
クラウドキッチン開業で補助金を使うなら|2026年度の対象条件と申請の順番
客席を持たず、デリバリーだけで料理を提供するゴーストレストラン。クラウドキッチン(シェア型の厨房)を借りれば、実店舗より小さな初期投資で始められることから、既存の飲食店が2ブランド目として立ち上げるケースも増えています。
その資金を「補助金でまかなえないか」と考える方は多いのですが、ここで多くの記事が触れていない落とし穴があります。ゴーストレストラン向けとしてよく紹介される補助金には、投資額が小さすぎると申請できない下限や、開業前だと申請できない条件があるためです。
この記事では、2026年7月時点の情報をもとに、ゴーストレストラン・クラウドキッチンの立ち上げで検討できる補助金を、開業費用の規模と照らし合わせながら整理します。制度名は2026年度に変わったものがあるため、古い名称のまま調べていた方はここで確認しておいてください。
ゴーストレストランに補助金は使えるのか
結論からお伝えすると、ゴーストレストランやクラウドキッチンだからという理由で対象外になる補助金は、基本的にありません。業態ではなく、何にいくら投資するのかと申請する事業者がどんな状態かで使える制度が決まります。
一方で、ゴーストレストランは「初期投資が小さい」ことが最大の魅力です。各社の開業ガイドを見ると、クラウドキッチンを利用した場合の開業費用は100万円台から300万円程度が目安として紹介されています。この規模感が、実は補助金選びを大きく左右します。設備投資型の大きな補助金は、投資額が一定以上でないと申請そのものができないからです。
2026年度に検討できる3つの補助金
まず、制度名の確認からです。2026年度(令和8年度)は補助金の再編があり、これまでの名称で検索すると古い情報にたどり着いてしまいます。
1. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠
「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は2026年度に統合され、公募要領上の正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。このうち新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。
補助上限は従業員規模別で、1〜20人であれば2,500万円(大幅賃上げ特例の適用時は3,000万円)。補助率は中小企業者で2分の1です。既存の飲食店がデリバリー専門ブランドを新たに立ち上げる、という構図であれば検討の対象に入ります。
2. 小規模事業者持続化補助金
販路開拓と、それとセットで行う業務効率化を支援する制度です。補助率は3分の2、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円がそれぞれ上乗せされ、両方の要件を満たすと最大250万円になります。
対象になるのは小規模事業者で、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)であれば常時使用する従業員が5人以下という基準です。飲食店の多くはこの区分に当てはまります。デリバリーの注文サイト制作やチラシ、SNS広告といった集客の打ち手と相性がよく、ゴーストレストランでは最も現実的な選択肢になりやすい制度です。
3. デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
旧IT導入補助金です。事務局に登録されたITツールの導入を支援する制度で、補助上限は通常枠450万円、インボイス枠350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠3,000万円となっています。注文の一元管理システムやモバイルオーダー、キャッシュレス決済まわりの導入が想定される使い道です。
ただし、この制度は事務局に登録されたIT導入支援事業者(ベンダー等)の支援を受けて申請する前提で、導入するツールも登録品であることが求められます。また、新規事業の立ち上げそのものを支える性格の制度ではないため、開業投資の主役にはなりにくい点は押さえておいてください。
開業費用100万〜300万円の規模で起きる「下限割れ」
ここが、ゴーストレストランの補助金選びで最初につまずくポイントです。
新事業進出枠には、補助上限だけでなく補助下限750万円が設定されています。補助率が2分の1ですから、750万円の補助を受けるには補助対象経費が1,500万円程度必要になる計算です。クラウドキッチンを借りて100万〜300万円で立ち上げる規模とは、ひと桁近い開きがあります。
「ゴーストレストランには新事業進出補助金がおすすめ」と書かれた記事は少なくありませんが、この下限に触れているものはほとんど見かけません。自社の設備投資が数百万円にとどまるなら、新事業進出枠は最初から選択肢から外し、持続化補助金やデジタル化・AI導入補助金で組み立てるほうが現実的です。
逆に、複数ブランドを同時に立ち上げる、自社でセントラルキッチンを構える、といった投資規模になるのであれば、新事業進出枠が視野に入ってきます。判断の分かれ目は「何を作るか」ではなく「いくら投じるか」です。
開業前だと使えない制度がある
もう一つ、見落とされがちな条件があります。
