
経営改善計画書、金融機関はどこを見ているか|数字の根拠を示す実務ステップ
業績が悪化し、返済条件の見直しや条件変更を金融機関に相談する場面では、経営改善計画書の提出を求められることがあります。作成の様式そのものは書籍やひな形でも確認できますが、実務で悩みやすいのは、何をどこまで書けば金融機関の担当者に伝わる内容になるのか、という点です。この記事では様式の説明ではなく、金融機関が計画書のどこに目を通しているかという視点から、押さえておきたい構成と数字の考え方を整理します。
経営改善計画書を金融機関が見るときの視点
経営改善計画書は、今後の意気込みを示すだけの書類ではありません。金融機関の担当者は、現状の数字と改善策、改善策を実行した結果として見込まれる数字が、それぞれつながっているかどうかを確認しながら読んでいます。現状分析・改善策・数値計画・資金繰り表という各パーツが個別に並んでいるだけの計画書は、読み手にとって数字の根拠が追いにくくなります。各パーツのつながりを意識して書くことが、金融機関に伝わりやすい計画書の土台になります。書式や記載項目そのものは、金融機関や支援機関ごとに多少異なりますが、この「数字のつながり」という視点はどの様式にも共通します。
STEP1 現状分析|業績悪化の実態を数字で示す
最初のステップは現状分析です。売上高・原価率・固定費といった数字の推移を、直近数期分並べて示すところから始めます。業績悪化の要因についても、一般的な景況感の説明にとどめず、主要取引先の取引量の変化、特定商品の販売数量の推移、原材料費の上昇分を価格に転嫁できていない状況など、自社の数字に結びつく形で言葉にしていきます。数年にわたり事業を続けてきた会社であれば、決算書や試算表の実績が現状分析の裏付けになります。良い年の実績も、業績が落ち込んだ年の実績も、どちらも計画の裏付けとして扱うことができます。業績が落ち込んだ年についても、要因を数字で説明できる状態にしておくと、続く改善策との結びつきが伝わりやすくなります。
STEP2 改善策|誰が・いつまでに・何をまで具体化する
現状分析で洗い出した課題に対して、改善策を組み立てる段階です。ここで意識したいのは、抽象度をどこまで下げられるかという点です。「経費を見直す」という書き方だけでは、何をいつまでにどの程度行うのかが読み手に伝わりません。特定の固定費項目について、翌期の上半期中に見直しの交渉を進め、年間でどの程度の圧縮を見込むか、というところまで担当・時期・内容を分けて書くことで、計画としての実現可能性が伝わりやすくなります。売上面の改善策も同様に、新規取引先の開拓、既存取引先への提案強化、価格改定などを個別の施策として分け、それぞれに時期を添えると、読み手が進捗を追いやすい計画になります。改善策を実行する担当者を明記しておくと、進捗確認の場面でも話がしやすくなります。
STEP3 数値計画|売上・原価・返済原資の根拠を示す
改善策を数字に落とし込むのが数値計画です。ここでのポイントは、売上や原価の数字が改善策のどこから導かれたのかを示すことです。改善策と切り離された数値目標だけを並べると、その数字がどこから出てきたのかを担当者から確認される場面が出てきます。金融機関が特に見ている点の一つが返済原資です。損益計画上の利益がどの程度キャッシュフローとして残り、既存の返済に充てられる原資になるのか、という流れを示すことで、計画の実現可能性が伝わりやすくなります。数値計画の組み立てには会計処理や税務上の取り扱いに関わる部分も含まれるため、具体的な数字の算出方法や税務上の扱いについては、税理士など専門家に相談しながら進める場面も出てきます。
💬 執筆者の小峰から一言
「数値計画は細かく作り込むべきですか」という質問をよく受けます。信用金庫で融資を出す側にいたころの感覚では、桁の細かさよりも、その数字がどの改善策から出てきたのかを説明できるかどうかを見ていました。数字の出どころを言えない計画は、面談で聞かれやすい部分だと感じます。
STEP4 資金繰り表との整合性チェック
数値計画ができたら、資金繰り表と突き合わせて整合性を確認します。損益計画上は利益が出ている月でも、入金と出金のタイミングによっては資金繰り表上で資金が不足する月が生じることがあります。反対に、資金繰り表だけを見ると資金繰りに余裕があるように見えても、損益計画と前提が矛盾していれば、担当者から確認される可能性があります。売上の入金時期、仕入や経費の支払時期、既存の返済スケジュールが噛み合っているかを、二つの書類を並べて確認する作業は、計画書を提出する前に済ませておきたい工程です。年度をまたぐ資金繰り表を作る場合は、季節による売上の波も反映させておくと、数値計画との整合性がより確認しやすくなります。
評価が下がりやすい書き方の共通点
経営改善計画書のなかには、改善策の記載が「経費削減」「営業強化」といった一言でまとめられており、数値計画とのつながりが読み取れないものがあります。数字だけを見ても、その数字がどの改善策から生まれたのかが分からない計画書は、担当者にとって説明を求めやすい対象になります。また、損益計画と資金繰り表を別々の担当者や別々のタイミングで作った結果、前提条件が食い違っているケースも見られます。売上の伸び方や入金サイトの前提を、両方の書類で揃えておくことが、計画全体の一貫性につながります。加えて、過去の決算実績と数値計画の間に大きな乖離があるにもかかわらず、その乖離について説明が添えられていない計画書も見られます。実績と計画のギャップは、悪い方向であっても良い方向であっても、その理由を数字とともに書き添えることで、計画全体の信頼性につながります。
STEP5 提出時の心構え|計画は対話の材料になる
計画書は提出して終わりではなく、その後の金融機関とのやり取りの材料として使われる場面が続きます。計画どおりに進捗しているかどうかは、その後の面談などで確認されるのが一般的です。計画と実績に差が出た場合も、その差がなぜ生じたのかを自分の言葉で説明できる状態にしておくことで、金融機関との関係を続けやすくなります。金融機関は、事業計画の具体性や数値計画の根拠、資金使途と調達額の整合性、これまでの実績など複数の観点から計画を見ているため、どれか一つの数字だけを整えれば足りるものではありません。
まとめ|構成を押さえて金融機関に伝わる計画書に
経営改善計画書は、現状分析・改善策・数値計画・資金繰り表という各パーツを、数字でつなげて書けるかどうかが伝わりやすさを左右します。自社だけで数値計画や会計処理の詳細まで組み立てるのが難しい場合は、税理士など専門家に相談しながら進める方法もあります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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