
カフェのフランチャイズで資金繰りが詰まるのは、内装の元金返済が乗る月です
カフェのフランチャイズ加盟店が資金繰りで詰まる月を12か月の数字で特定する
カフェのフランチャイズに加盟して開業し、半年から1年ほど経った頃に「売上は開店当初と大きく変わっていないのに、口座の残高だけが減っていく」という相談をいただくことがあります。この時期に起きているのは、売上が落ちたことではなく、借入の元金返済が月々の支払いに乗り始めたことです。
内装や設備に充てた資金は、開業前に借りた時点で返済の条件が決まっています。一方で、売上が安定するまでの立ち上がりは、開業してからの商売の動きで決まります。この二つは別々の理屈で動くため、返済が乗る時期と売上が薄い時期が重なることがあります。この記事では、その重なりを自店の数字で先に見つける手順を整理します。なお、制度や利率は変わりやすいため、以下は執筆時点の情報として読んでください。
詰まるのは「売上が落ちた月」ではなく「元金が乗った月」です
資金繰りが苦しくなった月を振り返ると、売上が前月から大きく落ちているとは限りません。同じ売上でも、その月から出ていく額が増えていれば手元は薄くなります。増えた分の正体が、据置期間が明けて始まった元金の返済です。
元金返済の据置は、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合で5年以内という枠が示されています。据置の間は利息のみの支払いとなり、据置が明けた月から元金が加わります。つまり、支払額が段階的に上がることは借入の時点で決まっており、売上の状況とは無関係にその月が来ます。
返済が始まる時期は、自分で動かせる前提で考えない
ここで誤解が生まれやすいのが、据置期間や返済期間を自分の資金繰りに合わせて決められる、という受け取り方です。制度上の枠としては、新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間は設備資金で20年以内、運転資金で10年以内、据置期間はいずれも5年以内とされています。
ただし、これは上限を示した枠であって、選択肢ではありません。実際に適用される利率・据置期間・返済期間は、審査のうえ金融機関が決定します。希望を申込時に伝えることはできますが、決めるのは金融機関の側です。
そのため、これから調べるべきは「据置をどう設定するか」ではなく、すでに決まっている条件が返済予定表にどう書かれているかです。記憶ではなく、手元の返済予定表で月ごとの金額を確かめます。
内装と運転資金は別々の条件で、乗る時期も額も分かれます
カフェのフランチャイズでは、本部の仕様に沿った内装工事や厨房設備の費用がまとまった額になります。この部分は設備資金にあたり、日々の仕入や人件費に充てる運転資金とは資金使途が分かれます。上に挙げたとおり、返済期間の枠も設備資金と運転資金では異なります。
借入が複数本ある場合、月々の支払いを合計額でしか把握していないと、どの本の元金がいつ乗るのかが見えません。設備資金の据置と運転資金の据置が同じ月に明けるとは限らないため、支払額が上がる月が2回に分かれることもあります。返済予定表を本ごとに開き、月ごとの元金と利息を分けて並べると、この段差が見えます。
売上の谷は、返済の始まりとは別の理由で来ます
開業直後は、新しい店ができたことを知って来店される方の比率が高くなります。その来店が一巡したあと、繰り返し来てくださる方の層が固まるまでの間に、月の売上が開店当初を下回る期間が生まれることがあります。どのくらいの深さで、どのくらい続くかは立地と業態で変わるため、他店の数字を当てにせず自店の月次で見ます。
この谷がいつ来るかは商売の側の話で、返済が乗る月とは無関係に決まります。両方が重なった月に、手元の現金がいちばん薄くなります。
3つの数字を12か月で並べて、重なる月を先に出します
次の手順で、自店の12か月を1枚に並べます。開業から日が浅く12か月分そろわない場合は、そろっている月数だけで構いません。
- 返済の予定額を並べる:返済予定表から、月ごとの元金と利息の合計を書き出します。借入が複数本あれば本ごとに行を分け、最後に合計します。ここで元金が乗り始める月に印を付けます。
- 月次の売上と粗利を並べる:売上高と、そこから食材費など売上に連れて動く費用を引いた残りを月ごとに置きます。
- 売上に連れて動かない支払いを並べる:家賃、本部への支払いのうち定額の部分、リースの賃貸借費用、常時いてもらう方の人件費など、売上が減っても同じ額で出ていくものを月ごとに置きます。
- 差額を出す:②の粗利から③と①の合計を引きます。この差額がマイナスになる月が、手元から現金が出ていく月です。
この4行を並べると、「元金が乗る月」と「粗利が薄い月」が同じ列に来ているかどうかが一目で分かります。重なっていれば、その月の不足額まで具体的な金額として出てきます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
「内装は本部の指定だから金額は動かせないのでは」というご質問をよくいただきます。審査する側は、その設備が事業に本当に要るのかを見ています。リースや中古品に置き換えられるものは、そちらでよいと判断されることもあります。一式でまとめず、何を借入で持つのかを分けて説明できるかどうかが、後で返す額の側に効いてきます。
リースで持っている設備は、返済とは別に出ていきます
厨房機器や券売機をリースで導入している場合、その賃貸借費用は借入の返済とは別に毎月出ていきます。上の③に入れ忘れると、不足額を実際より小さく見積もることになります。
リースには初期費用を抑えられる面がある一方で、次のような点があります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
融資とリースのどちらが自店に合うかは、資産の考え方や資金繰りの状況によって変わります。賃貸借費用の負担も含めて、税理士や金融機関に相談しながら判断していく形になります。
薄くなる月が見えたら、何を持って相談するか
不足が出る月が分かったら、その月が来る前に動けるかどうかで選べる手が変わります。日本政策金融公庫の場合、書類を提出してから融資実行までの目安はおおむね3週間から1か月、準備を含めると合計で2か月程度を見ておくと余裕があります。
すでに開業している段階では、決算書または試算表が実在する材料になります。計画どおりに推移していれば計画の実現可能性の裏づけになり、乖離が続いていればその理由の説明を求められます。決算をまだ迎えていない時期であれば、試算表や月次の売上推移が同じ役割を果たします。上の4行の表は、そのまま月次の推移を示す資料になります。
あわせて、資金使途と調達額の整合も見られる項目です。何にいくら使い、どこから返すのかを自分の数字で言える状態にしてから、取引のある金融機関に相談する順序になります。
まとめ
カフェのフランチャイズで資金繰りが詰まる月は、売上が落ちた月ではなく、内装や設備に充てた借入の元金が支払いに乗った月と、売上が薄い月が重なったところに現れます。返済の条件は借りた時点で決まっており、審査のうえ金融機関が決定したものなので、後から自分で動かす前提では組み立てられません。
手を動かす順序としては、返済予定表・月次の粗利・売上に連れて動かない支払いの3つを12か月で並べ、差額がマイナスになる月を出すところからです。金額が出ていれば、相談する相手にも同じ数字で話ができます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