新事業進出枠は、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外とされており、最低1期分の決算書が必要です。つまり「これからゴーストレストランで独立する」という段階では申請できません。既存の飲食店が新しく立ち上げる場合の制度、と理解しておくのが正確です。
小規模事業者持続化補助金も、申請時点で未開業の創業予定者は対象になりにくい形態として挙げられています。開業の資金そのものを補助金で用意するという発想ではなく、開業したあと、売り方を広げるために使うと考えたほうが実態に合います。
開業時点の資金は融資で確保し、走り出してから補助金で販路開拓を上乗せする。この順番のほうが、資金計画としても無理がありません。
持続化補助金で見落としやすい経費区分の上限
ゴーストレストランで持続化補助金を使う場合、支出の中心は注文Siteの制作やネット広告になりがちです。ここに第20回公募で明確化された制約があります。
- 広報費:補助金交付申請額の上限は30万円(税込)。広報費のみの申請は不可
- ウェブサイト関連費:補助金交付申請額の上限は30万円(税込)。ウェブ関連費のみの申請は不可
チラシやSNS広告は広報費、注文サイトやECサイトの制作はウェブサイト関連費に入ります。どちらも30万円で頭打ちになるうえ、その区分だけで申請を組むことができません。上限いっぱいを狙うなら、厨房備品などの機械装置等費や、店舗まわりの委託・外注費を計画に組み込む必要があります。
あわせて、キッチンカーを含む車両は原則として対象外である点、単価50万円(税抜)を超える機械装置等は2者以上の相見積が必要な点も、計画段階で押さえておきたいところです。
スケジュールを逆算する
補助金は、申請すればすぐ入金されるものではありません。2026年7月時点で公表されているスケジュールは次のとおりです。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回):公募2026年6月29日、締切2026年10月30日18時、採択発表2027年1月頃
- 小規模事業者持続化補助金(第20回):申請受付開始2026年11月5日、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切2026年12月4日、申請締切2026年12月15日17時、採択発表2027年3月頃、事業実施期限2028年3月31日
持続化補助金では、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、この発行依頼の受付締切を過ぎるといかなる理由でも発行されません。窓口には余裕をもって相談してください。
そして全制度に共通する原則が、交付決定前の発注・契約・支払は対象外ということです。採択の通知が届いただけでは事業を始められません。「先に発注してしまったので補助対象から外れた」という取りこぼしは、実務で最も多い失敗のひとつです。開業日を先に決めている場合は、補助金のスケジュールと合うかどうかを必ず確認しておきましょう。
なお、いずれの制度も電子申請でGビズIDプライムのアカウントが必要です。取得には日数がかかるため、検討を始めた時点で手続きしておくと安心です。
よくある質問
自宅の厨房で始めるゴーストレストランでも補助金は使えますか
制度上、自宅開業だから対象外という定めがあるわけではありません。ただし、住居部分と事業部分の区分があいまいだと、対象経費の切り分けで説明を求められることがあります。何を事業用として計上するのかを、見積書や図面のレベルで整理しておくと進めやすくなります。
複数の補助金を同時に使えますか
制度をまたいで申請すること自体は可能ですが、同じ経費を複数の補助金で受け取ることはできません。国や公的制度との二重受給は対象外と明記されています。厨房設備はこの制度、販促はこの制度、と経費をきれいに分けて計画を組む必要があります。
事業計画書は専門家に作ってもらえますか
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画は申請者自身が作成することとされており、外部への丸投げは不採択や採択取消の対象になります。相談や助言を受けながら、自社で書き上げるという進め方が前提です。
まとめ
ゴーストレストラン・クラウドキッチンの補助金選びは、業態そのものより投資規模と事業者の状態で決まります。
- 投資が数百万円規模なら、補助下限750万円の新事業進出枠は現実的ではありません
- 新事業進出枠は創業後1年未満の事業者が対象外。開業前の資金には使えません
- 持続化補助金は広報費・ウェブサイト関連費がそれぞれ30万円(税込)上限で、その区分のみの申請はできません
- 交付決定前の発注・契約・支払は対象外。開業スケジュールとの整合を先に確認してください
補助金の情報は年度ごとに更新され、制度名や要件も変わります。本記事の内容は2026年7月時点のものですので、申請の際は必ず最新の公募要領で確認してください。どの制度が自社の計画に合うのか、融資と組み合わせるならどんな順番がよいのかは、事業計画とセットで考えると判断しやすくなります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























