
中小企業の補助金、2027年度はこう変わる|概算要求4,435億円の3事業を解説
経産省の2027年度予算要求の報道から読む、中小企業向け補助金3つの方向性
2026年8月、経済産業省は2027年度予算の概算要求を公表しました。中小企業のデジタル化設備の導入や事業承継を支援する補助金事業に、総額4,435億円を求める内容です。今後の設備投資や事業承継を検討している経営者にとって、「自社にどの制度が関係しそうか」を早めに把握しておくことは意味があります。この記事では、報道で明らかになっている3つの補助事業を軸に、現行制度の内容と2027年度に向けた変化の方向性を整理します。
2027年度概算要求の全体像:4,435億円・3つの補助事業
経済産業省が2027年度予算の概算要求で示したのは、次の3つの補助事業への予算要求です。
- 省力化・デジタル化・AI投資補助金(現行の「デジタル化・AI導入補助金」と「中小企業省力化投資補助金」を一本化する方針)
- 小規模事業者持続化補助金
- M&A(合併・買収)・事業承継補助金
この3事業への予算要求の合計が4,435億円です。ここで押さえておきたいのは、これは2026年8月時点の「概算要求」であり、正式に決定した予算ではないという点です。概算要求はこのあと財務省との折衝を経て予算案としてまとめられ、例年であれば12月下旬に閣議決定、翌年1〜3月の通常国会で審議されたうえで3月末までに成立するという流れをたどります。予算成立後、4月以降に各補助金の公募が順次始まるのが通常のスケジュールです。つまり、現時点でわかっているのは「経産省がどの方向に予算を求めているか」までで、上限額や対象経費などの制度の詳細は、公募要領が公開されるまで確定しません。
方向1:省力化・デジタル化・AI投資補助金——現行2制度の一本化
1つ目の方向は、現行の「デジタル化・AI導入補助金」と「中小企業省力化投資補助金」を一本化し、2027年度から統合して募集するという方針です。まず、統合の土台になる現行2制度の内容を押さえておきましょう。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、事務局に登録されたITツールの導入を支援する制度で、通常枠の補助上限は450万円、インボイス枠は350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠は3,000万円です。対象経費はソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、設定・研修・マニュアル作成・保守サポートなどの導入関連費、セキュリティ対策関連費用、インボイス対応に必要なツールやハードなどです。
中小企業省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型の2つの区分があります。カタログ注文型は、公的に登録された省力化製品を導入する即効性重視の制度で、補助上限は大幅賃上げ計画を盛り込む場合で1,500万円です。カタログに登録された製品が対象で、中小企業等が販売事業者と共同で申請することが前提となり、単独申請は原則できません。カタログに載っていない設備やオーダーメイド系の機器は、この区分の対象にはなりません。一般型は、事業内容やレイアウトに合わせたオーダーメイド性のある設備投資を支援する制度で、補助上限は1億円です。対象になるのは、汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果を生む場合や、導入環境に応じて周辺機器や搭載機能が変わる場合などで、単に汎用設備を単体で導入するだけでは対象になりません。
2027年度は、この2制度が一本化されて募集される方針が経産省の概算要求で示されています。統合後の名称は「省力化・デジタル化・AI投資補助金」とされていますが、これは2026年8月時点では概算要求段階の呼称であり、正式に決定した制度ではありません。統合後の補助上限額や枠構成といった詳細は、現時点では公表されていません。
あわせて押さえておきたいのが、消費税との関連です。政府は2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる方針です。小売店や飲食事業者はレジ対応が必要になりますが、経産省はこの対応を後押しする形で、タブレットやスマートフォンをレジとして活用する「スマートレジシステム」の導入を、デジタル化・AI導入補助金の枠内で2026年6月から優先的に採択しています。税率変更への対応と生産性向上を同時に進められる制度として、小売・飲食業の経営者は動向を追う価値があります。
方向2:小規模事業者持続化補助金——拡充の方向性が示される
