
不動産仲介のフランチャイズ加盟店で、成約から入金までに現金が減る仕組み
不動産のフランチャイズに加盟して数年、媒介の依頼も成約も動いているのに、月末の口座残高が思ったほど残らない。売上の数字と手元の現金がここまでずれるのは、不動産仲介という商売の入金日が、契約書面に書かれた日付で決まっているからです。
不動産仲介は、在庫を仕入れて売る商売とは現金の動き方が違います。売る物件そのものは自店の持ち物ではない一方、預かっている期間の広告費と人の時間は自店が負担します。ここが、売上が立っているのに手元が薄いという状態の出発点になります。
この記事では、成約から報酬を受け取れる日までのあいだに何が起きているのかを、宅地建物取引業法の定めから順に整理します。そのうえで、いま自店が抱えている不足額を帳簿から出すところまでを扱います。
仲介の報酬が現金になる日は、契約書面で決まっています
宅地建物取引業者は、媒介により売買契約が成立したときに、契約の各当事者へ書面を交付しなければならないと定められています(宅地建物取引業法第37条第1項)。この書面の記載事項には「代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法」(同項第3号)、「宅地又は建物の引渡しの時期」(同項第4号)、「移転登記の申請の時期」(同項第5号)が含まれます。
成約した時点で、代金が動く日と引渡しの日は書面の上に出ています。手元が薄くなる期間は感覚の問題ではなく、この日付から逆算して数えられる性質のものです。
入金が遅い分を単価で埋める、という調整もできません。宅地建物取引業者が売買、交換または貸借の代理もしくは媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによるとされ(同法第46条第1項)、その額をこえて報酬を受けてはならないと定められています(同条第2項)。事務所ごとに、公衆の見やすい場所へその額を掲示する義務もあります(同条第4項)。
物件を預かっている期間にも、期限と義務があります
成約に至る前の期間についても、業法が時間の区切りを置いています。専任媒介契約の有効期間は3か月をこえることができず、これより長い期間を定めたときはその期間は3か月とされます(同法第34条の2第3項)。更新は依頼者の申出によりできますが、更新の時から3か月をこえることはできません(同条第4項)。
報告の義務もあります。専任媒介契約では2週間に1回以上、依頼者が探索した相手方以外の者と契約を締結できない旨の特約を含む場合は1週間に1回以上、業務の処理状況を依頼者へ報告しなければなりません(同条第9項)。預かった物件には期限があり、その間は決まった頻度で動きを報告する前提で、人と広告の時間が使われます。
加えて、専任媒介契約を結んだ物件については、有効期間中の売却活動そのものが業法の枠の中にあります。売買または交換の申込みがあったときは遅滞なくその旨を依頼者へ報告しなければならず(同条第8項)、有効期間や報告に関する定めに反する特約は無効とされています(同条第10項)。預かり期間を自店の都合で長く取る、報告を減らして手間を軽くする、といった調整はできない仕組みです。
フランチャイズ加盟店の場合、ここに本部へのロイヤルティや広告の分担金、事務所の賃料、宅地建物取引士を含む人の給与が重なります。これらは成約の件数に連れて増減するものではないため、預かり期間が延びるほど出ていく側だけが積み上がります。
売買と賃貸では、報酬が入るまでの長さが違います
同じ仲介でも、売買と賃貸では現金になるまでの時間が異なります。売買の媒介では、37条書面に記載される代金の支払の時期と引渡しの時期が先に決まり、その日を待って報酬を受け取る流れになります。買主が金融機関から借り入れる場合は、その手続きに要する期間もこの間に入ります。
賃貸の媒介では、貸借に関して交付する書面の記載事項として、借賃の額並びにその支払の時期及び方法、借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときはその額と授受の時期及び目的が挙げられています(同法第37条第2項第2号・第3号)。売買にくらべると入居までの期間が短く、報酬を受け取るまでの時間も短くなります。
自店の売上が売買と賃貸のどちらに寄っているかで、不足が出る月の形は変わります。売買の比率が高い店ほど、一件あたりの金額は大きい一方、その一件が現金になるまでの月数が長くなります。まず自店の構成比を確かめてから、次の手順に進んでください。
預かり期間と入金日を、帳簿の上で並べ直す
資金繰りの相談に持っていく前に、自店の中で次の順に書き出すと、話す中身が変わります。
- いま媒介契約を結んでいる物件を、専任媒介、専属専任媒介、一般媒介に分け、それぞれの有効期間の残り月数を書き出します。
- 売買契約が成立している案件について、37条書面に書かれた代金の支払の時期と引渡しの時期を転記し、報酬を受け取れる日を時系列に並べます。
- その日までの各月に、件数と連動しない支払い(事務所の賃料、ロイヤルティ、広告の分担金、給与、不動産情報サイトの掲載料)を積み上げます。
- 月ごとに差額を出し、マイナスになる月と、その月の不足額を確定させます。
この4つを1枚に並べると、不足しているのが立ち上がりの遅れなのか、預かり期間が長い案件に人と広告費が張り付いた結果なのかが、分かれて見えます。前者と後者では、金融機関に説明するときの資金の使いみちも、必要な期間も変わってきます。
ここまで作ると、相談の中身が「資金繰りが苦しい」から「何月に、いくら、何か月分足りない」に変わります。金融機関と話すときに求められるのは、この形の数字です。
💬 執筆者の小峰から一言
残り時間がどれだけあるかで、相談する先の順番が変わります。制度融資は自治体と金融機関、信用保証協会の三者が連携する仕組みで、お金を出すのは民間の金融機関、信用保証協会は保証を付ける役割です。保証協会に直接申し込むものと思って窓口を探すと、決済日までの日数を使ってしまいます。
決済がずれる可能性は、契約書面に織り込まれています
買主の借入を前提にした売買では、代金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合に、その貸借が成立しないときの措置を書面へ記載することとされています(同法第37条第1項第9号)。借入が成立しない場合の取り決めが、制度としてあらかじめ想定されているということです。
あわせて、媒介契約の段階でも報酬の取り決めは書面に残ります。媒介契約を締結したときに交付する書面の記載事項には、媒介契約の有効期間及び解除に関する事項、指定流通機構への登録に関する事項とならんで、報酬に関する事項が挙げられています(同法第34条の2第1項第5号から第7号)。専任媒介契約を結んだ場合は、国土交通省令で定める期間内に、その物件を指定流通機構へ登録する義務も生じます(同条第5項)。預かってから成約に至るまでの動きは、こうした定めの上に乗っています。
報酬を受け取れる日を成約の日で数えると、実際の入金より早い前提の計画になります。決済と引渡しが済んだ日で数え、ずれる可能性のある案件は別に並べておくと、月ごとの不足額の見え方が変わります。
まとめ
不動産仲介のフランチャイズで手元が薄くなるのは、成約が足りないからとは限りません。報酬を受け取れる日が書面で決まっている一方、預かり期間の費用は件数と関係なく出ていく、という時間差が先に立っています。
成約から入金までの間隔そのものは、業法と契約書面で決まっているため、自店の努力で大きく縮められるものではありません。縮められないという前提に立って、その間を何で埋めるかを先に決めておくと、決済の月がずれたときにも打ち手が残ります。
まずは媒介契約の残り期間と、37条書面に書かれた支払と引渡しの時期を並べて、不足する月と額を出してください。そのうえで、必要な期間と金額を取引先の金融機関に相談する形にすると、話が具体的に進みます。個別の判断は事業の状況によって変わりますので、迷う場合は専門家にご確認ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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