
信用金庫・地方銀行への融資相談で資料をそろえる前に決めておくこと
開業から1年前後が経ち、運転資金や設備資金の相談で信用金庫や地方銀行の窓口へ行こうとしている方に向けて、資料を集め始める前に整理しておきたい判断を、質問形式でまとめました。創業時に融資を借りた方も、借りずに自己資金だけで開業した方も、今回は「創業後の実績がある状態」からの相談になります。必要書類を一つずつ数えるより先に、何がどう見られるのかという前提をそろえておくと、資料集めの手戻りが減ります。「とりあえず言われた書類を全部そろえてから相談する」という進め方は、実は遠回りになりがちです。資料の中身は、これから決める内容によって変わってくるからです。
Q1. 創業時に融資を借りたときと、今回そろえる資料は同じですか
同じではありません。創業前の相談では、事業の実績がまだ無いため、事業計画の具体性や自己資金の形成過程で説明を厚くする必要があります。一方、開業してから1年前後が経った今回は、決算書または試算表がすでに存在する段階です。これらは実在する評価材料として扱われます。計画どおりに数字が推移していれば、事業計画の実現可能性を裏づけるプラスの材料になりますし、逆に赤字や計画との乖離が続いていれば、その理由を説明できるように準備しておく必要があります。実績は良い面にも説明が必要な面にも働く材料だと考えておくと、資料の持ち込み方を決めやすくなります。まだ決算を迎えていない開業直後の場合は、試算表や月次の売上推移が決算書と同じ役割を果たします。
Q2. 何を借りるか(制度・使いみち)を決める前に、資料をそろえ始めてよいですか
先に決めておくことをおすすめします。信用金庫や地方銀行に相談する場合でも、その金融機関独自の融資として申し込むのか、信用保証協会の保証を付けた形で申し込むのかによって、そろえる資料の中身が変わってきます。また、資金使途が設備資金なのか運転資金なのかによっても、必要になる見積書や根拠資料の種類が変わります。「まず資料を全部そろえてから相談する」という順番ではなく、「何のために、いくら、どの資金使途で借りたいのか」という骨格を先に固めてから、その骨格に合わせて資料をそろえる順番のほうが、結果的に無駄が少なくなります。骨格が定まっていない段階で書類だけを厚く積み上げても、窓口で「何にいくら必要なのか」を聞かれたときに説明がぶれてしまい、資料を出し直すことにもなりかねません。迷う場合は、資料集めに入る前の段階で一度窓口に相談し、その金融機関で扱っている制度の枠組みを確認しておくとよいでしょう。
Q3. 自己資金として見せる口座は、残高が多ければよいですか
残高の多さだけで判断されるものではありません。制度上、自己資金の額や割合について固定の要件は決まっていませんが、自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすいとされています。あわせて見られるのは、そのお金をどう貯めてきたかという形成過程です。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておくのが基本です。また、創業前に自費で取得した資格や、業務に使う設備・備品の購入費用、テストマーケティングにかけた費用などは、一定範囲で「みなし自己資金」として評価されることがあります。該当しそうな支出がある場合は、領収書を保管しておいてください。
Q4. 見積書は、資金使途ごとに何を合わせておけばいいですか
設備資金であれば導入する設備の見積書、運転資金であれば仕入や人件費など実際にかかる費用の根拠資料というように、資金使途と調達額の整合が取れているかどうかが判断材料の一つになります。運転資金の対象については、人件費や役員報酬は事業活動に必要な経費として対象になります。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提なので、個別の支出が対象になるかどうか判断に迷う場合は、申込先や専門家に確認しながら整理するとよいでしょう。見積の金額は、必要な範囲で過不足なく積み上げることが基本で、根拠のあいまいな上乗せは説明を求められる原因になります。見積書の日付が古い場合や、複数業者の見積を比較していない場合も、金額の根拠として弱く見えやすいので、相談の直前にもう一度内容を見直しておくと安心です。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
見積は、まず必要なものだけを積み上げる順番で考えてください。先に大きめの金額ありきで組んでしまうと、内訳の説明を求められたときに答えづらくなります。多めに見積もって余裕を持たせようとするより、緻密に積み上げた見積のほうが、資金使途との整合も伝わりやすく、結果として話が早く進みます。
Q5. 前回の借入が残っている場合、返済状況はどう扱われますか
既往の借入と、その返済状況は確認される材料の一つです。審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。信用情報には、借入状況や返済の遅延、税金や公共料金の未納なども含まれます。前回の借入を延滞なく返済できていることは、資料として特別に何かを新しく用意するというより、通帳や返済予定表など、すでに手元にある資料で示せる範囲の話です。複数の借入がある場合は、それぞれの残高や返済状況を自分の中で整理しておくと、窓口での説明がスムーズになります。延滞が心当たりにある場合は、そろえる資料を考える前に、現状を確認しておくことをおすすめします。
Q6. 開業してから決算・試算表が無い月がある場合、どう補えばよいですか
創業融資だからといって、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。開業してからまだ決算を迎えていない期間がある場合は、試算表や月次の売上推移が決算書と同じ役割を果たします。月次の数字は毎月更新されるものなので、相談の直前に最新の状態にそろえておくと、窓口での説明とのずれが出にくくなります。すでに決算が済んでいる会社があるなら、その内容も踏まえて説明できるように整理しておくと安心です。判断は個別の状況によって変わるため、詳細は申込先や専門家にご確認ください。
Q7. 資料がそろっても、面談の前に確認しておくべきことはありますか
最後に確認しておきたいのは、そろえた資料の内容と、申込む内容そのものに食い違いが無いかという点です。資金使途として説明する内容と、見積書に書かれている金額・用途が対応しているか、決算書や試算表の数字と、これから話す事業計画の数字が矛盾していないかを、資料を出す前に見直しておきましょう。同じ資金使途を説明する資料が複数ある場合は、金額の桁や時点がそろっているかも合わせて確認しておくと、窓口での説明がスムーズになります。個別の書き方や整理の仕方に迷う部分は、申込先の窓口や税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
信用金庫や地方銀行への融資相談は、必要書類を機械的に列挙して集めるより、「今回は創業後の実績がある段階の相談である」「何の資金使途で、どの制度に申し込むかを先に決める」という前提を固めてから資料をそろえたほうが、手戻りが少なくなります。自己資金は額だけでなく形成過程が見られること、決算書や試算表は無い場合でも代わりになる資料があること、既往の借入は返済状況が判断材料の一つになることを踏まえ、資料の中身よりも先に、そろえる順番を決めてから窓口に向かってください。開業から1年前後という時期は、創業前の相談とは見られる材料も説明の仕方も変わる節目です。この記事で挙げた判断を一つずつ確認しながら、無理のない順番で準備を進めてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