2つ目の方向は、小規模事業者持続化補助金です。この制度は既に現行制度として存在しており、内容は確定情報として押さえられます。補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)、補助上限は基本50万円で、インボイス特例で50万円上乗せ(最大100万円)、賃金引上げ特例で150万円上乗せ(最大200万円)、両特例を併用すると200万円上乗せ(最大250万円)まで広がります。対象となる小規模事業者は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)が常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業や製造業その他は20人以下です。
対象経費は、店舗備品などの機械装置等費、チラシや広告掲載などの広報費、ウェブ・ECサイト制作などのウェブサイト関連費、展示会等出展費、販路開拓のための旅費、試作品などの新商品開発費、借料、委託・外注費と幅広く設定されています。ただし広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)と定められており、いずれもその経費区分のみの申請はできません。また、公募要領では「国が助成するほかの制度を利用している事業と重複する経費」を補助対象外と定めており、具体例として保険適用診療にかかる経費が明記されています。薬局や整骨院、鍼灸院等が保険診療で使用する機械や、保険診療の宣伝を兼ねるチラシなどは、経費区分にかかわらず対象外です。このほか医師・歯科医師・助産師や、医療法人・宗教法人・学校法人・農事組合法人・社会福祉法人・一般社団財団法人・公益社団財団法人なども対象外とされています。
2027年度予算の概算要求では、この持続化補助金も3事業の一つとして計上されています。ただし報道で明らかになっているのは予算計上の事実までで、上限額の変更や新しい枠の新設といった拡充の詳細は現時点で示されていません。拡充の方向性は示されているものの、詳細は不明という段階にとどまります。
方向3:M&A・事業承継補助金——新設・拡充の方針のみ判明
3つ目の方向は、M&A(合併・買収)・事業承継補助金です。この名称は現行の確定した補助金制度としては存在せず、2027年度予算の概算要求で経産省が示した補助事業の呼称です。報道でわかっているのは、経産省が中小企業の事業承継を支援する補助事業として予算を求めているという方針のみで、対象経費や補助上限額、申請要件などの詳細は一切明らかになっていません。事業承継やM&Aを検討している経営者にとって気になる動きですが、現時点で確定的に言えるのは「事業承継支援の補助事業に予算が求められている」という事実にとどまります。詳細は公募要領の公開後に確認しましょう。
💬 執筆者の三浦から一言
審査する側にいたころの感覚では、補助金は名前の新しさより投資規模と投資目的で選ぶほうが早いです。今回の3方向も同じで、統合後の新名称に注目が集まりがちですが、実際に動けるかどうかは自社の投資がIT・省力化寄りか、販路開拓寄りか、事業承継寄りかで見極めるのが先だと思います。
今、経営者が取るべき行動
3つの方向を踏まえると、経営者が今できることは2つあります。1つは、自社の投資計画がどの方向に近いかを棚卸しすることです。IT導入や省力化設備への投資を考えているなら方向1、販路開拓や広報・EC整備を考えているなら方向2に関係が近く、いずれも現行制度(デジタル化・AI導入補助金、中小企業省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金)は既に申請可能です。統合や拡充を待たずに、現行制度での申請を先に検討できる場合は少なくありません。もう1つは、統合後の省力化・デジタル化・AI投資補助金やM&A・事業承継補助金のように、名称と方向性しか示されていない制度は、上限額や対象経費を前提にした投資計画を今組まないことです。12月の予算案決定、年明けの国会審議といった節目で情報が更新されるため、動きがあるたびに公式情報を確認する姿勢が実務的です。
まとめ
2027年度予算の概算要求では、経産省が中小企業向けの補助金事業に4,435億円を求め、その内訳は省力化・デジタル化・AI投資補助金(現行2制度の一本化)、小規模事業者持続化補助金(拡充方針)、M&A・事業承継補助金(新設・拡充方針)の3事業でした。現行制度として既に存在するデジタル化・AI導入補助金、中小企業省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金は、内容が確定しているぶん今すぐ検討に移せます。一方、統合後の新制度やM&A・事業承継補助金は方針が示された段階にとどまるため、詳細が判明するタイミングを見極めながら投資計画に組み込んでいくのが現実的です。
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弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























