠では対象外と整理されています。設備投資は必須で、機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上が対象です。基本要件は、付加価値額が事業計画期間で年平均4.0%以上、一人当たり給与支給総額が年平均3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金プラス30円以上の水準となっています。第1回公募の締切は2026年9月30日18時、採択発表は2026年12月頃です。
時間の削減量を積んだ資料は、この枠でも無駄にはなりません。新しい製品を作る計画の中でも、検査体制が回るのかという問いは必ず出てくるためです。ただし主役は開発する製品のほうに置く必要があります。数字を集める作業は同じでも、計画書のどこに置くかが変わると考えてください。
💬 執筆者の三浦から一言
よく聞かれるのが「測定機1台分の見積でも申請できますか」という質問です。制度には上限だけでなく補助下限もあり、革新的新製品・サービス枠は100万円、新事業進出枠は750万円が下限です。上限額を先に調べる方が多いのですが、小さい投資は入口の下限で枠に乗らないことがあります。見積が出たら下限から確認すると回り道が減ります。
数字を作るときに手が止まりやすい場面
最後に、実際に集計してみると詰まりやすい二つの場面を挙げます。
一つは、社内で測っていない時間の扱いです。測定できない形状を外部の検査機関に出している場合、社内の測定工数はゼロですが、往復の日数と費用は発生しています。この分は測定時間の集計から漏れるため、別立てで書き出しておきます。
もう一つは、人手を減らす方向の投資に賃上げ要件が付いていることへの戸惑いです。労働生産性は時間あたりで見る指標なので、人を減らす計画でなくても、同じ人数で処理できる量が増えれば説明は成り立ちます。検査担当者を減らす話ではなく、検査待ちを減らして流れる量を増やす話として組み立てるほうが、要件とも現場の実感とも合いやすくなります。
まとめ
非接触測定機は、すでに測れている工程を速くする投資になりやすく、そのままでは効果が言葉でしか書けません。測定1点あたりの時間、1ロットの測定点数、年間のロット数、検査待ちの滞留時間という四つを実測して積み上げれば、効果は年間の時間として表せます。その数字を、省力化として出すのか、新製品の開発として出すのかで、計画書の中での置き場所が決まります。
なお、ここで挙げた要件や金額は執筆時点(2026年8月)で確認できる公募要領に基づくものです。公募回次によって条件が変わることがあるため、申請前には最新の公募要領で確認してください。自社の投資をどう説明するかで迷ったときは、数字を集めた段階で一度専門家に見てもらうと、計画の組み替えがしやすくなります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























