
冷凍食品の新商品を開発するとき、補助金の計画は工程ごとに書き分けます
チルドで卸してきた自社商品とは別に、冷凍でしか出せない新商品を立ち上げたい。そう考えて情報を集め始めると、出てくるのは急速冷凍機や冷凍倉庫といった設備の話ばかりです。機械の見積は取れても、「新しい商品を開発する」という取組そのものが補助金の側からどう見られるのかは、あまり書かれていません。
この記事では、2026年度に統合された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を軸に、冷凍食品の新商品開発を4つの工程に割って、それぞれがどの経費区分に落ちるのかを整理します。数字は公募要領1.0版(令和8年6月)に基づく2026年8月時点の内容です。
新商品の開発は、機械を買う話とは別の場所で見られます
はじめに制度の呼び方を整理します。従来「ものづくり補助金」と呼ばれてきた制度と新事業進出補助金は、2026年度に統合されました。公募要領上の正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で、この中に革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠が置かれています。冷凍食品の新商品開発でまず候補になるのは、前者の革新的新製品・サービス枠です。
革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組を対象にしています。裏返すと、新製品・新サービスの開発を伴わない単なる設備・システム導入は対象になりません。既存製品・サービスの生産等プロセス改善も、この枠では対象外とされています。
一方で、設備投資そのものは要件に入っています。機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上のものが対象で、この区分が必須かつ主軸という位置づけです。機械を買うことは要件の一部であって、それだけでは足りない、という構造になっています。
そこで効いてくるのが、開発の中身を工程に割って書くことです。冷凍食品の開発は、配合を決めた時点では終わりません。凍らせて、運んで、解凍したあとに、狙った状態になっているかどうかまでが開発の範囲に入ります。工程に割ると、どの費用がどの経費区分に落ちるのかも同時に見えてきます。
開発を4つの工程に割ると、経費の置き場所が決まります
工程1:配合と仕様を決める
冷凍を前提にすると、常温やチルドで出してきたものと同じ配合では狙った品質にならない場合があります。水分の抜け方、油脂の分離、食感の変化をどう抑えるかを決める工程で、ここで使う材料は原材料費として計上できる区分です。原材料費は対象経費の「その他」に位置づけられており、試作に使い切った分が対象という考え方になります。棚に残る在庫の仕入れとは扱いが変わりますので、試作何回分をどれだけ使うのかを先に決めておくと、見積の作り方が変わります。
工程2:凍らせ方を決める
凍結の速度と温度帯をどう設定するかは、商品の仕上がりを左右する条件です。この工程で導入する凍結機や周辺機器が、機械装置・システム構築費に入ります。単価10万円(税抜)以上という線があるため、小物の付属品を単体で並べても区分に乗りません。あわせて、機械の仕様は工程1の配合が固まらないと決められない、という順番も出てきます。先に機械の型番だけが決まっている状態だと、開発の中身を説明しづらくなります。
工程3:解凍したあとの状態を確かめる
4つの工程のうち、計画から抜けやすいのがここです。冷凍食品は、お客様の手元で解凍されてはじめて商品になります。自然解凍なのか、加熱調理を前提にするのか、業務用として厨房で戻すのかによって、狙うべき仕上がりも、そこに至る凍結条件も変わってきます。
この工程の多くは自社の作業として進むため、大きな費用が乗るとは限りません。それでも、開発計画には解凍の条件と評価の方法を書いておくほうが、何を開発したのかが伝わります。評価の一部を外部に依頼する場合、その費用は外注費の区分になりますが、外注費は補助対象経費総額の4分の1が上限で、事業の主たる内容の外注は認められていません。開発の中心は自社に置く、という前提で組み立てます。
工程4:日持ちの根拠を取る
冷凍で売る以上、どれだけ日持ちするのかを自社で決めることになります。その根拠となるデータを取る工程で、保存の状態を追った試験や、外部の検査機関への依頼が出てきます。検査機関への依頼分は外注費、専門家に助言を受ける分は専門家経費として整理できます。専門家経費は補助対象経費総額の5分の1が上限で、1日1人あたり5万円という単価の目安が置かれています。
この工程は結果が出るまでに時間がかかります。開発の最後にまとめてやろうとすると、補助事業の期間の終わりに寄ってしまいますので、工程2と並行で走らせる前提にしておくと計画に無理が出にくくなります。
枠の分かれ目は、開発の位置づけと投資額の下限にあります
4つの工程を書き出したら、どちらの枠で出すかを決めます。判断材料は2つで、開発の位置づけと、投資額です。
革新的新製品・サービス枠は、補助下限が100万円です。補助上限は従業員規模で分かれており、1〜5人が750万円、6〜20人が1,000万円、21〜50人が1,500万円、51人以上が2,500万円です。大幅賃上げ特例を適用した場合は各850万円、1,250万円、2,500万円、3,500万円まで上がります。よく見かける「最大3,500万円」は、最大の従業員規模で特例を適用したときの数字ですので、自社の規模で読み替えてください。補助率は中小企業者が2分の1、小規模企業・小規模事業者・再生事業者は3分の2です。
新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。補助下限が750万円と高く、既存製品の増産や単なる製法変更、単なるメニュー追加は「新事業進出」に該当しないとされています。既存の主力商品を冷凍で出すという企画は、既存事業の延長として読まれる余地がありますので、その場合は革新的新製品・サービス枠のほうが素直に収まります。逆に、これまで取引のなかった市場に向けて商品も売り方も新しく立ち上げるのであれば、新事業進出枠が候補に入ります。
💬 執筆者の三浦から一言
審査する側にいたころから見ていて、開発の計画は日程の数字で決まる部分が大きいと感じています。第1回公募は2026年9月30日18時が締切で、採択発表は2026年12月頃です。革新的新製品・サービス枠の補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内ですので、試作を何回まわせるかは締切からではなく交付決定日から数えると、現実的な線が見えてきます。
計画を作る前に決めておきたいこと
枠が決まったら、書き始める前に次の3つを確認しておくと手戻りが減ります。
- 発注のタイミング:交付決定前の発注・契約・購入は対象外です。凍結機の商談が進んでいる場合、どの時点で発注をかけるかを先に決めておきます。
- 計画を書く人:事業計画は申請者自身が作成することが求められています。工程1から工程4までの中身を自社で説明できる状態にしておきます。
- 基本要件の数字:付加価値額は事業計画期間で年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額は年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金は地域別最低賃金プラス30円以上の水準が求められます。未達の場合は返還の対象になります。
この3つは、開発の中身がどれだけ良くても後から動かしにくい部分です。工程を割る作業と同じタイミングで、社内で決めてしまうほうが進めやすくなります。
まとめ
冷凍食品の新商品開発を補助金で進めるときは、機械の見積から入るのではなく、開発を配合・凍結・解凍・日持ちの4工程に割るところから始めると、対象経費の置き場所と枠の選び方が同時に決まります。革新的新製品・サービス枠は補助下限100万円で既存事業の延長にある開発に向き、新事業進出枠は補助下限750万円で新しい市場に向けた立ち上げに向きます。
制度の要件や数字は公募回ごとに見直されますので、申請の前には最新の公募要領で確認してください。工程の割り方や枠の選び方に迷う場面がありましたら、開発の中身をうかがったうえで一緒に整理できますので、お気軽にご相談ください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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